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修道院


辺境伯領の財政立て直しに奔走するエミリアは、領内の修道院の現状を視察することにした。修道院への寄付金が領地財政を圧迫していると知った彼女は、その運用を見直すべく足を運んだのだ。


修道院の門をくぐったエミリアを出迎えたのは、荒れた庭園と修繕が必要な建物だった。かつては領民の心の拠り所だった修道院も、今ではその役割を果たしていないようだった。


「おや、エミリア様……いえ、辺境伯代理様がここにいらっしゃるとは。」

老齢の院長が顔を出し、驚きの表情を浮かべた。


「ここへの寄付金がどう使われているのか確認させていただきたく思いまして。」

エミリアは微笑みながらも、芯のある声で言った。


「そ、それは……日々の祈りや、領民への布施に使っております。」

院長は口ごもりながら答えるが、その様子はどこかぎこちなかった。


「現場と出納帳を確認させていただきますね。」


エミリアが修道士たちの生活ぶりを視察すると、祈りは形だけ、日々の勤勉さはなく、規律が失われていることが明らかになった。修道士たちは布施で集めた食料や物資を浪費し、畑や家畜の管理も疎かにしていた。


「こんなことでは、修道院が領民から尊敬を失うのも当然ですわね。」

エミリアは院長に向き直り、毅然とした声で言った。


「これからは、修道院も領地の一部として自立していただきます。寄付金に依存するのではなく、自ら収入を生み出し、領民に貢献する修道院を目指しましょう。」


★★

エミリアは修道院を立て直すために、次の五箇条を制定した。

1.農業の推進

修道院の敷地を使い、農作物を栽培する。余剰分は市場で販売し、収益を得る。

2.教育の提供

修道士たちが読み書きや算術を領民に教える場を設け、教育を広める。

3.薬草栽培と治療所の設立

薬草を育て、領民の健康を支える治療所を運営する。

4.工芸品の制作と販売

修道士たちが手作りの工芸品を作り、市場で販売することで修道院の収入源とする。

5.祈りの場の維持

修道院本来の役割である祈りの場としての機能を忘れず、領民の心の支えとなる。


王都での嫁修行の過程で、エミリアはこういった指針の提示と徹底が規律を作る上で重要だといやというほど学んでいた。


「我々は神に仕える者です!こんな世俗的なことに手を染めるなんて……」

一部の修道士が反発するが、エミリアは毅然として言い返した。


「神はあなたたちに怠惰を許したのでしょうか?祈りは大切ですが、領民を支え、彼らの生活を豊かにすることもまた神の御心にかなうはずです。」


現場視察中に見つけた、あまりにも世俗的な隠し資産をちらつかせながら発言すると、修道士たちは黙って平伏した。

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