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異変とお悩み相談と眷属と

異変に気づけるのは相手をよく見てるから



寒い


暖かい


寒い


暖かい



そんな矛盾だらけの感情で徐々に意識が覚醒していく。



暖かいのに寒い。


暖かいのに温かくない。


何かが、足りない。


(あたた)かい(ぬく)もりの、何かが足りない。


何が?


何が足りない?


それは—————






コンコン



部屋をノックする音が聞こえる。



「お兄ちゃーん?起きてるー?」



温かい声が聞こえる。



「朝だよー、起きてー、おっはよー!朝ごはん出来てるよー」



それだけ言うと俺の返事を待たずして声が去っていく。



「……………」



寂寥感と共に意識が覚醒していく。


あぁ、今日もか。今日もなのか。


あの食卓での事件(?)からはや1週間。


莉々愛はあまり俺の部屋に入らなくなった。


俺と一緒に居る時間が明らかに大きく減少していた。



俺は……莉々愛に避けられているのか…?






・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・




「なぁ、どう思う?雄馬」



「 あ ほ く さ 」



「ええぇぇええぇえええぇぇッ!!!」



学校、教室、昼休み。


俺は最近の莉々愛との関係について雄馬に相談していた。


……しようとしていた。



「全く…。珍しく真面目な顔で相談してきたと思ったら……このシスコン変態兄貴が」


「待て!100歩譲ってシスコンだとしても変態は余計だ!」


「100歩も譲らないと自分がシスコンだと認められないのか!?」



何かとても失礼な事を言われた気がする。



「そんな事言わずに相談に乗ってくれよ〜、頼むよ〜。この通り!!」


「……ふんぞり返りながら『この通り!』って頼むやつ俺初めて見たわ。殴っていい?」


「待って!冗談!冗談だから!!これは俺の真面目な相談を無下にした雄馬への仕返しみたいなものだから!だから『僕は悪くない』」


「最後のカッコ(『』)つけた一言さえなければ俺も素直に謝ったんだけどなぁ…」



調子に乗りました。


けどまぁ真面目に相談に乗ってくれるようになったっぽいから良しとする。


だってそれ程までに重大重要深刻な悩みなのだから。



「……で、その重大重要深刻過酷な相談が『最近妹が冷たい』と」


「うむ!」


「やっぱりふざけてない?」


「ぶざけてないわ!重大重要深刻過酷難解なお悩み相談だわ!」


「あーうんはいはい、確かに颯月にとってはそうだろうねー。遅過ぎる思春期なんじゃない?」


「そんな事は———ない、とは、言い切れない……けど!これはそんなんじゃない……と思う」


「ほぅ?その根拠は?」


「……そこまで避けられてないから、かな」



確かに最近は若干避けられてるけど俺の想像してる、そして雄馬から聞かされた思春期とはなんか違う気がする。


話しかければ普通に会話してくれるし、頻度はかな〜り減ったとはいえ一緒の部屋でゲームしたりもする。

少なくとも嫌悪感は持たれてない。



……あれ?これ別に雄馬に相談する程深刻な悩みじゃないのでは…?



ともあれ、莉々愛が本気で俺を避けようとするならば、家族だろうが一日中会わないように出来るのだ。


だから俺は嫌われてない。


会いたくないなら吸血鬼(ヴァンパイア)の力を使って俺の行動を操作すればいい。それに、集中すれば俺のだいたいの居場所がわかるらしい。


正式な契属魔法こそ結んでないが、10年以上も吸血され続けてきたんだ。血を捧げてきたんだ。もはや俺は莉々愛の眷属と言っても過言……ではあるが、近い存在となってしまっている。



『眷属』……そう、吸血鬼は契属魔法により眷属を作る事が出来る。これも効率的に吸血する為の能力か。


眷属化する事により(あるじ)である吸血鬼に身体を使役されやすくなる。まぁぶっちゃけ絶対服従になるって事だな。


だがそれと同時に眷属化する事で受ける恩恵もある。吸血鬼の眷属という事で夜目が利いたり、身体能力向上、さらに怪我や病気の治りが早くなる。


また、吸血鬼から魔力を受け取れば人間離れした身体能力や吸血鬼の能力を少し使う事も出来る。


ただそれをすれば酷い筋肉痛になったり身体がどんどん人間離れしていくがな……。


それとキスをしても黒猫にはならない。あしからず。


ちなみに現代の吸血鬼は眷属を作ってはならないと組織によって決められている。


だから俺のこの半眷属状態はかなり黒に近いグレーゾーンなので、父さんに吸血鬼の能力だけは使うなと厳命されている。


………もし眷属化が進むと組織に何をされるかわからないから、と……。



「………ぃ………ぅが……」



恐ろしい……ほんと恐ろしい…。あの組織絶対人殺してるよ……。



「……おぃ……そぅが……」



そもそも父さんも組織の中で結構な重役の(はず)なのに『何かあった時に証拠隠滅しやすい(殺しやすい)から』って理由で莉々愛の保護者に選ばれたんだよな…。やっぱり組織にとって『証拠隠滅』は日常茶飯事……恐ろしい恐ろしい恐ろしい———




「———おい!颯月!!」



「—————はい元気です!!」




なんだ!?敵襲か!?組織の手先か!?


テンパり過ぎて小学校の朝の会の出欠確認みたいな返事しちまったじゃねぇか恥ずかしいなもぅ!



「……で、何だったっけ?」


「お前が相談してきたんだろうがァ!!」



そうだったっけ?うむ、そうだったな。思い出した。



「という訳で雄馬の妹さん……七香(ななか)ちゃんだっけか。に、莉々愛の様子を探るよう頼んでくれないか?」


「何がどうしてそんな訳になったのか分からんし絶対に嫌だからな」


「何故!?」



七香ちゃんは莉々愛の友達、いや親友と言っても過言ではない人物で、よくうち(吾妻家)に遊びに来たりもする。


だから莉々愛の様子を探るにはぴったりの人物なのに…。



「何故ってお前……。颯月が七香に頼むならともかく、俺が七香に莉々愛ちゃんの様子を調べてくれって頼んだら七香はどう感じると思う?」


「……無謀な恋心による悪質なストーカー行為を今すぐ止めるように説得するかな」


「ほらな!?絶対に誤解されるわけよ!!……それにそもそも最近七香は俺と口聞いてくれないし……まぁ元からなんだけどさ……」



確かに。そこで『颯月に頼まれたから!』なんて言うと余計に勘違いされそうだ。


それと雄馬、強く生きろ。



「結構良い案だと思ったんだけどなー、是非もなし。なら……」


「なら?」


「俺自ら隠れて莉々愛の様子を伺うしかないな!」


「ストーカーだー!?」



こうして俺の妹ストーキング生活が始まった!


吸血鬼といったらやっぱり眷属は必要だよね!(超個人的な意見です)

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