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オタクの友達が性転換しました  作者: 藤桜


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第10話 《一歩前進》

 林間合宿2日目の朝。俺は朝食を食べるためログハウスから食堂がある管理棟へ同じクラスの皆と共に歩いて向かっていた。まだ眠いのかあくびをしている生徒がちらほらいる。

 道中脇道から同じく管理棟へ向かっている女子達と合流すると進行方向に柚月が歩いているのが見えた。俺は小走りで近づいた。


「柚月おは―――っ!?」 


 振り返った柚月の顔を見るといつもと何かが違う。

 寝起きの顔は何度か見たことある。

 だが今日は何か違う。なんだろう?

 いつもより女子って感じがする。

 それに何となく良い匂いもする。


「奏汰おはよ――……ん? どうしたの? 僕の顔ジッと見て」

「いや、なんかいつもと違うなーって思って」

「あぁ、これね。今朝、女子達にメイクされちゃって。昨日はログハウスに帰ったらすぐに布団に入って寝たから良かったんだけど朝の事を全く考えてなかったよ……」

「それは災難だったな」


 どうやら寝起き早々捕まりメイクをされたらしい。

 周囲を見ると他の男子たちもメイクした柚月の事をチラチラ見ていた。

 確かに今の柚月は正直可愛いと思ってしまう。メイクでここまで変わるものなのか。


「それでね。その……奏汰はどう思う?」

「どうって何が?」

「このメイク」

「普通に良いと思うぞ? 自然で似合ってるし」

「――っ!?」

「ん? どした?」

「べっ、別に。僕、お腹空いちゃった。早く行こっ」


 管理棟にある食堂で朝食を食べた後、俺達全員は中央の広場に集まった。

 いよいよ本日のメインイベントウォークラリーだ。

 ウォークラリーのチーム編成はクラス内の男2、女2の4人だ。俺のチームは柚月と井上さん、そして俺とたまに話す仲の竹内だ。

 竹内は柚月の席の後ろで2年生になり柚月が入院している間話すようになった間柄。成績は学年でも上位に入る頭脳派。容姿は高身長で短髪、眼鏡をかけている。そして今回のウォークラリーではみんなが欲しがる人材だ。


「鷹尾、小鳥遊、井上さん今回はよろしく」

「よろしくねーっ」

「よ、よろしく……」

「よろしく。そんじゃウォークラリーのルールを確認しておくか」

 

 ウォークラリーのルールはこうだ。

 各チームランダムに配られた紙にはそれぞれ何パターンかの問題がありそれを解くと7か所あるチェックポイント内どこへ行くかが分かる。そしてそのチェックポイントへ行きそこにある箱を開けるとスタンプと次のチェックポイントまで問題がある。その中から正しいチェックポイントまでの道を選ぶというその繰り返しだ。そしてゴールで正しいチェックポイントを通ってゴールしたかで順位が決まるみたいだ。

 速さは競わない為、各チームはゆっくり考えることが出来る。

 俺達は早速配られた問題用紙を見た。


「私はこういうの苦手だから戦力にならないかも。皆は解るの?」

「ん~……ここがこうなって――違うか。柚月は解るか?」

「僕も奏汰と同じやり方だと思った」

「柚月も無理か。竹内は何か解ったか?」

「えっと、これはたぶんここがこうだから――……次のチェックポイントはA-4だと思う」


 竹内の言う通り次のチェックポイントへ向かった。

 敷地内の森にある遊歩道を歩いていると道端に何かが隠されているように置いてあるのが見えた。

 着くとそこにはA-4と書かれた箱が隠し置かれていた。開けるとスタンプと問題が書かれた紙が入っていた。

 答えは5パターンあるらしい。このどれかが正解みたいだ。

 竹内はその紙を手に取ると少し考えた。


「えっと次の問題は――……うん、なるほど」

「竹内もう解ったのか!?」

「さっきの問題に似ていたから」

「さすが竹内君。それで次のポイントは何なの?」

「次のチェックポイントはB-2だと思うよ」


 俺達はほぼ一人で問題を解いていくチートの竹内を先頭に次々チェックポイントへ行きあっという間に7問全て解き、ゴールへ向かった。

 ゴールである森の中にある広場に着くと数人の生徒が休んでいた。

 どうやら俺達は一番ってわけではないみたいだ。

 俺達はゴールで待機している小長谷先生にスタンプを打った紙を渡し、近くの木陰で休んだ。


「私達が一番だと思ったのになぁ」

「まぁ順位は競わないからいいじゃん」

「私全く協力出来なかったから物足りない」

「僕も何か物足りない……」


 井上さんと柚月はウォークラリー楽しみにしていたが意外にも問題は難しく結局ほとんど竹内とたまに俺が解いてしまっていた。

 それを見ていた竹内はある提案をした。


「それなら今晩皆で肝試しやってみない?」

『肝試し!?』


 俺、柚月、井上さんの声が見事にハモった。

 まさか竹内からそんな案が出るなんて予想外すぎたからだ。

 逆に誘われても行かない気がするからだ。

 

「ログハウスから管理棟に向かう道の途中に今はあまり使われてない林道があってその辺りだけ街灯が無いらしく薄暗いんだって。一応敷地内で危なく無いしログハウスから近いからどうかな?」

「それは面白そうだな。俺も参加するよ。柚月はどうするんだ?」

「僕は最近怖いが―――」


 すると柚月の返答を遮るように井上さんが答えた。


「私は参加するよー。他に誰か誘ってみるね」


 その言葉に何かピンと来たのか柚月が続けて答えを返した。


「ぼっ、僕も参加する!」

「怖いのが無理になってきたんじゃなかったか?」

「だ、大丈夫だし」

「そうか? まぁ無理するなよ」


 俺達4人と井上さんが誰かを誘ってくるらしくそのメンバーで今晩肝試しをすることになった。

 夕食後、皆がログハウス内で過ごしている中、俺は竹内と共に集合場所のベンチへ向かおうとしていた。

 するとそれを見かけた同じクラスの藁科わらしなが声をかけてきた。

 藁科はすぐに誰とでも話すことのできるちょっとチャラい感じだ。髪も明るい茶髪で結構目立つ。


「あれ? 鷹尾と竹内はどこか行くのか?」

「今から竹内考案で肝試しやりに行くんだよ」

「肝試しって言っても林道歩くだけだけど。藁科君も良ければどう? 人数多い方がいいし」

「って言ってもなぁ。男3人で肝試しって……」

「あっ、女子も来るよ。向こうで待ち合わせを――」

「よし、俺も行くぞ!」

「う、うん。わかった」


 俺と竹内、藁科の3人で柚月達女子が待つ場所へ向かった。

 道中藁科は凄くワクワクしているような感じだ。

 多分と言うか絶対目的は肝試しじゃなくて女子達と遊べることだろう。

 集合場所のベンチには柚月を左右から挟むようにして座っている井上さんと辻本つじもとさんが居た。

 辻本さんは井上さんグループの一人で第一印象はギャルって感じの人だ。

 正直俺はギャルっぽい人が苦手だ。でも辻本さんと何度か話したことあるけど意外と優しくオタク仲間からも評価が高い。

 明るい2人に挟まれた柚月はフリーズしているように固まっていたが俺に気付くと駆け寄ってきた。

 

「奏汰遅いよぉ」

「すまんすまん。井上さんは辻本さんを誘ったのか」

彩葉(いろは)はこういうの好きだからね」

「よろーっ」

「そっちは藁科君を誘ったんだね。なんかめずらしい組み合わせ」

「おっす、3人ともよろしく」

「藁科とはログハウス出るときに会ってな。それで肝試しってどういう感じでやるんだ?」

「まず二人一組になってここを時間差でスタート。林道を歩いて中央広場を経由して再度ここに集合って感じで」

「それじゃぁどうやって組み分けるか」

「それなら私に案があるんだけどいい?」


 辻本さんが何か考えがあるらしい。事前に何かクジでも用意してきたのだろうか? だとしても藁科が参加することは直前まで誰にも分らないはず。

 どうやって組み分けるのだろう?


「ちょうど男女3人ずつなんだし男女でペアってのはどう?」

「それでその先の組み分けは?」

「まずは鷹尾と小鳥遊は確定ね。そんで私と若菜(わかな)、竹内と藁科でじゃんけんして勝ち負け同士でペアってことでどうかな?」

「俺と柚月は決定なんだな」

「それはやっぱりね~」

「ねーっ」


 井上さんと辻本さんには何か考えがあるみたいだ。

 たぶん柚月の人見知りなのを察してくれたのだろう。

 じゃんけんの結果、竹内と井上さんペア、藁科と辻本さんペアになった。


「ペアも決まったことだし最初は発案者の俺が行こうかと思うけど井上さんはそれでいいかな?」

「私は大丈夫だよ。そんじゃ私達先行ってるね~」

「気ぃつけて~。次は私達でいいかな?」

「うん、いいよ」


 竹内&井上さんペアが出発してから5分後に藁科&辻本さんペアが出発した。

 俺と柚月はさらに5分待った。

 スマホのアラームが静かな森に響いた。

 

「よし、5分経ったし俺達も行くか」

「お、お~……」


 俺達はスマホのライト片手に薄暗い林道を歩き始めた。

 林道は月明かりあるため思ったほど暗くは無くライト無しでも歩けるくらいだ。

 しかし少し森の方に入ると月明かりも入らず薄暗い森が広がっていて少し不気味な雰囲気が漂っている。


「ログハウスも見えなくなると方向感覚狂うな。どこ見ても木ばかりだし」

「道はこっちであってるの?」

「ほぼ一本道だし大丈夫だよ。てかやっぱり怖いのか?」

「べっ……別に怖くは無いけど……なんで?」

「だって歩き始めてからずっと服の裾を掴んでいるからさ」

「こ、これははぐれないようにしているだけで別に怖いわけじゃないんだから」


 柚月は必死に釈明したがその手をよく見ると震えている。やっぱり怖いみたいだ。

 しかしこれ以上裾を掴まれても服が伸びてしまう。

 これは仕方ないか……。

 俺は裾を掴んでいる柚月の手を取った。


「ふぇっ!? なっ、何いきなり!?」

「いや、ずっと裾掴まれると服伸びるしこっちの方が安心するかなって」

「だから僕は別に怖くは――……けど奏汰がこうしたいならこのままでいいよ」

「お……おぉ」


 自分からやっておきながらなんだか少し恥ずかしくなった。

 林道を10分ちょっと歩くと中央広場の明かりが見えてきた。

 後は明るい街灯がある道を歩いてスタートしたベンチに戻るだけだ。

 

「ここまでくれば暗くないしはぐれないから大丈夫だろ」


 俺は柚月の手を離した。


「あっ……」

「ん? どうした?」

「ううん。別になんでもないよ。早くみんなの場所いこっ」


 スタートした場所へ行くと全員がベンチに座って談笑しているのが見える。

 近づくと一番最初に井上さんがこっちに気が付いた。


「あっ、鷹尾君たち来たよ」

「二人ともおつー」

「おせーぞ二人とも」

「そんじゃ全員揃ったしログハウスに戻るか。そろそろ消灯時間だからね」


 俺達は各自ログハウスへ向かい歩きだした。

 今まで柚月と二人で過ごしていたからこんな風に何人かでわいわい話しながら歩くだけでも楽しく感じる。


「これで林間合宿も終わりかぁ」

「戻って寝て起きたら帰る準備しないとだからな」

「うぅ……またあの空間に戻るのかぁ」

「柚月もいいかげん慣れろよ。この先も修学旅行とか行事で男女別になる事あるだろうし」

「そうだよね。……うんっ、頑張ってみる」

俺達(おとこ)はこっちだから」

「それじゃ奏汰お休み」

「おぉ、また明日な」


 俺達は各自ログハウスへ向かった。

 道中振り返ると柚月は井上さんと辻本さんに挟まれ歩いていた。

 頑張って会話をしているように見えた。

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