外伝 相良エイミーはフィギュアが欲しい
「お待たせしました」
「失礼しますでございます」
「二人とも、いらっしゃい」
私は夜にリアナとユーナを呼び出していました。
リアナには時々お手伝いをしてもっていたので、ユーナに手を貸して貰うことにしたんです。
「す、すごい部屋でございますね」
「普段はカーテンで、隠してるからね」
私の部屋には大きな棚が一つあります。
そこはいつもはカーテンで覆っているけど、制作時にはインスピレーションの向上に繋がるから開けてあります。
ユーナがあっけに取られているのは、そこの棚に大量に飾られた道長君や私達をモデルにしたヌイグルミです。
「こ、これは……素晴らしいでございますね!」
「ええ、本当に」
「はううう」
手作りだから、照れるよ。
「リアナもいくつか作ったんですよ? 部屋においてあるでしょう?」
「ありますでございますね! 毎朝毎晩ご挨拶をさせて頂いてるでございます!」
「ええ、マスターのいらっしゃらない時でもマスターを感じられますから」
「素晴らしい考えであると思うでございます! エイミー様、素晴らしいですね!」
「あ、ありがとう……」
空いている時間にリアナさんに縫い物を教わった事が始まりでした。
道長君のお店の飾りにぬいぐるみを作り始めて、上手にどんどんなってきて、そして、黒い布と肌色の布を見た時に、道長君のぬいぐるみが欲しいなって思ってしまったのです。
だんだんと数も増えて、抱き枕とかも作っちゃったり。
「それで、ユーナにお願いがあります」
「はいでございます!」
私は真剣な表情で、ユーナの顔を見ます。
「ユーナには、フィギュアを作ってもらいたいと思っています」
「フィギュア……で、ございますか?」
「はい」
私の棚には縫い物しかありません。どれもデフォルメした道長君だったりイドさんだったり栞ちゃんだったりです。
これはこれで可愛いのですけど、格好いい道長君も欲しいと思っています。
「道長君には内緒でお願いします」
「旦那様に内緒、でございますか?」
それはちょっと、と眉を潜めるユーナ。
仕方ない事だと思います。ユーナは道長君に生み出された従者なのですから、道長君を裏切る事はできない存在です。
「特別に隠し立てしなくても、マスターに聞かれるまで答えなければいいのですよ?」
ユーナの説得にリアナさんも乗ってくれます。心強いです。
「それならば、ですが何故でございます?」
「は、恥ずかしいから」
できれば自分で作りたかったくらいです。でも、私はそこまで器用ではないですから。
「フィギュアというのはどういったものでございますか?」
「は、はい。フィギュアっていうのは……」
海東君みたいにフィギュアについて熱く語ることの出来ない私ですが、それでも理解してくれたようです。
話を聞いたうえで、木で像を彫る形を取ってくれる事になりました。
着色もお願いします。
「そして、これは……報酬です」
そう言ってユーナに新作の道長君ぬいぐるみを一つ渡します。
「こ、これは! よろしいのでございますか!?」
「はい、確実に、道長君に見つからない様に作業をお願いします」
「お任せくださいでございます!」
ユーナは私から受け取ったぬいぐるみを抱きしめて笑顔になります。こう見ると女の子に見えますね。
性別が無いとのことなので執事のような恰好ですけど。
思わず頭を撫でたくなります。
後日、ユーナの力作が3つほど部屋に届きました。
まるで生き写し、良い出来です。
もう少しこう、目の部分を大きくして。鼻を高くしてくれると嬉しいかな? できる? ありがとう!
じゃあ腕ももう少しほっそりさせて、ポージングこういう感じのを……私をこう、抱きあげる感じのものに、して欲しいかな。もちろん私も作ってもらって。
流石道長君の作った生産特化のホムンクルスです。ふふふ、注文も受けれるなんて素敵。
「みりみりー! いどっちー!」
「栞ちゃん待って! 持ってかないで! 本当にダメだから!」
ユーナが仲間入りした時点で、エイミーに悪用させようと思っていました




