辺境の財政難を救え!軍編
辺境伯領に帰還した翌朝、私は父の書斎に向かった。この幸せな環境を守るためには、貧しい辺境の状況を変える必要があると考えたからだ。
「ねえ、お父様。結納金(慰謝料)としていただいた金貨、何に使ったの?」
突然始まった尋問に、父は少し緊張しながら答える。
「借入金の返済をし……まずは軍の拡充だ。国境沿いの領地だからな、守りを固めねばならん。」
「それはわかるけど、他には?」
「修道院にも少しばかり寄付をしたよ。信仰心の厚い住民のために、修道院が繁栄するのは大切だと思ってな。」
私は頭を抱えた。
「それはいいけど……それだけじゃ富を生み出さないわね。他には?」
「新しい宿を建てた。観光地にすれば人が集まり、収入も増えるだろうと思ってな。」
私は額を押さえた。
「観光地にしたいって、観光資源がないのに?お父様、誰が泊まるの?」
父は言葉を詰まらせた。どうやら深く考えていなかったらしい。
「とにかく、このままだと冬を越せないかもしれないわね。まずは軍からテコ入れしなきゃ。お父様よろしくて?」
父がカクカク頷いたのを確認すると、私はすぐさま軍の駐屯地に向かうことにした。
★★
駐屯地に到着した私は、目を疑った。
兵士たちはだらしない姿勢で日向ぼっこをしており、訓練どころかお茶を飲んで談笑している。武器は手入れがされておらず、錆びついていた。
「これが辺境を守る軍?!」
私は言葉を失った。いやいや、ここにいる人たちは休憩しているメンバーで、もしかしたら外回りの人たちは任務に当たっているのかも、とかろうじて心を持ち直し、近くにいる兵士に聞いてみる。
「辺境伯軍なんてエリートのみなさまは普段どんな任務をされているのですか?」
「街や国境の見回りをしたり、こうやって駐屯地で訓練したりするのさ。と言っても国境を接する帝国は近年動きがないから、特に厳しい訓練も鍔迫り合いもないし、給与は安定してるしで、軍人は嫁に行くにはおすすめだよ。俺なんかどうだい?」
と、身なりのいい若い女性に持ち上げられて気をよくしたのか、若い兵士がペラペラと語ってくれる。
そんな様子を冷ややかに見た隊長らしき男が、「お嬢様には関係ないことです。」と、兵士を制するように答える。
「辺境伯第一子エミリアです。今日からここは私が辺境伯代理として預かります。規律を正すわ。」
先ほどペラペラ話していた兵士がやっちまったぜ、という顔をした。
「何をおっしゃるやら。お嬢様に軍の何がわかるんですか?それにこの軍は強者服従を是としています。強いものの方針に従うのです。」
隊長が鼻で笑った。
たしかに、と兵士たちは安心したように顔を見合わせ、私をバカにするように笑った。
私は落ち着いた声で言う。
「じゃあ、一番強い人を連れてきて。私が直接相手をするわ。」
その場にいた全員がざわめき始めたが、隊長は面白がるように肩をすくめ、大柄な兵士を呼び出した。
★★
その後、兵士たちが見守る中、私はその大柄な男と対峙した。彼は鍛え上げられた体を持つが、どこか油断している。
「本当にやる気か?」
彼が挑発的に言う。
「ええ、もちろん。」
「悪いが手加減はしねぇぜ。俺たちの生活がかかってるんでな。」
彼が剣を構えた瞬間、私は素早く間合いを詰め、軽やかな動きで彼の剣を払い落とした。続けて彼の足を払って転倒させる。兵士たちは一斉に息を飲んだ。
「どう?もう一度やる?他に納得していないものは?」
念のためそう問うも誰も異を唱えない。
「これが王都の生活で培った私の力よ。これからは私の指示に従いなさい。」
私は毅然とした態度で言い放つ。
兵士たちは一斉に服従したのだった。




