皇帝との再会
荘厳な玉座の間に、一歩ずつ足音が響く。
エミリアはまっすぐ皇帝を見据えながら、その視線に微かに緊張を滲ませた。
「妃になる覚悟はできたか?」
帝国皇帝――広大な帝国の地の強権的な統治者。
その鋭い眼差しは、エミリアの心の奥を探るように見つめている。
エミリアは深く息を吸い込み、静かに答えた。
「はい」
皇帝の目がわずかに細まる。
「食糧難を解決されたいんでしょう?」
エミリアは、ジークに協力してもらい得た情報を統合して至った結論をぶつける。
帝国は豊かになりすぎた。人が増え、国の統合が進み、そして高度な産業が発達した結果、食糧が足りなくなりつつあり、足元の食糧価格が上がっている事がわかったのだ。
その問いに、皇帝は「ほう」と口角を上げた。
「……まあ、そうだな」
まるで誘いをかけるような声音。しかし次の言葉は、意外なものだった。
「だが、おまえを妃にするつもりはなくなった」
「――え?」
予想外の返答に、エミリアは思わず瞬きをする。
「おまえは官吏として働いてもらう。配置転換はよくあることだ」
皇帝は玉座から立ち上がり、ゆっくりと歩み寄る。そのまま、エミリアの前で足を止めた。
「なぜ、妃ではなく官吏なのですか?」
率直な疑問を投げかけると、皇帝は愉快そうに微笑んだ。
「……レオがどう動くか、見極めたくてな」
エミリアの心臓が跳ねる。
「……レオ?」
「おまえに興味を持ったのは、レオが先だ。あやつが、おまえをどう思っているのか、私は興味がある。おまえを官吏にした方が面白い結果が得られる気がした」
皇帝はまるで盤上の駒を動かすように、冷静に告げた。
エミリアは思わず唇を噛む。
レオが、私を……?
「……なるほど」
冷静を装いながらも、心の内は揺れる。
けれど、こんな言葉で揺らぐようでは、この場には立てない。
「ならば、利用されるだけでは終わりません」
皇帝が満足そうに笑う。
「いいだろう。では、存分に暴れてこい」
エミリアは一礼し、静かに踵を返した。
胸の奥に、レオの存在を抱えながら。
――皇帝の思惑に、乗るしかない。




