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街歩き


共和国の歓迎パーティーにて、帝国近衛師団長アレクシス・ヴァルデスはエミリアに「辺境の街を案内していただけませんか?」と申し出た。突然の誘いに少し驚いたものの、エミリアは「帝国の高官に辺境の街の素朴さがどう映るのか、見てみたい」と軽く冗談を返し、案内を引き受けた。


「これが特産のサンドイッチなんですね。ボアの肉をふんだんに使われてるなんて、豊かな証拠だ。」

「おうよ、これもエミリア様がきてから市場にたくさん出回るようになったんだ。ボアからしたらたまったもんじゃないだろうがな。はっはっ」


辺境の街を歩きながら、エミリアはアレクシスの見識の深さと気遣いに感心した。彼は街の人々に敬意を払いながら話しかけ、商店の職人たちに真剣に質問をする。その一方で、どこか洗練された貴族らしさを滲ませており、彼がただの軍人ではないことを物語っていた。


街外れの丘の上で、二人は軽食を広げて腰を下ろした。見晴らしのいい場所でエミリアが準備した料理を楽しみながら、和やかな時間が流れる。エミリアはふと目を細めて、アレクシスに尋ねた。


「昨日のパーティーでは、レオとお知り合いとおっしゃっていましたが、どのような関係なのですか?」


アレクシスは一瞬手を止め、エミリアの目をじっと見つめた。その表情には、どこか意味深なものが含まれている。


「彼とは……少々特別な間柄です。」


「特別な間柄、ですか?」

「ええ。彼は、私にとって重要な存在です。」


エミリアはその曖昧な答えに不満を抱きながらも、軽く笑って問いかけを続けた。

「それなら、彼についてもう少し教えていただけませんか?たとえば、彼がどんな場所で育ったのか、どんな考え方を持っているのか。」


しかし、アレクシスは穏やかに微笑みながら話題をそらす。

「エミリア嬢、先ほどからここにいない男の話ばかりですね。今デートしている私は魅力的ではありませんか。」


「小国の田舎貴族をからかわないでくださいな。」


エミリアのつれない態度にアレクシスは優雅に肩をすくめ、軽く笑った。

「私はエミリア様のことをもっと知りたいです。」


その真剣な眼差しにエミリアは少し気圧されながらも、淡々と応じた。

「私のことですか?私はただ、辺境の領主代理として忙しくしているだけです。」


「そうではありません。」アレクシスは首を振り、少し身を乗り出した。

「たしかに貴女は多くの人々を救い、王都にも、共和国にもその名が響くほどの存在です。領地発展の秘訣を普通の貴族なら喉から手が出るほど欲っするでしょうが...」


アレクシスはエミリアの綺麗な髪をすくいながら続けた。


「あなたの美貌と優美さにはどんな男も興味が尽きないでしょうね。」


エミリアはその言葉に一瞬戸惑いを見せたが、すぐに冷静さを取り戻した。

「褒めても何も出ませんよ。」


アレクシスは楽しそうに笑い、立ち上がると軽く手を差し出した。

「それでは、代わりにもう少し街を案内していただけませんか?私は貴女が愛するこの地をもっと知りたいのです。」


エミリアは一瞬躊躇したが、その手を取って立ち上がった。

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