1ヶ月目
はぁ………、すぅ…。
よし、行こう。
ここ梅山高校は、一学年6クラスのそこそこ大きい高校だ。
そして、ここの吹奏楽部もそこそこ大所帯である。
そんな、吹奏楽部に入部した一人の生徒の話である。
「じゃあ、まず、パート発表します。」
―数分後―
「配属されたパートで自己紹介を行ってください。終わったら、各パートごとで解散してください。お疲れさまでしたー」
「バスパート、移動するよ~。」
『ハァーイ』
―移動後―
「じゃあ、2年生からやって行きましょう。
パートリーダー、バスクラリネット担当の原田律です。好きな食べ物は…梅干しです。」
「はぁいっ、バリトンサックスをやってる酒井菜々です。副
部長もやってます。」
「えっと、チューバの堀江皐月です。菜々と一緒で副部長もやっています。」
「ちなみに未来っていうコントラバスの人がいるんだけど、
連絡が付かなくって…。今、LINE電話かけているところ。」
と言って、原田先輩がトーク画面を見せてくれた。
ん?なんか、緑の電話マークが大量にあるぞ?
「先輩、何回ぐらいかけました?」
「うーんとねぇ、30くらい?あぁ!ストーカー行為みたい になってる!!!気持ち悪がられちゃいますね。どうしよう」
「まぁ、後輩のぉ大事なぁパート発表の日に連絡つかない 未来のほうが悪いよねぇ。」
おぉう。菜々先輩、辛辣ぅ。
「…じゃあ、一年生たちに自己紹介をやってもらおっか。」
と言う皐月先輩の声で、話題が自己紹介に戻ってきた。
「えーと…。1-Bの鈴木零です。好きなことは、因数分解の
問題を解くことです。よろしくおねがいします。」
なかなか個性的な自己紹介を行ったのは、同じクラスの鈴木君だ。クラスでの自己紹介もそうだったが、ここでも癖の強さは変わらない。
「1-Dの、榊原百です。よろしくおねがいします。」
と、大人しそうな百ちゃんが言う。鈴木君の後では、さぞ、やりにくかっただろうに…。緊張で顔がこわばっちゃっている。
さぁ、私の番だ。
「1-Bの神谷秋音です。よろしくおねがいします。」
よし!我ながら、無難にできたのではないか。
とにかく、今日は、バスパートはだいぶ個性的な面子が揃っていることがわかった。
―次の日―
「本っ当ーに、申し訳御座いませんでした!!!!」
と、勢い良く謝るは、昨日連絡がつかなかった中澤未来先輩だ。LINEグループでも謝っていたが、ここでも謝っている。あまり謝られ過ぎても…
「合奏、始めるぞー。」
ナイス、顧問!
顧問の先生がやってきた。
「あぁ、楽器も決まったことだし、1年生も合奏、参加してね。まぁ、できる人だけでいいけど。」
ん?先生、なんていった?
「秋音ちゃん、運指覚えてる?…覚えてる!じゃあ、合奏参
加してね!」
ん?皐月先輩、何にをおっしゃる?私、初心者ぞ?
別の楽器やってたけど…
「…わかりました。」
まぁ、実践練習ができるのは、いいことだよね。
…だよね?
こうして、私の吹奏楽生活が始まった。
「ッッッっ疲れた~!!!!!!!」
合奏に参加し始めて数日、ここのところいつもヘトヘトだ。でも、合奏で曲を吹きながらの練習はとても楽しい。
ただ、基礎テクニック練習、音取り、音域トレーニングetc…をやりながらは…。でも、夏のコンクールには出たいし…。
パンッ!
「もう少しやってくかぁ。」
頬を叩き気合いを入れた。
私は、かなりの負けず嫌いなので追い詰められた時ほど頑張れるのだ。
それに、もう少しで始めての中間考査だから部活ができなくなる。その間の分も練習したかったのだ。
ピコン!
ん?あっ!
母さんからのLINEだった。
『いつ、帰って来るの?ごはんできるよ。』
あぁ〜。時間切れだ。今日は、もう帰らなくては…。
渋々片付けをし、音楽室のみんなに挨拶した。
「お疲れさまでしたー!」