義兄妹の距離
なろうで完結したらカクヨムにも投稿する予定です
「おはよっすー」
「おいすー」
教室に着き、前の席にいる友人に挨拶。
「そういや颯月、今日も妹ちゃんと一緒に登校してたな。相変わらずのシスコン野郎め」
「誰がシスコンだこの変態野郎」
「誰が変態だこの野郎!俺は普通の性に関心がある年代の男の子なだけだ!」
この騒がしい変態野郎は最上 雄馬。なんだかんだ小学校の頃からの腐れ縁の友人だ。
こういうのって幼馴染って言うのかな?
幼馴染なら可愛い女の子が欲しかった。
「—————ッ!?」
「……どしたん?」
「いや……なんか今猛烈な寒気が……」
ま、まぁ俺には莉々愛がいるし!可愛い女の子なら莉々愛で間に合ってるし!莉々愛以上に可愛い女の子なんて存在しないし!誰がシスコンだこの野郎!!
「誰かに恨まれてんじゃねぇの?朝も放課後もアイツが莉々愛ちゃんにべぇっっったりくっ付いてるせいで近づけないーって」
「そりゃ告白防止の意味も込めて一緒に登下校してるからな」
「やっぱ超☆シスコンなんじゃねーか!!」
「そうやって莉々愛に頼まれてんだよ!やっぱってなんだ!!」
莉々愛から『放課後に告白されるの面倒いから一緒に帰ろー、人を待たせてるって言えば断る理由になるし』って頼まれてんだよ。
だだ、だからシスコンちゃうわ!!
「それにそこまでべったりって強調しなくても……」
「……颯月、お前……言っとくけど妹ちゃんとの距離感おかしいからな?腕組めそうなくらいべったりだったからな?」
「い、言われてみれば確かに普通の兄妹はそこまで近づかないような……」
「本当に無自覚だったのか!?これだからシスコンは……。もはや兄妹っていうよりカップルの距離感だったよ!」
「そ、そこまでか……?だ、だが兄妹なら一緒に登校ぐらいするもんだろう!?」
「しねぇよ!?昔ならともかくこの歳になって仲良く一緒に登校してる奴はかなかいないからな!?」
そ、そうだったのか……!?
……どうりで一緒に登下校してると近所のおばちゃんに『いつも仲良いわね〜』って言われるわけだ。やっと理解できた。
「もしかして……雄馬も妹さんと一緒に登下校してない……のか?」
「当たり前だ!!」
ドン!!
「な、何で!?行き先も帰る場所も同じじゃん!!」
「何でっつーか……なんか恥ずかしくなるんだよ。それで妹が反抗期の時に別々に登校するようになって……今もそのまま」
反抗期?……あぁ、そういえば莉々愛は一時期父さんを避けてたな。
でも俺にはさらにべったりするようになって……。
人間と吸血鬼では反抗期が違うのか?
雄馬には妹がいる。
それも俺と同じ一歳年下の妹が。
しかし何故か俺が莉々愛にする、もしくは莉々愛が俺にするような事はほとんどしないらしい。
俺と莉々愛の兄妹関係が普通とは若干違う事は気づいていたが……もしかして俺達兄妹の関係って思ってた以上におかしいのか……!?
「……なぁ雄馬、もしかして俺と莉々愛の兄妹関係ってかなり普通じゃない……のか?」
「普通じゃないよ、異常だよ」
「即答!?」
「さっきも……というか今までもずっと言ってきたけど、颯月と莉々愛ちゃんって兄妹どころか恋人みたいな関係なんだよなー」
「恋人て……俺と莉々愛は兄妹なんだぞ?」
「だからおかしな関係だっつってんだよ」
「うぐっ……」
「それに兄妹って言ったって血の繋がりの無い義兄妹だろ?俺は妹にそんな感情持つ事は絶対にないけど、颯月は無意識にそういう関係を望んでいたんじゃないのか?」
「いやいや、そんな事は……」
………ない、とは言いきれない。
正直今朝みたいに同じ布団で寝てたり、キスをされるとめちゃくちゃ心臓が跳ね上がる。鼓動が速くなる。
だけどさ、俺は義理とはいえ莉々愛のお兄ちゃんなんだから。
莉々愛は父さんに引き取られるまで孤児だったんだ。
だから家族には普通以上の特別なスキンシップをとってしまうだけなんだ。
俺の布団に入ってくる事だってそうだ。
幼い頃、莉々愛は1人になるのが寂しいという理由で俺と同じ布団で一緒に寝ていた。
それに莉々愛は吸血鬼の体質的に夜に強く、成長して寂しくなくなっても暇だからという理由で俺が寝る直前まで話が出来るようにと同じ布団に入っていた。
だから莉々愛は寝惚けるとつい俺の布団に入ってきてしまうだけなんだ。
「……………」
「……全く、颯月も莉々愛ちゃんも早く素直になればいいのに…。幼馴染として歯がゆいよ…」
「何か言ったか?」
「いいや別に何も、ただの愚痴さ。……まぁそんな事より、颯月と莉々愛ちゃんが義兄妹だって事情を知ってる俺から見てもお前達は完全にバカッ……カップルなわけよ」
「今完全にバカップルって言おうとしたよな!?なぁ!?」
「……特にお前達は外見的に兄妹だって気づかれない」
無視された!?
……外見的に兄妹だって思われない事は知ってる。
俺は黒髪黒眼の日本人なのに莉々愛は金髪碧眼の欧米人風だもんな。これで兄妹だってわかったら逆にビックリだ。
まぁ本当は人種どころか種族が違うのだが。
それに莉々愛の本当の眼の色は真紅だし。
「だから他者から見たら颯月と莉々愛ちゃんは完全に恋人同士なわけよ。颯月のような何の変哲も無い男が学園の天使である莉々愛ちゃんと付き合ってるように見えるわけよ」
学園の天使……ねぇ。
莉々愛は親衛隊達にそう呼ばれてる。
本当は魔族で吸血鬼なんですが。
ハンッ!人を見かけでしか判断できない奴が莉々愛を『学園の天使』とか呼んで親衛隊になるなんてバカらしいね!
親衛隊を名乗るなら莉々愛の内面までわかってから自称しろっててんだ!
莉々愛が吸血鬼だって知られたら命に関わるぐらいヤバイけどね!というか俺も最初に莉々愛を見た時『天使だ……』って思ったから見かけで判断云々に関しては何も言えないんだけどね!!
「そんなわけで颯月……お前、いつ刺されても仕方ないぐらい妬まれてるからな?この学園の大半の男子と……一部の女子と教師に」
「………は?」
刺され……妬まれ……俺が?………俺が!?
「逆に今までよく襲撃されなかったよなー」
「え?ちょっ……はぁ!?マジで!?」
「うん、マジ。大マジ。颯月は莉々愛ちゃんだけしか見れない超シスコンでよかったな!周りの目を気にしなくていいから」
え?俺そこまで危なかったの?ってか俺そこまで重度のシスコンだったの?全然普通じゃないじゃん……。
というか一部の女子と教師ぃ……。
「ま、そんなわけで今後は……というか今後も刺されないように気をつけろよー」
「………おぅ…」
知りたくなかった真実がまた一つ……。
いや、知っておかなきゃ俺が危険だったか……。
年頃の男子で変態じゃない方が逆に不健全である