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雑詠 その16
窓の外カラスが下降飛翔する鳴き声もなく当たり前のように
何事かやり残したことあるような気持ちにさせる春の夕暮れ
曇り空悲しそうにも思わないただこの心写したようで
アクリルのハローワークの求人票何を見ている宇宙の文字か
凪の音染み入るように聞こえては言葉少なき君の声聞く
慣れた表情仏頂面のつもりなく口角さえも上がることなし
静脈の群青色をたどっては爪を立てるはナイフの代わりに
涙して鼻水啜り息を吐くこの身に残る感動装置
ため息は希望の欠片新しい息吹を入れて遠く飛び立つ
雨止まず停滞前線家に居るそれとおんなじ膝を抱えて




