愛を誓う錬金術師④
「「「 かんぱーーーーい! 」」」
宴、パート2。
オレの手持ちの石化の回復薬で、この里の石化した人たちが回復したお祝いだ。
手持ちの薬は使い切ったが、この里だけでなくこの里の近くの別のエルフの里の住人も素材集めに走ってくれているらしい。
指定した素材、ちゃんと認識してくれてるか?
「それでねぇ、うちの新しい息子ったら、そりゃあもう元気でねぇ。あたしも当てられちゃって……」
「子供が出来やすい日を調べる事が出来るのか。人間の技術はすごいな。どこで買える? 何? 別大陸? それは厳しいな。魔王軍との戦いで里の人員も減ったから……」
「ん、男には言えない方法。でも数に限りがある」
「人間なら作れるのよね……?」
「たぶん」
「そう」
「へえ?」
「なるほどね」
なんか視線を感じるぞうぅ!
「救世主道長は魔王も倒したんだろ? やるなぁ」
「魔王を倒したのは稲荷火達ですよ。オレは後方支援」
「稲荷火だと? 世界樹の枝ぶった切ったあいつだよな」
「あ、ほんとだ! 枝減ってる!」
「その節はご迷惑をお掛けしました……」
ほんと、何度エルフに頭を下げた事か。
「あんにゃろぅ……次来たら切り刻んでやる……」
「でも日当たりは少し良くなったぞ」
「おお、月も見えるなぁ」
「月見酒だ!」
「月見酒だな!」
「ああ、確かに。月見酒するのに2時間も3時間も移動しないで済むのは良いな」
え、こいつら月見ながら酒を呑む為だけに移動するの? この森の中? 魔物もいるのに?
「儂らが寝とる間に、バズライトニング=ベリーが出たそうじゃぞ」
「なんと! あの伝説の!」
「く、食いたかったなぁ!」
「お前じゃ無理だろ!」
「儂よりはよう動けるようにならんと無理じゃなぁ」
「一番は儂だぞい」
「どこに出現するかも変わるぞ」
「今のうちに構えておくか、こう! こう!」
「やめんか! 酒がこぼれる!」
そんなに美味しいのか。気になるな。
「ライト、カレー食べたい」
「イド、酔ってるな。お腹に障るから程々にしておけ……」
「わたしが吞まないと、道長が呑まされる」
「十分呑まされてるよ」
石化から戻ったエルフ達は特にテンションが高い。そりゃ彼らの中ではついさっきまで戦闘中だったからな。
部位欠損の怪我を負ってるエルフやら、明らかに重症なエルフもいたから上位回復薬も放出する破目になったんだぞ? 損害だらけだ。
「カレー」
「寄りかかるなよ、ったく」
「お熱いわぁ」
「あはははは、みちにゃがくん! わたしもだっこー」
「エイミーは完全に出来上がってるな」
「にひひ、ホントよね」
ちなみに栞はザルだから酔えるが潰れる事は無いらしい。
向こうでは潰れた事あるらしいが、こっちにきてから平気になったらしい。
「お兄さん、イド姉さんの言ってるカレーって何?」
「オレの世界のご飯だよ。でも呑み会で食うもんでもないしなー」
ビール吞みながら食う人もいるけど、呑み会のメインになるものでもない。
「私も食べてみたい」
「いいわね、向こうの食事」
「ほほう、道長君。そんなものをまだ隠してたのか」
「お姉さん、パパさん。昨日カラアゲとか軟骨揚げとか出したでしょうが」
「知らんものは気になるのだ、周りを見てみるがいい」
ふと周りに視線を向けると、ものすごく静かに、そして期待した視線でこちらを見つめるエルフがいた。
怖いわっ!
「米炊く時間がないからパンだぞ……」
「ん、ライト大好き。これ呑んで」
「現金だなぁ、ありがと」
おお、結構強い酒だ。クラっときた。
でもイドのリクエストはやるのだ。
じめんー、じめんー。
あ、昨日もですが、外です。村の広場が呑み会の会場です。
「あー、ざっと80人くらいか。面倒だー」
地面に手を付き即席で竈をさくせー。
そこに火の魔道具を置いて火をつけ、大きいお鍋3つに水を入れる、同じく大き目のフライパンに油をひいて温める。
「何がいいかなー」
「べひーもすぅ!」
「この人数分なんかねえ! 地竜でいいかぁー?」
「「「 おおーーー!! 」」」
魔法の袋から血抜きだけして死体のままの地竜を取り出し、地面に転がす。
雑に鱗をとってー。
肉ひっぱりだしてー、錬金術のようりょーで軽く熟成させてー、切り刻んでー。
「ご主人様、大丈夫?」
「へいきへいきー」
あ、セーナだ。てつだえー。
「いいけど……」
「やさいきってー、やいといてー」
「おお、客人すまんな! 吞んでくれ!」
「あざーす」
ぐびぐび。
なんかてきとーに野菜をだす。
「カレー、よね?」
「ん、この辺のやさいのがうまいからー」
しおりやエイミー達のとは違ってにんじんたまねぎにこだわるひつようはなーし。
「やいてー、やいてー、ゆでてー、ゆでてー」
「ちょっ!? まだルー早いわ! 灰汁とりするわよ! 面倒がらないでよね。その野菜はまだ早いわよ! 形が崩れるでしょ!?」
錬金窯と同じ様に魔力を込めて一気に作り上げて熱したら怒られた。
しっぱい。
最初はシチューかと笑っていたエルフ達の顔色が、ルーを入れた瞬間に変わった。
カレーの匂いは強烈だからねー。
ちなみに固形ルーではないです。魔法の鞄に入れておけば劣化を抑えられるから固形にする必要はないのである。
溶けるのもこっちのが早いしね。
この人数分のカレー、まともにつくれば2時間以上かかる。
でもおいちゃんのスキルでぎゃーんすればー。
「できたー、かってにくえー!」
「「「 おおおおおお!! 」」」
1杯目はみんなで平等に食べて、2杯目からは量が限られてるからなんか戦いが始まってた。
さすがえるふだー。
「あははははは」
戦いの余波でなんか飛んできた!
いってぇ……。
あー、なんか気持ちよくもなってきた。
「はぁ」
そして翌朝、目を覚ますと白目を剥いてベトベトで全裸なエイミーと、朗らかな顔でやはり全裸なイーファンナちゃん。あと名前も知らないエルフの女の子がやはり全裸で一緒に寝てた。
料理工程にツッコミはなしよー!




