卒業パーティー
「義姉上、お迎えに上がりました。」
「ありがとうございます。フェルディア様。よろしくお願いいたしますね。」
私は、フェルディア様と共にパーティー会場へ向かう。
パーティー会場には少し早めに向かった。
「兄上が申し訳ありません。」
「フェルディア様のせいじゃありません。きっと私に魅力が足りないせいなのです。」
「そんなことありません!帝国男子の憧れの的と言われる義姉上は、素晴らしい美貌と教養をお持ちの完璧令嬢だと言われているではありませんか。」
王国の王族であった母と帝国を当初から支えた公爵家の父、それぞれの良さを引き継いだと世間では言われる姿であるが、王国の特徴である青みがかった銀色の緩やかなウェーブがかった髪や青緑色の瞳、皇帝に対しても口うるさい父に良く似た目力の強い顔は、第一皇子の好みでないのだろう。
「ふふ。ありがとうございます。」
「…精一杯エスコートさせていただきます、義姉上。」
人波に紛れて入場してしばらくすると、第一皇子が入場された。
「第一皇子、オズベルト様と…メルル令嬢のご入場です。」
ざわっ
メルル様を連れて、メルル様と色を合わせて入場されたことで大変ざわついている。…ただ、サイズがあまりあっていないようだから、帝国が私のために作ったドレスをメルル様が着用されているのだろうか。
「ご静粛に。皇帝陛下と皇后陛下のご入場です。」
みなが壇上を見上げると、仲睦まじいご様子の両陛下がご入場され…ている後ろで一瞬ものすごい顔をされたお父様がいて…皇后陛下がこちらに向かっている…?
「マリー。どういうことですの?説明なさって。」
「母上。兄上が…」
「フェル!貴方には聞いていないわ。マリー?」
「…説明させていただきます、皇后陛下。昨日、第一皇子から明日はフェルディア様と共に行くように、ご自身でのエスコートは都合が悪くできないとお伝えいただきました。」
「それで?貴女はなぜオズを止めずにいたのかしら?」
「それは…やはり私の魅力が足りず、第一皇子を繋ぎ止めることができなかった点と毎回別の女性たちをエスコートなさっているため、今回も問題ないと判断いたしました。申し訳ございません。」
「母上!マリーの言う通り、僕は魅力的なメルルと出会ってしまったのです!かわいいメルルに嫉妬して、くだらないマナーを強要するマリーとは別れたいのです!」
「…オズ?どういうことかしら?」
「皇后陛下!申し訳ありません〜!あたし、オズ様と結ばれたいのです〜!」
「メルル様!?皇后陛下とはご挨拶したこともないのに、目下のものから話しかけてはいけませんよ!?」
話に割って入ってきた第一皇子とメルル様。私はメルル様のあまりの不作法さに思わず声をかけてしまいました。
「ふぇー!オズ様ぁ!」
「マリー!メルルにもっと優しい言葉をかけろといつも言っているだろう!サタリーやナターシャ、アイラでもできているぞ!!」
第一皇子は取り巻きたちの名前をあげて私を叱責いたします。
「申し訳ございません、第一皇子、メルル様。」
いつものことなので即座に謝罪いたします。
「…マリー?何をなさっているのかしら?」
見たこともない表情で皇后陛下は私に声をかけられます。
「…っ!申し訳っ「貴女が謝る必要は一切ないわ!オズベルトは毎回この女をエスコートし、他の女たちを侍らせていたの!?」
「母上。マリーに魅力がないので仕方ないではありませんか。」
「だまらっしゃい!貴方が一目惚れをし、婚約者にしたいと駄々をこねたから公爵家に頼み込み、婚約者にしたマリーに対して!なんということを!そもそも、男子校育ちで何も上手くできないと言う貴方のために、私がマリーに嫌味やら細かな指摘やらを言うことで共通の敵とし、仲良くなるように手助けしていたあの件も無駄だったと言うのですか!?貴方は継承権を没収し、マリーとも婚約破棄させますわ!言っておきますが、第一皇子でなかったら、貴方とは目すら合わなかったであろうレベルにマリーは美しくて素晴らしいのよ!マリー…大変申し訳ありません。辛い思いをずっとさせていましたね?」
「…皇后陛下…?」
あり得ないくらいぶっちゃけられた皇后陛下と固まる第一皇子。慌てる第一皇子派の貴族たちと取り巻きたち。
「マリー…今まで辛い思いをさせておいてこんなことを言うのは憚られますが、貴女の力が帝国には必要ですわ。第二皇子を次期皇帝とするので、婚約してくださらない?もちろん、公爵たちとのご相談ののち、ご返答いただければ大丈夫ですわ。こちらが原因なのですから、断っていただいてもよろしくてよ?」
力なく微笑みながら皇后陛下は私に問いかけてくださる。
「父と相談ののちご返答させていただきます。」
「母上!マリーが悪いのに、僕の継承権を剥奪とはどういうことですか!」
我に返った第一皇子が喚き立てます。
「皇后陛下ぁ!オズ様こそ次期皇帝にふさわしいですわ〜!」
メルル様が懲りずに話しかけられています。
「衛兵。無礼なこの女を不敬罪で連れて行きなさい。私とマリーに対する不敬よ。オズ?継承権を剥奪されるだけで済んで私に感謝なさい?貴方には臣下として爵位と土地をあげるわ。ただ、私の教育が間違ってしまったのね…その前に王立経営学園と帝国男子学園にそれぞれ短期留学してもらいます。」
皇后陛下のあげられた学園は大変厳しいと有名な学園でした。全寮制で、どんな生徒も逃げ出すことができないそうです。
「母上ぇ。」
メルル様の話し方がうつってしまった第一皇子を侍従たちが立ち上がらせて自室に下がらせます。
「騒がせてしまって申し訳なかったわね?マリーも楽しんでいらっしゃい?」
そんな言葉をかけながら、指を鳴らされた皇后陛下は、独自に開発されたと有名な魔法で夜空に星をたくさん打ち上げて、オーロラのように美しく輝かせ、星たちから綺麗な音楽を流しました。みなが見惚れる魅了魔法もかけられているのでしょうか?しばらくすると、みな、パーティーを楽しみ始めました。
両陛下からの謝罪の気持ちとして、両陛下ですら滅多に食べることのできないご馳走として、星の煌めく虹を閉じ込めたゼリーやペガサス肉と春野菜の人魚の涙添えなど美しい料理が並びました。