6.アメリカの心変わり
アメリカが「世界の警察官」を辞め、他国に対して冷淡とも言える実利主義(あるいはバイプレーヤー化)へ舵を切った背景には、自由主義の「善意」を食い物にする、二種類の「フリーライダー(ただ乗り)」への深い絶望があります。
これを整理すると、アメリカが抱える「自己免疫疾患」の正体と、なぜ彼らが「ベネズエラ大統領捕縛」のような荒っぽい個別撃破に回帰したのかが見えてきます。
1. 自由主義国による「防衛と市場のただ乗り」
これは、同じOSを共有する「仲間」による甘えです。アメリカはこの負担に耐えきれなくなりました。
NATO(欧州)の防衛費不足: 冷戦後、欧州諸国は「平和の配当」を謳歌し、自国の社会保障を充実させる一方で、国防の大部分をアメリカの軍事力に依存しました。「話し合い(ロゴス)」を重視するEUが優雅に議論できたのは、そのテーブルの下でアメリカが「力」を行使し、物理的な障壁となっていたからです。
日本の「経済的躍進」と安保: かつての日本も、防衛をアメリカに任せ、浮いた予算を産業育成に注ぎ込みました。アメリカから見れば、「命を懸けて守ってやっている相手に、商売(半導体など)で叩きのめされる」という歪な構図でした。これが「日米半導体摩擦」時のアメリカの憤りの正体です。
知のコストの不払い: 基礎研究や新しいOS(科学・理論)の構築には膨大なコストがかかります。他の自由主義国は、アメリカが創出した「魔法(技術)」を、ライセンス料や利用料だけで安価に享受し、自国の利益を最大化してきました。
2. 権威主義国家による「システムへの寄生とハッキング」
こちらは「敵」による、自由主義というOSそのものの悪用です。アメリカを最も激怒させたのはこの点です。
WTO(世界貿易機関)のハッキング: 中国などの権威主義国家は、自由主義的な「自由貿易」のルールを最大限に利用して市場に参入しましたが、自国内では「氏族・ハーンの論理」による補助金や規制で市場を閉ざしました。自由主義の「開かれた扉」から入り込み、内側から富を吸い出しつつ、自らの扉は閉め続けるという「片道通行のただ乗り」です。
知財の窃取と超限戦: 彼らは「自由な情報公開」や「学問の自由」を悪用し、アメリカが心血を注いだ研究成果(魔法の設計図)を盗み出しました。さらに、自由な言論空間(SNSなど)に「情念のウイルス」を流し込み、アメリカ国内にアレルギー反応(分断)を引き起こさせました。
「法の支配」の武器化: 国際法を盾にしてアメリカの行動を制限(足止め)する一方で、自分たちは「力」を信奉しているため、自らに対して法が適用される場面ではそれを無視します。
3. アメリカが出した「見切りの結論」
これらのただ乗りに対し、アメリカは2026年現在、以下のような冷徹な決断を下しています。
「もう、パッケージでの正義(世界の警察官)は売らない」
仲間への要求: 「自由主義を続けたいなら、応分のコスト(防衛費、市場開放)を払え。払わないなら、もう守らない(NATOへの冷遇)」。
敵への物理的回答: 「法的な対話(WTOなど)での解決は諦めた。ただ乗りしてくるハーンに対しては、法を飛ばして『捕縛(ベネズエラ例)』や『デカップリング(切り離し)』という、彼らが唯一理解する『力の言語』で直接叩く」。
結論:リセットを避けるための「冷徹なコスト管理」
アメリカが警察を辞めたのは、「善意が報われない」と気づいたからです。
他の自由主義国は「コスト」を払わず。
権威主義国家は「システム」を食い荒らす。
このままでは、アメリカという文明のコアがリセットされてしまう。だからこそ、アメリカは「個別の契約」へと移行したのです。




