兄妹対決
「莉……々…愛……」
「お兄ちゃん……?」
よかった、居た。
よかった、やっと捕まえられた。
『魔力探知・改』で莉々愛を探した結果、たぶん体育館裏にいる事がわかった。
しかし、そのまま突撃しても莉々愛にまた逃げられる可能性が高い。
吸血鬼化で身体能力はほぼ同じになったとはいえ、莉々愛には翼がある。
さすがに昼間の学校で飛ぶことはないと思うが……今の莉々愛は暴走している。最初に見つけた時もたぶん無意識で一瞬だけ翼を生やしてたしな。
だから捕まえるためには察知されずに、一瞬で莉々愛の前に現れないといけない。
ならばどうする?
……上から行くか。
しかし俺には空を飛べる翼がない。
だから、脚で跳んだ。
この体育館をまるまる跳び越えて、莉々愛の上に降り立った。
出来るか?
……いや、無理だろ。
今更ながら人間としての俺が冷静に答える。
でも、やった。
結局一息には跳び越えられず、屋根の上でさらに三段跳びする羽目になったが、こうして俺は莉々愛の前に!莉々愛の側に!俺は来た!!
「莉……々…愛……!!」
名前を呼ぶ。
が、返事がない。
というより絶句してるようだ。
何に?何を見て?……俺を見てる?
「お兄ちゃん……!眼が……!!」
………眼…?
どうしたと言うんだろう?まさか莉々愛みたいに紅眼になってたり……なんて……ありえるんだよなー……。
莉々愛からすればかなり驚き……どころかもはや恐怖だよな。
いきなり轟音とともに空から何かが飛来してきたかと思ったら壁ドンされて、さらにその相手が雰囲気と見た目が大きく変わった兄貴なんだもん。そりゃ怖いわー、引くわー。
———でも、なんと思われようと俺は莉々愛の側に居る。そう決めてるんだ。
だから、だから莉々愛———
『大丈夫。大丈夫だよ莉々愛。兄ちゃんが来た。今日はもう学校サボって帰ろっか?俺たちの家に帰ろう?』
莉々愛を安心させる為の言葉。
………ただ、その言葉を喋ることはできなかった。
「…ぃ………ガフ…ッ!?」
「お兄ちゃんっ!?」
莉々愛の顔に、髪に、さらに制服にまで赤い液体が降り注ぐ。
安心させる言葉のかわりに口から出てきたのは……不安にさせる真っ赤な血液。
過剰な身体の酷使、さらに異常な喉の渇きのせいで上手く喋れずに吐血、喀血してしまったようだ。
莉々愛の真紅の瞳が大きく揺れる。
……そんな顔、させたくなかったんだけどなぁ…。
でも結果的に咥内が血で潤ったからなんとか喋れそうだ。
いろいろと言いたいことや聞きたいことがあるけど……今、俺が言うのはこの言葉。
焦りを消し、苦痛を無視し、笑いかける。
「莉々愛………もう大丈夫、だからな」
「—————ッ!?」
そう言って抱きしめる。
莉々愛は一瞬逃げようとしたものの、壁ドンしてる状態だ、逃げられるはずもなく俺の腕の中に素直に収まった。
やっぱり莉々愛って同世代の子と比べてかなり胸大きいよなー、なんて事を一瞬思った。
「お、お兄ちゃん……なんで…?」
なんで追いかけてきたの?
なんで追いかけてこれたの?
その眼は?さっきの血は?
いろんな意味の込められた『なんで』だったな。
でも、それに関しての返答は決まっている。
「決まってるだろ……お兄ちゃんだからだよ!」
「—————お兄ちゃん、だから…?」
「あぁそうだ!だから逃げられようが避けられようが……たとえ嫌われようが妹が泣いてたら俺は絶対に追いついて助けてやる!」
あぁ言った。言ってやった。
これが俺が莉々愛を追いかけた理由だよこの野郎。
そしてまた喉が渇きはじめてきやがった。喋れる今のうちに色々聞き出さなくてはな。
「……………お兄ちゃん」
「だから莉々愛、教えてくれないか?何があったのかを」
「………お兄ちゃん」
「無理にとは言わない……こともないな。それで暴走して泣いているんだから無理にでも話してもらうぞ」
「———お兄様」
「さぁ莉々———あ?」
ん?今莉々愛はなんて言った?
なんか呼び方が違ったような……。
「お兄様」
「お、おぅ…?」
「———『眠って』———」
「———ッ!?」
瞬間、脳に衝撃がきた。
そして同時に来るのは逆らい難い強烈な眠気。
これは……『身体操作』か!?
なぜ……って、だめ、だ、い…しき……が………。
……………。
「……………———あああぁぁぁアアアァアア!!!」
脳に伝わるのは灼熱の潤い。
そして右手から伝わるのは灼熱の痛み。
何が起きた?……いや、俺が何かをしたんだ。
俺はまた右手に噛み付いてその血を啜っていた。
眠る直前、自分で自分自身に『身体操作』の魔法をかけたのがちゃんと発動したみたいだ。
初めて使う魔法だったけどちゃんと効力発動して良かったぁ……。まぁ自分の身体だしな…。
「り……リ…愛!!何しやがる!!」
「お兄様……ダメだよ、これ以上自分の身体を傷つけちゃ」
「知るか!俺はなぁ……莉々愛を助ける為なら何だってしてやる!!」
「……助けてくれるの?」
「あぁそうだ!!」
「このどうしようもない胸の痛みから……お兄様が助けてくれるの?」
「そうだ!!兄ちゃんに不可能はねぇ!!」
「—————そう」
そう言うと莉々愛は抱きついてきて———
———俺の腕を封じて、耳元で囁いた。
「———『眠って』———」
「———ガッ…!?……ぁ………」
最後に見たのは光の無い眼で俺の頭を心底愛おしそうに撫でている莉々愛の姿。
———そこで、俺の意識は途絶えた。
物語的になかなかいい所まで来ました
———ですが、正直に言います
今話分で話のストックが無くなりました。
よって、毎日投稿を中止させていただきます
現在も鋭意創作中ですが、次話はいつになるか正直未定です
エタらせるつもりは微塵もありませんので、そこだけは安心して気長に待っていてくださると嬉しいです。
では———また!




