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不可解なデータ


 エミリアは輸送前と輸送後の帳簿を確認しながら、輸送中の作物のロス率を試算していた。輸送中の腐敗や劣化による損失は、長年問題視されてきた課題だ。


「……おかしいわね」


 試算を進めるうちに、エミリアは妙な数字に気づいた。


「ロルフ、これを見て。作物が輸送中にどれくらい傷んで廃棄されたかのデータよ」


「ん? そりゃまあ、長距離輸送すりゃ多少は傷むもんだろ」


「そうね。でも、全体の平均ロス率が 5~10% なのに、ある特定の貴族領を通過する区間だけ、なぜか 20% も減っているの」


「……20%!?」


 ロルフが顔をしかめる。


「倍以上じゃねえか……。そんなに傷みやすい環境なのか?」


「それにしても不自然よ。その区間を避けるルートでは、普通のロス率になっているの」


 何かがおかしい。エミリアの中で警戒心が膨らむ。


「調査が必要ね。実際に輸送現場を見てみましょう」


「お、おい待て! もしやこれ、貴族絡みの問題なんじゃねえのか?」


「可能性はあるけれど、まだ確定じゃないわ。事実を確認するだけよ」


 エミリアは冷静に言ったが、ロルフは渋い顔をした。


「貴族領に口を出すってことは、うちみたいな力のない省じゃ荷が重いんじゃねえのか?」


「だからこそ、証拠を集めるのよ。はっきりした事実があれば、誰も無視できないわ」


「……やれやれ。まったくおまえは、妙なところで肝が据わってんな」


 ロルフはため息をつきながら、それでもエミリアの言葉に従った。


 こうして、エミリアたちは問題の貴族領に対する調査を開始することになった――。



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