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此岸彼岸その4
電線のムクドリたちが合唱すあやかしたちの目覚めの挨拶
澄み切った南の空にアンタレス尻尾を伸ばし我刺さんとす
今晩はどうやら空は腹減って目玉焼きにした月を食う
これほどにあるのであればこの手にも掬えていいのに煌めきの星
松の葉の先に結んだ雨雫新芽のように光を湛えて
時化る沖白波の間に虹が立つ行くべき岸はあのたもとだと
冬の時化沖の白波例えれば数多トビウオとどめぬ乱舞
雨上がり空に雑巾がけをする汚れを取った灰雲が行く
雨上がり雲一群が退いて夜空を担ぐオリオンの勇姿
一晩に黙ったままで積もる雪恥ずかしがり屋の人見知りだね
そうもしもこれから降ると雪告げば戸を開けた時の驚きは無し
身の丈の雪かき分けて命日の墓前で合掌鳥の鳴く声
水揚げの深海魚たちにしてみれば人のうわさも彼岸の波音




