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新大陸の錬金術師④

 柵の前で女性が止まる、地面に転がった大蛇の頭を見ても眉一つ動かしていないのは大したものだ。

 豪華な鎧のおっさんとかは目を見開いてるし、お供の人達も驚いた顔をしていた。


「失礼、ちょっとお邪魔でしたかな」


 オレはそのジャンボい頭を魔法の手提げに吸い込ませつつ、おどけて聞く。


「構わないですわ『ベイン』の首が断ち切られていると確認できただけでも僥倖です」

「それはそれは……それで、お名前をお聞かせいただいてもよろしいでしょうか?」

「エッセーナ。貴方がライトロード?」


 先ほどの先触れの人が言っていた皇女様のお名前と同じだ。

 こちらの作法ではあっているか分からないが、念のため片膝をついて挨拶をする。


「ダランベール王国より、こちらの大陸の状況調査に参りました。使者の役割も仰せつかっております。ミチナガ=ライトロードと申します、エッセーナ皇女殿下」


 偽名で通していたが、色々面倒になったのでこの名前に落ち着いた。


「よくぞ参られましたわ、使者殿。そちらに行ってもよろしいでしょうか?」

「どうぞ、ダランベールの紅茶とお菓子をご準備しております」


 紅茶とドーナッツ美味しいからおいで。

 彼女は頷くと、馬から降りる。

 偉そうなおっさんと、追従してきた5人のうち4人が馬をおり、一人が馬の手綱をまとめて預かり、一人は馬上だ。


「そちらの御仁も着席されますか?」

「う、うむ。使者ライトロード殿、某はここより西にあるエリア『ウルクス』の区長、カリム=ライナス=ウルクスと申す」

「よろしくお願いします、カリム区長殿。リアナ、お席を追加だ」

「畏まりました」


 リアナが椅子を用意したので、席に勧める。

 が、困った。ダランベールのしきたりだと一番身分の低い人間から席に座るものだ。

 しかし、こっちの人達はどうなんだろうか?


「使者殿、かけられよ」


 カリム区長が最初に席に座り、オレに席を勧める。

 オレはカリム区長に言われる通り、オレは着席をする。そして、最後に皇女殿下だ。


「どうぞ」


 紅茶をリアナが用意して、茶菓子を山盛り用意。

 オレは紅茶を口に付けるが、二人はまだ警戒気味で口にしない。

 しかし、皇女様の目がドーナッツに釘付けなのには気づいているんだぜ?

 トングを使いお皿にリアナが乗せてテーブルに並べて、それぞれに配らずに置く。


「変わった菓子だな」

「甘いパンにチョコレートという甘い菓子を溶かしてかけたものです。男性には少し甘いかもしれませんが」


 細かい調理方法は言わない。メシの種になる可能性があるからだ。

 ゴクリと皇女様が喉を鳴らして、お皿を一つとる。

 カリム区長がオレに視線を向けたのでオレがお皿を取って、最後にカリム区長が取る。

 オレは最初に口をつけて、紅茶をすすり、二人に手でどうぞと促す。


「美味い!」

「ほお、これは。砂糖とは違う甘味」

「お砂糖も使っていますけどね」


 皇女殿下がリアナに視線を向けたので、リアナがトングを使いお替りをおく。


「ダランベールではこのような菓子が流行しているのですか」

「ええ。ここ数年で。向こうの貴族でも人気のある菓子です。今では色々と派生しておりますが。遠征先故、シンプルな仕上がりのものになってしまい申し訳御座いません」


 昨日の夜にセーナが揚げた奴だから揚げたてじゃないし。






「とんでもない、素晴らしい歓待だ。流石は黒竜王の前の時代から今もなお続く強国の技術」

「そういえば、お聞きしてもよろしいですか? ハイランド王国はどうなりました?」

「ああ、隠し立てする必要もない事だが。あの国は黒竜王とその眷属によって滅んだ。そのあたりの話は気になるところであろう?」

「ええ。是非お伺いしたいと思います」


 オレが頷くとカリム区長が口を開く。


「黒竜王の台頭の後、この大陸では多くの人間が黒竜王とその眷属によって攻め込まれていった、村や街がいくつも滅ぼされ、旧ハイランド王国の王都もそれにより壊滅的な被害を受けたのだ」


 黒竜王、伝えに聞くにハクオウと同じ王竜と言われている。そんな存在が暴れまわれば、人間の住む町などタダでは済まない。


「しかし、黒竜王はこの国の街や村を滅ぼすと、この大陸から姿を消した。ここから東の大陸へ空を覆う大群が進軍していったと記録に残っておる」

「ええ、我が国に参りました。数代前の国王が自身の命と引き換えに、撃ち滅ぼしたと伝えられております」


 実際ご本人に会いましたし、黒竜王も実は冥界にいたりするんです。

 今は仲の良い飲み仲間ですね。


「おお、やはり討伐されておったか!」

「素晴らしい戦果です」

「ダランベールも壊滅的な被害を受けましたが、今は無事に持ち直しております」


 この辺は共通の話題だ。話していい事になっている。


「黒竜王により蹂躙された王都では王城も破壊されたそうです。当時のハイランド王もその時に亡くなり、王家に連なる主要人物も亡くなったと伝えられております。こちらの大陸に残った黒竜王の眷属を貴族や力ある人間がことごとく打ち滅ぼし、それらが個別に王を名乗る時代が起こりました」

「ああ、なるほど。ありそうな話ですね」


 日本で言う戦国時代的な状態になったんですね。


「国同士の諍いが止まらない中で特に力があり戦いに秀でて、統治にも力を注いでいた小国が徐々に一つにまとまっていきます。その一つがシルドニア皇国であり、ウルクス国でありました」

「我が居城に残る書物にも、ウルクス国はかなり手ごわい国であったと伝えられておりますわ」


 その会話をするそれぞれの名を引く二人の関係が、皇女と区長。

 シルドニア皇国がウルクス国を併合したって事か。


「互いに力を競い合える程の国、それらが6つ程出来ました。その6つの国を一つにしたのが、現皇王『エイドラム=ハイナリック=シルドニア』の御父上であらせられます初代王シルドニア様です」

「結構最近の話なんですね」

「ははは、実はこれ、120年ほど前の話なんですよ」

「え?」


 何とも驚き! この世界、ジジイみたいな妖怪タイプじゃなければ人間はそんな長生き出来ない。


「実は初代王であらせられるシルドニア様、神兵であらせられたのです」

「神兵……」


 よく見ると、皇女殿下の耳がちょっと尖っている。

歴史の授業なう。辻褄合わないとかあっても黙っておくのが紳士のたしなみだと思うんだ。

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こんな作品を書いてます。買ってね~
おいてけぼりの錬金術師 表紙 強制的にスローライフ1巻表紙
― 新着の感想 ―
[気になる点] 黒竜王?国竜王?
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