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オタクの友達が性転換しました  作者: 藤桜


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11/13

第11話 《もしかして彼女ですか?》

 林間学校から帰ってきた週末。俺と柚月は久々に漫画専門店などがある街へ電車で向かっていた。

 今日のメインイベントは漫画購入―――ではなくアニメ映画を観ることだ。

 このアニメ映画は有名な制作会社&監督、豪華声優陣、そして原作が無い完全オリジナルアニメ映画なのにかなり面白いと話題になっている。

 SNSではすでに漫画家やイラストレーター、動画配信者などが観に行った報告をしていた。

 

「映画情報出たときから狙ってたんだよね。絶対面白いって」

「PV観る感じ感動系っぽいな」

「感動系のアニメ大好きだから凄く楽しみなんだよね~」

「映画は何時からだっけ?」

「えーっと。ちょっと待ってね」


 柚月は肩から斜めにかけた小さいショルダーバッグを開き中からスマホを取り出すと映画の時間を確認した。俺の分も事前にwebで席を選びチケットを買ってくれていたのだ。

 中央の良い席を取るためweb販売される日の午前0時まで待って更新と同時に急いで買ったらしい。

 よほどこの映画を楽しみにしていたみたいだ。


「10時半からのだね。映画開始10分前から中に入れるみたい」

「駅に着いてから少し歩くからちょうどいい時間か」


 駅に着き歩いて映画館へ向かった。

 キャンプ場とは違い街中はまだまだ暑い。アスファルトで照り返した熱がじりじりと熱が肌を焼いた。

 俺達は地下街を通って映画館近くまで向かうことにした。


「地下街は涼しくていいよね。ここから漫画専門店入れるし」

「そういえば先日知ったんだが漫画専門店移転したらしいぞ」

「そうなの? どこ行っちゃった?」

「駅からは遠ざかったけどその代わり店内が倍くらい広くなったらしい。因みに今から行く映画館のすぐ近くだな」

「映画観終わったらすぐ行けるね」

「その前に昼飯食ってからだけどな。さすがに漫画持って飲食店は邪魔になりそうだし、映画終わったらちょうど昼時だからな」


 映画館に着くとさすがに休日だけあって賑わっていた。チケット販売の窓口には長蛇の列が出来ていたがweb専用のチケット発券機前は人がほとんど並んでいなかった。

 webで買った柚月は発券機でチケットを発券した。


「ねっ? webで買っておいて正解だったでしょ?」

「確かに。これだけ人多いならいい席も取られているかもしれないからな。あっ、そうだ。チケット代払うよ。高校生だから1200円だったよな」

「ううん、800円だよ」

「え? そんなに安かったっけ? まぁ安いならそれに越したことはないか」


 多分値引きクーポンでも使ったのだろう。

 それにしてもお得過ぎる値段だ。

 俺は財布から800円を取り出し渡したが柚月はチケットを渡さなかった。

 見ると発券されたチケットは一枚だけしかなかった。


「あれ? チケットは一枚なのか?」

「あ、うん。これ二人で一枚なんだよねぇ」

「web予約だからか? 最近映画館行ってないから覚えてないわ。今回の割引ってどういう―――」

「あっ、もう入場できるみたいだから入ろ。3番スクリーンだって」

「おいおい、そんなに急がなくても」


 柚月は俺の手を引きゲート前で受け付けの人にチケットを渡し二人同時に入った。

 3番スクリーンに入ると話題の映画のため席はほぼ満席状態だ。

 席に座り小声で話しながら待っていると照明が消え始め何本か映画のCMなどが入りいよいよ本編が始まった。

 作画が凄く背景なんて実写レベルで細かくて綺麗だ。

 序盤はほぼ日常回で笑えるシーンも多少あったが中盤から徐々に感動する感じの話しになってきた。数多くのアニメを観た俺でもこれはかなりの感動作の予感がする。

 ストーリーも終盤に差し掛かると周りからは感動したのだろう観客がすすり泣くような声が聞こえくる。

 ふと横を見ると柚月も涙を流していた。そういえば涙脆くなったと言っていたな。

 映画は感動のハッピーエンドで終わり場内に再び明かりが灯った。

 俺達は感想を語りながら映画館を出た。


「前半の日常回に結構伏線あったんだな。ヒロインの子の食事シーン無かったし」

「確かに。今思えば不自然だったよね」

「また観たら見え方が違うんだろうな。てか最後の方で泣いてる人結構居たな」

「だね。僕も我慢できなくて後半涙が出てきちゃったよ。泣いたらなんだかお腹空いちゃった」

「昼飯食いに行くか。何か食いたいものある? 俺は何でもいいぞ」

「ん~……あっ、あれ食べたい」


 柚月が指さしたところには有名ハンバーガーショップの宣伝ポスターが貼ってあった。

 俺はスマホでマップアプリを開き近隣の店舗を調べた。

 

「えーっと、この近くだと少し歩いたところにあるな」


 俺達はハンバーガーショップへ向かい歩き始めた。

 時間的に丁度昼時なので道中の飲食店はどこも混んでいるように見える。

 ハンバーガーショップに着くとやはりここも混んでいてレジにはちょっとした列が出来ていた。

 俺達もすぐに列に並び商品を選び始めた。


「ん~……僕はこの期間限定のにしようかな? 奏汰はどうする?」

「俺はいつものにするよ。ちょうどアプリクーポン出てるし」

「奏汰ってこういう期間限定って食べないよね」

「まぁ食べ物の期間限定って正直そこまで興味無いんだよな。冒険するより安定した方を選びたいし。ほら順番来たぞ」


 柚月と俺は注文したハンバーガーとポテト、ドリンクを持ち2階にある飲食スペースへ移動した。

 混みあっていたが何とか隅の窓際席を見つけそこでハンバーガーを食べ始めた。 


「んーっ! この期間限定の凄く美味しいーっ!」

「柚月は俺とは逆に絶対期間限定選ぶよな」

「だって食べないと損した気分になるんだもん。レギュラーメニューはいつでも食べれるし」

「確かにそれもそうか。今度俺もそれ食べてみようかな」


 ハンバーガーを食べながら話していると俺達のテーブル前に二人の人物が立ち止まった。

 誰かと思い顔を上げるとそこに居たのは井上さんと辻本さんだった。


「やほー、お二人さんっ」

「外から鷹尾君が見えたから来ちゃった~」

「井上さんと辻本さん。二人は買い物?」

「私は若菜の買い物の付き添いだけどね。そういう二人はもしかして出デー――」

「ゲホゲホッ。あ、いや、その――」


 辻本さんの話しを遮るように柚月は盛大に咽た後、何か言いたげだったがテンパってしまいあたふたしていた。

 この感じを見る限り柚月は二人と多少話せるようになっているみたいだ。

 なぜかテンパっている柚月を見た井上さんと辻本さんは何かを察した。


「お邪魔しちゃ悪いから私たちは行こうかな」

「そうだね。ごゆっくり~」


 そう言って二人は階段を下りて行った。

 それを見届けた柚月はなぜかホッとしていた。

 やっぱりまだ慣れないのだろうか? 二人はそれを察してくれたみたいだ。

 食事を終えた俺達は移転した漫画専門店へ向かった。


「品揃えも増えているかな?」

「同人誌に力を入れたってSNSで見た気がするけどどんな感じなんだろうな」

「めっちゃ楽しみかも」


 移転した漫画専門店に入ると店内には同人誌コーナーと単行本コーナーに加えフィギュアやキーホルダーなどアニメグッズコーナーが新たに増えていた。


「アニメグッズコーナーがある! あっ、フィギュアも売ってるよ」

「このフィギュアネットで見たけど実際に見ると欲しくなるな」

「えっと、値段は――って2万もするの!?」

「そりゃこれくらいのクオリティならするだろ。こっちなら少し安いぞ」


 そこには数千円のフィギュアなどが置かれていた。

 フィギュアコーナーを見ていると柚月がハマっているアニメのがありしかもそれが期間限定で値下げされていたのだ。


「わぁ~。僕、これ欲しかったやつだ」

「値引きで9千円から7千円か。買うのか?」

「もちろん買うよ! お金あったかな?」


 柚月は財布の中を確認したが段々と表情が暗くなった。

 俺はもしかしてと思ったがやはり予想が当たった。


「足りなかった……諦めるよ……」

「ったく。少しくらいなら貸してやるよ。いくら足りないんだ?」

「いいの? でも今日奏汰が買う漫画多いって言ってなかった?」

「別に漫画は我慢すればいいことだしいいよ。てか地元でも買えるし。それよりそのフィギュアは今ここでしか買えないだろ? だから遠慮するなって」

「うんっ! ありがとっ」


 柚月は嬉しそうにフィギュアが入った箱を手に取りすぐにレジへ向かった。

 俺が漫画を選んで買うまで柚月はずっとフィギュアが入った袋を覗いていた。

 店を出た俺達は次の目的地に向かっていると柚月が「トイレ行きたい」と言うのでちょうど道中あったデパートに入った。


「俺はここで待ってるから」

「分かった。フィギュアお願いね」


 柚月は俺にフィギュアを預けトイレへ向かった。

 俺は待っている間スマホでゲームをしようとスマホを取り出した時、誰かが話しかけてきた。


「やっぱり鷹尾じゃん」

「ん? おっ、小本こもとか。久しぶりだな。てか背伸びすぎだろ。一瞬誰かと思った」

「そういうお前はあまり変わってないな」


 俺に話しかけてきたのは同じ中学だった小本だ。

 中学の頃は俺との身長差がほとんどなかったが今では明らかに背が高い。話しによると高校では運動系の部活をしているらしい。

 小本が進学した高校は同じ中学の人がほとんど進学したため当時の同級生がどうなっているかなどの話しで盛り上がった。


「――ってことでさ今度男女で合コンとかやってみようかってなったんだよ。鷹尾も来るか?」

「いや、俺はそういうのはちょっと……。それに俺達まだ高校生だし」

「高校生で合コンくらい今どき普通だって」


 小本は昔からこんな風に色々ことに誘ってくる奴だった。

 中学の時は特別仲の良かった友達が居なかった俺はこの誘いに何度か呼ばれたものだ。

 しかし合コンは正直行きたくはない。誘いを何とかして断ろうとしていると柚月がトイレから戻ってきた。


「奏汰、お待たせ――って誰?」

「あぁ、こいつは小本。俺の中学時代の同級生なんだけど――」

「めっちゃ可愛い! 胸デカッ! 君、鷹尾と知り合いなのか!? もしかして鷹尾の彼女か!?」


 忘れかけていたが柚月が性転換して女の子になったことを知っているのはクラスメイトなど一部の人だけだ。ましてや俺の中学同級生が知るはずがない。

 どう説明しようかと考えていると柚月は俺の服の裾を掴み俺の後ろに隠れた。

 一人盛り上がっている小本の質問攻めに驚いたらしい。

 多少人見知りが和らいだとはいえまだ抵抗があるみたいだ。というか人見知りどうこうではなくこれはさすがに俺でもきつい。

 取り敢えずこの場をすぐに離れた方が良さそうだ。

 俺は裾を掴んでいた柚月の手を取り握った。


「まぁな。と言うわけで合コンには行けないんだ」

「彼女いるなら仕方ないな。またみんなで遊ぼうぜ。良ければ彼女さんも一緒に」


 俺は小本と連絡先を交換して柚月と共にその場を後にした。

 デパートを出てふと柚月を見るとなぜだか顔が赤くなっていた。

 気付けば手を握ったままだった。俺は焦って手を離した。

 

「あっ、すまん。柚月を利用した感じになって」

「ううん、大丈夫大丈夫。でもこれで2回目だね」

「2回目?」

「僕の事彼女って言ったの」

「いや、プールのあれは柚月を助けるためであって。それに今回のは――」

「僕の事気にかけてくれたんだよね? 分かってたよ。ありがとっ」

 

 柚月は嬉しそうにほほ笑んだ。

 不意の笑顔に俺はドキッとしてしまった。

 たまに柚月に対する気持ちが変わっていく気がする。

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