愛を誓う錬金術師①
「むぅ。わたしの断りも無しに……」
「ごめんってイド」
「イド姉さん、機嫌直して下さい」
「あたたたた、頭痛い……」
「エイちゃん二日酔い?」
「多分、お酒が原因だけじゃないわよねぇそれ」
「ウチの娘たちは積極的だなぁ。どうだい道長君、イドちゃんだけじゃなくて全員貰ってくれないか?」
「あー、頭周らんわ」
イドの両親にイドとの結婚の許可を貰いに来たつもりなのに、気が付いたらイドの姉と妹を抱いていたとか洒落にならんわ。
「道長君のお嫁さん達には悪いかなって思ったんだけど、我慢できなくて」
「イド姉さんの認めた相手、これ以上の男はこの世に存在しない」
「それは否定しないけど、せめてわたしも混ぜるべき」
「イド様、妊婦なのですからいけません」
「リアナがそう言ったから、我慢したのに……せめて一緒に寝たかった」
「ねえねえ道長くん。私、誰に怒ればいいのかな」
「勘弁して下さい……」
項垂れるオレ。
「昨日道長君、酔いつぶれて家に運ばれたじゃない? イドは子供がいるからって別の部屋でリアナちゃんが一緒にいたし、セーナちゃんとイリーナちゃんは石化の回復薬の準備って言ってどっかいっちゃって、ジェシカちゃんも一緒に行っちゃったし」
「栞さんは酔いつぶれたエイミーさんの介抱するからって。誰もいないからチャンスだって思って。同じくお酒に酔ってたイド姉さんの薬パクって試してみました」
その言葉に目を見開くイド。ポケットを漁り薬が減っていることに驚く。
こらイド、そんな薬持ち歩くんじゃありません。
「あらあら、イドちゃん。あとで母さんにもその薬分けてね」
「ん、そろそろ弟が欲しいと思っていた。少しあげる」
「み、道長君」
「パパさん、こういう時に声を出しちゃだめだ」
ダメなんだ。
「でも道長君、完全に寝入っちゃってて。弄っても舐めてもしゃぶってもあんまり反応してくれなかったのよね」
「私もコレで頑張ったけど……」
胸を持ち上げないでください。
「そうしてたら、栞ちゃんが来たの『不審者! みっちーに何をする気!?』って。でも全裸で転がしてた道長君や同じく全裸の私達を見て硬直しちゃって」
そりゃあそうだろう。
「そこで、お姉が魔法で縛って、栞さんを捕まえた」
「そうそう、その衝撃で道長君に倒れこんじゃったんだけど、そしたらねぇ」
「や、やめてください! お姉さん!」
「ダーメ」
「そしたら道長お兄さんが栞さんには反応して『しおり』って言いながら栞さんに顔をうずめたのです」
「え? オレ?」
全然覚えてないっ! くうっ! なぜだぁぁぁ!!
「道長くん?」
「なんでもありません」
エイミー怖いっす。
「それで、栞ちゃんを横に置いておいたら道長君も『元気』になったし、一応用意しておいた男の人がぶっとべる薬を飲んで貰って頑張って貰いました」
「え? あれ使ったの!?」
え? オレ何使われたの?
「栞さんにはイド姉さんの薬を。私のファーストキスは道長お兄さんですけどセカンドキスは栞さんです」
口移しっすか!!
「大丈夫、ちゃんと1回目は栞さんに譲ったから」
「ん、ならいい」
「いいの!?」
「イドさん!?」
「序列は大事。一番はわたし、二番は栞、三番がエイミー。最近2番と3番の争いが激化中」
「お薬の力もあったけど、栞さんすごかったです。栞さんってお兄さんの事をその」
「言わないで! ホント言わないで!」
「へー、栞ちゃんも結局なんだぁ」
「ちがうの! あたし縛られてたの!」
「あら? この程度ならいつでも抜け出せるとか言ってなかったかしら?」
「違うの! そうじゃないの!」
「縛られるのに快感を……」
「やめて! 妹ちゃん! ほんとごめんなさい!」
ほほう? 覚えてないが興味深い。
「ん、二人も授かれると良い」
「3回じゃ無理じゃない?」
え? 一人3回もやったのオレ!?
「私、初めてだったから。上手に出来たか不安」
しかも初めてちゃん!?
「はっはっはっ、今日も宴会だな!」
「あたし、ちょっと眠い……」
「そりゃそうでしょ。栞ちゃんのバカ」
「や、エイちゃん! あたしは無理矢理!」
「つーん」
朝からシモネタがきつい。
「ねえねえエイミーさん。お兄さん、栞さんの時みたいにエイミーさんにも反応するかな?」
「え? それは、その……うう」
「じゃあ今夜も試してみないといけないわね」
「ヤメテください! 本当に!」
オレの叫びがこだまする。
「色々あった後で申し訳ないのですが。クルフィンさんエインシャルさん、イドとの結婚を考えています。認めて頂けますでしょうか?」
男としてのけじめである。
既に子供がイドの中にいる以上、改めてご両親に挨拶と許可を求めなければならない。
「え? どうしたの道長ちゃん」
「昨日祝言をしただろう?」
「は?」
オレそこまで記憶飛んでた?
「ライト、変な事言わないで」
顔を赤くしつつも、オレの袖をひっぱるイド。
「わたしと、栞と、エイミーとの祝言はしたでしょ」
「へ?」
「え?」
「はい?」
オレだけでなく、栞とエイミーも驚いている。あれ? エイミーは潰れてたけど、栞結構意識しっかりしてたよね?
「えっと、あれが結婚式だったんですか?」
「結婚式? ああ、そんな言い回し、交易の里で聞いたことあるな」
この辺りでは結婚式とやらは行われないらしい。
「そうか。人族では違うのかな? 昨日の宴は、イドちゃんと君達の関係を親や兄弟、里の者達が認めたからこそ行われた物だぞ。道長君は【救世主道長】として有名だからみんな納得してくれた。まあ歓迎会も含まれていたが」
「そう、なんですか?」
「ああそうだ。そもそもエルフは寿命が長いからな。同じ里の中でも別れてくっついてまた別れてが当たり前だからきちんとしたその結婚式? とやらはやらないよ。まあ子供が出来たらきっちり所帯を持つがね。私もエインシャルが4人目で2回目の妻だし」
「そういうもんですか」
「そういうものだ。実際に大がかりなお祝いは子供が生まれた時くらいかな? イドちゃんの場合はまだ生まれた訳じゃなく、授かった段階だからまだやらないね」
文化の違いがここにっ!
「ちなみに、そちらでの風習だとどうするんだい?」
「えっと、教会とかで、お互いの家族や友達、仕事仲間なんかを集めてお披露目をします。あとは指輪の交換とか」
「指輪?」
「それを付けてると、あたしは既に結婚してますって。他の人にも分かるんですよ。憧れるなぁ」
「うん。私も、欲しいな」
「そんな見つめないでくれ……用意してあるから」
オリハルコン使って頑張ったのあるから。
「ホント!?」
「やった!」
「わたしの分も?」
「何故疑問形なんだよ……ちゃんと式を挙げたら渡すつもりだったんだよ。全員分ある」
「結婚式かーなんだかんだであたし、憧れあるなぁ」
「それなんだけど、教会も神父もいないんだよな。や、一応あるしいるけど、ここの教会って太陽神教か月神教。クリア様かディープ様が主神だから」
「あー」
「そういえば……なんか結婚式とはちょっと違うね」
「……イドはともかく、二人とはちゃんと日本式の挙式をしたかったんだ。日本に帰ってから。でもイドに子供が出来たっていうから。その、ちゃんとしようと思って」
オレがいうと、栞とエイミーはお互いに頷いて両方からオレを抱きしめた。
「すっごい嬉しいよ」
「もう、それってプロポースだよね。道長くん、私はそれだけで十分だよ」
「いや、その」
「でもでも。結婚式あげるって、どっちのさ。日本が多少自由でも、あたしとエイちゃんの式を一緒に挙げるって頭おかしいでしょ」
「う……」
「うちの両親は絶対反対すると思う」
「あたしんとこもそうだよ。3人どころか5人と関係を持っている男に嫁ぐ娘を心配しない親なんていないよ?」
「げ、現実的な意見を」
「あたしは、ちゃんとみっちーのお嫁さんになりたいよ。でもそれで、みっちーがやりちんのスケコマシって言われるのは嫌」
「言い過ぎじゃないか!?」
へこむ。
「うん。式なんかなくてもいいもん。ずっと道長くんと一緒なら、それでいいの」
「ははははは! 新しい息子はモテモテだなぁ!」
「初々しいねぇ、胸やけしそうだよ」
「ま、負けてられない」
子供が出来たばかりのイドと、その両親の前で別の女の子とイチャつくオレは十分にヤリチンのスケコマシだと思いました。
新章的な?




