辺境への帰還と家族との再会
王都から馬車で数日。ようやく見覚えのある荒野の風景が広がり、懐かしい家族の待つ館が見えてきた。
「あー!エミリア姉さんだ!」
玄関の扉が開いた瞬間、近くにいたらしい妹のティナが駆け寄ってくる。
「ただいま、ティナ!みんな!」
私は思わず笑顔になる。王都では忘れていた温かさが、家族の顔から滲み出ていた。
「王都の生活はどうだった?苦労したんじゃないか?」と突然帰ってきたはずの私に、事情は何も聞かず父が気遣わしげに尋ねる。
「まあ、すっごく大変な花嫁修行とか婚約破棄とか色々あったけど無事戻ってこれたわ。あ、婚約破棄は相手都合よ!それに――ほら、こんなに元気!」
私は軽く背伸びをして、わざと元気な姿を見せる。
母は涙ぐみながら「あなたが無事で本当によかったわ……」と抱きしめてくれる。ティナも「お姉ちゃんが帰ってきて嬉しい!」と私の腰にしがみつく。
だが、家族の表情にはどこか影があった。
「ところで、結納金の話なんだけど……」
私が表情が暗い原因であろう結納金について話を切り出すと、父と母が気まずそうに視線を逸らした。
「その……結納金は、領地の発展に使ってしまったんだ。今年は食料も十分に用意できなくて……冬を越すのが心配でな。」
父が申し訳なさそうに告げる。
「そんなことだと思ったわ……大丈夫、慰謝料代わりにもらえることになっているから返済不要だし!食料も私に任せて!」
私は胸を張り、元気よく宣言した。
「エミリア、でもどうするつもりなんだ?」と父が心配そうに尋ねるが、私は笑顔を崩さず答えた。
「狩りをしてくるわ!王都で鍛えてきた成果を見せるときよ!」
★★
私は久しぶりに狩猟用の弓とナイフを手に取り、森へと足を踏み入れる。目指すは討伐難易度Aランクのキングボア。大人30人がかりでも仕留めるのが難しいとされる巨大なイノシシだ。巨体なことに加え、森の強者故気配を隠そうともしない分、見つけるのは簡単だ。
「さあ、隠れてないで出ておいで!」
森の奥で待ち伏せしながら、私は静かに気配を探る。そして、地響きのような足音が聞こえた瞬間、獲物が現れる。
「いた!」
キングボアは巨大な牙をむき出しにしながら突進してくるが、私はその動きを冷静に見極め、一瞬で矢を放つ。急所に命中したキングボアは勢いを失い、その場に崩れ落ちた。
「ふぅ、これで今夜のご馳走が決まったわね。」
私は仕留めたキングボアを引きずりながら家に戻る。そして、王宮で学んだ技術を活かして、豪快に解体し、調理に取り掛かった。
その日の夜、食卓にはキングボアを使った豪華な料理が並んだ。
スモークされたベーコン、ジューシーなロースト、そして特製ソースを添えたステーキ。どれも王宮シェフ顔負けの出来栄えだ。
「これ全部エミリアが?」と母が驚く。
「そうよ。花嫁修行で色々鍛えられたからね!」
私は得意げに答えながら家族に料理を振る舞う。
「すごい!こんな美味しいお肉、初めて食べた!」とティナが目を輝かせる。母も「王宮仕込みの味付けはなんて洗練されているのかしら……」と感心している。
「今日は宴だー!」
父が豪快に声を上げ、家族全員が笑顔になった。
──やっぱり、ここが私の帰るべき場所。お金や地位、顔だけがいい伴侶なんかよりも、愛する家族と過ごす時間こそが何よりの宝物だ。
私は温かい家族の笑顔を見ながら、そう心から思った。




