第2話 《男子禁制エリア》
学校が始まる月曜日。俺はいつもの時間に柚月を迎えに家に向かった。
いつものようにインターホンを鳴らし少しすると玄関扉が開き柚月が出て来た。
「奏汰おはよ~」
「柚月おは――ってその格好はっ!?」
柚月は女子制服を着ていた。
紺色のブレザーに赤いリボン、上着と同じ色のスカートを履いている。
昨日言っていた届いた物って制服の事なのだろう。
「えへへ、ビックリした? 学校側からこの制服を着て来るようにって言われてね」
「そりゃぁそうだろ。しかし柚月が女子制服って……」
「へ、変かな……?」
「あっ、いや、似合ってる!」
「あ、ありがとう……」
「おぅ……」
柚月は頬を赤らめ照れていた。
そんなに分かりやすく喜ばれるとなんだかこっちも照れる
沈黙の間が出来てしまった。
それに耐えきれない柚月が慌てた感じに話を切り出した。
「そ、そうだ。昨日貰った漫画読んだよ。結構設定とか伏線みたいのあって面白いね」
「やっぱり伏線に見えるよな。歩きながら語ろうか」
俺達は漫画の感想などを語りながら駅へ向かうといつもの時間の電車に乗り学校へ向かった。
学校に着き教室に入ると一気に注目の的になった。
教室のいたるところ「誰?」「可愛くね?」「転校生かな?」などの話し声が聞こえる。
やっぱり誰一人この人物が柚月だと気付かないみたいだ。
いつも一緒にいる俺ですら気付かなかったからな。
俺は柚月と共に席に着くと柚月の周りに人が集まり始めた。
「そこって小鳥遊の席だよな?」
「もしかして小鳥遊君?」
「でも小鳥遊は男だぜ」
「それじゃぁ女装? ではないよな……」
「あの、僕はその、えっと―――」
周りでみんながザワザワし始めたのに対し大勢で話すことが無かった柚月はかなりテンパってしまっている。俺はそんな柚月に助け舟を出した。
「はぁ……お前ら、一気に話しかけるなよ。柚月が困ってるだろ? 詳しくは俺が話すよ」
俺はこの女子生徒が柚月だという事、そしてどうしてこうなったかを知っている限り話した。
もちろんみんなは最初信じなかったがタイミングよく若い男性の教師で俺達の担任でもある小長谷先生が教室に入ってきた。
そして柚月と共に事の顛末説明をしてくれた。
「―――というわけだからみんなフォローしてやってな」
『はーい』
無事説明も終わり役目を終えた柚月は机に突っ伏していた。
無理もない。俺意外と会話することがほとんど無いのに皆の前で説明したのだから。
「良く頑張ったな」
「疲れた……帰ってゲームしたい……」
「まだ一限も始まってないんだけど……。あっ、そうだ。柚月が読んでる漫画の新巻が2年ぶり出たってSNSのトレンドに載っていたぞ」
「えっ!? マジ!?」
柚月は顔を上げるとすぐにスマホを取り出し調べ始めた。
先ほどと違い目が輝いている。
「そういえば……。ねぇ、奏汰。今日の放課後時間ある? デパート行きたいんだけど」
「暇だから良いよ」
「ありがとー。色々買わないといけないのが多くてね」
放課後、俺達は高校から駅に向かう途中にあるデパートに寄った。
中には衣料や雑貨、食品、家電、おもちゃなど数多くのテナントが入っている。
地元にあるデパートよりこっちの方が断然広い。
「ところで何を買うんだ? 本屋ならこっちだけど」
「えーっと、ここなんだけどね」
「ここって……」
着いたお店はまさかのランジェリーショップだった。
店内には女性物の下着が飾ってあり男子禁制のようなオーラが出ている。
明らかにここだけ違う空間な気がする。
「柚月頑張れー。俺はそこのゲーセンにでも――」
その場から立ち去ろうとした俺の袖を柚月が逃がさんとばかりに掴んだ。
「奏汰も選ぶの手伝ってよ」
「いやいや、さすがに男の俺がここに入るわけいかないって」
「お願い! 僕も一緒に居るからさ」
「そう言われてもなぁ」
店先で入る入らないと言い合っているとそれを見聞きしていた店員がやってきた。
なんだか嫌な予感がした。
「彼氏さんも御一緒で大丈夫ですよ」
「ほら、大丈夫だから入ろうよ」
嫌な予感が的中してしまった。
柚月は必至すぎて俺が彼氏呼ばわりされていることに気付いていないみたいだ。
これ以上ここで言い合うのも時間の無駄だし店側に迷惑になってしまう。
ここは俺が折れるしかないみたいだ。
「わかったよ」
店内に入ると周りは当然下着しかなく目のやり場に困る。
漫画でなら見慣れているものだが本物はデザインや種類も多い。
それになんだか微かに甘い匂いもする。
「それでいくつなんだ?」
「いくつって?」
「だからサイズだよサイズ。カップ数ってやつ」
「奏汰のえっち……」
「なんでだよ!?」
「あはは、冗談だって。えーっとサイズは何だったかな」
柚月はスマホを取り出しメモ帳を見始めた。
どうやらスリーサイズや必要なものなど、女の子になってからの事が書かれているみたいだ。
柚月は自分のサイズのブラジャーが売っているところへ移動した。
「そこからここまでのが僕のサイズっぽい」
「んでどれを買うんだ? てか何着買う予定なんだ?」
「一応最初にお母さんが買ってきたのあるから今回はとりあえず5枚買ってくればいいって」
「そんなに買うのか」
「それくらい必要になるかもって。どれにしようかな~」
柚月は躊躇いも無くブラジャーが掛けてあるハンガーを手に取り選び始めた。
ふとサイズの所を見ると意外にも―――じゃなくこんなところクラスの奴らに見られたら変な誤解を生んでしまう。早く選ばないと……。
俺は漫画やアニメの知識しかないが作中で見たような物を選び柚月に渡した。
「これなんてどうだ? あのキャラが着ているのに似てると思うけど」
「確かに似てるね。これにするよ」
「そんなすぐに決めていいのか?」
「だって奏汰が選んでくれたやつだからね。あとはこれとこれでよしっと。会計済ませて来るね」
「店の外で待ってるよ」
柚月はブラジャーの入った買い物かごをレジに持って行った。
俺は先に店を出て少し離れた所で待っていると袋を持った柚月がやってきた。
「おまたせ~。僕の用事終わったけど奏汰は何か買っていく?」
「せっかく来たんだしアニメショップ寄って行くか」
俺達は良く行くアニメショップに入った。店内の大型モニターでは最新アニメのPVが流れている。
新作コーナーには今季アニメのグッズなどが大量に入荷していた。
これと言って買いたいものは無いがなんとなくグッズを見ていると柚月は棚に置いてあるフィギュアを手に取った。
「このフィギュア探してたやつだ」
「買うのか?」
「もちろん! このフィギュア武器のクオリティ高いんだよね」
柚月はこのフィギュアのアニメの大ファンでフィギュアをずっと探していたみたいだ。
俺もちょうど発売していた漫画の最新巻を購入して店を出て柚月と共に帰路に着いた。
地元の駅に着いた頃には日が落ち街頭には明かりが灯っていた。
「もうこんな時間か」
「なんだかんだで結構居たからね~」
「あ、そうだ。さっき買ったやつ見たいから後で写真送ってくれ」
「さっき買ったやつって―――えっ!? これを!?」
「実際付けた感じどんなものなのか見てみたいからさ」
「いやでもさすがにこれはちょっと―――……うん、わかった。今日無理言って付き合わせちゃったしこれくらいしないとね」
何やら柚月は少し戸惑っていたみたいだが何か決心したみたいだ。
確かに買ったフィギュアは少しエロいキャラだけど写真を撮るくらいはどうってことないと思うが?
その晩俺はゲームをしていると柚月から写真が送られてきた。
フィギュアの写真だと思い開いてみるとそこには俺が選んだブラジャーを着けた写真が送られてきていた。




