錬金術師と戦闘狂の里⑩
「「「「「 かんぱーーーーい! 」」」」」
気が付けば夜。エルフの里の面々も含めて大宴会だ。
酒はありったけ用意があるぜ!
「救世主道長殿! イドをよくぞ射止めたっ!」
「あのイドリアルが子供かぁ! こりゃあめでたい!」
「最後の子供は20年前だっけか?」
「30年前じゃなかったか?」
「さあなぁ! しかしめでたい事には変わりない! 婿殿! のめのめ!」
「イドリアルより強いんだろう!? なあ! 模擬戦どうだ!? なんなら実戦でもいいぞ!」
里の男連中に囲まれて酒呑まされまくっております。
勢いが強い!
「ねえねえ、いどー。彼とのなれそめは?」
「いつ惚れたの? どうして惚れたの? 教えて教えて!」
「出会いは? どっちから惚れたの!?」
「……私」
「まあまあまあ!」
「「「 きゃーーーー! 」」」
女性陣は楽しそうだ。
しかし、イドがオレに惚れた理由か。
き、気になるっ!
「1度目は族長の証を見せてもらって、戦があった事とか少し聞いたりした。2度目は、敵対した」
「「「 敵対! 」」」
「戦いから始まる恋っ!」
「さすがイドリアルね!」
「き、聞きたすぎぃ!」
「私も知りたい! イドさん教えて!」
ストッパーになってくれそうなエイミーの顔が赤い。少し吞まされてるかな?
「んと、とある大きい魔物。鹿の魔物が出てきて、戦おうとしたらあそこのセーナとカチあった」
視線の先には給仕をしつつ、エルフのおっさんたちから逃げ回っているセーナだ。
「セーナはライトの従者。ライトの指示で、わたしが魔物を倒さないように足止めされた」
「へぇ、イドを足止め出来るなんてあの子も強いのね」
「うん。なんとか行動不能まで追い込めたけど、ライトに先手を取られた」
「そうなの!? イドリアルが!?」
「あんた出稼ぎ組よね。腕鈍ってるんじゃないの?」
「そんなこと、ない」
「ですよねー」
エルフの女性の一人がお手上げポーズ。
「で、ライトとでっかい鹿の魔物と戦ってる時に横やりいれて、1撃かました。でもそのあとライトから反撃がきて、気が付いたらライトの家にいた」
「倒されたの!?」
「イドを!」
「ひゅーーー!!」
茶化されているイドの言葉に、イドの親父さんやら他の男性陣に小突かれるオレ。
酔ってるからか、エルフだからか、両方かもしれんがいてえ!
そこでイドが首を横に振る。
「起きて、体に異常がない事に気づいた。ライトは何もしてきてなかった。負けて悔しい反面、押し倒されなくて残念な反面、興味が湧いた」
「おい道長君、イドちゃんに手を出してないとはどういうつもりだ! 倒したんだろう!」
「落ち着けおっさん、そういうつもりでイドを倒したんじゃない」
こっちのやり取りに気づいてるのか気づいてないのか、イドは話をつづけた。
「ライトの家で負けた事に少しへこんで、その後でライトを観察しようと思った。私を初めて倒した男の事、知りたくなったから。ライトの家に住む事にした」
そんな流れだったんだ? 世界樹の家だヒャッハーじゃなかったっけ?
「ライトは、わたしにあまり興味を持たない感じだった。襲ってこいと言わんばかりの格好で近くにいても」
「おい、道長君」
「痛い痛い痛い」
肩を掴むなっ! 砕けるっ!
「ライトは錬金術師、何かを研究してた。後で知ったけど、わたし以外のライトの嫁の2人の為の薬」
「あ、あたし達の?」
「ああ。あの……」
「二人は病気だったの?」
「でも元気になれたんだ? 良かったわねぇ」
蘇生薬の事だな。
「その頃は知らなかったけど、ライトが何か真剣に作っている様は何度も見てた。すごい集中力で、頭のおかしいレベルの魔力で、何かを成そうとするライトは、その」
ちらりと視線が混じる。
「か、格好、良かった」
「「「 きゃあ! 」」」
「うん。道長くん、一生懸命の時、すっごいかっこういいんだよー」
エイミー、それは酒樽だぞ。
それとエルフの男性陣、ニヤニヤすんな。うざったい!
「でもライトは旅を続けるって。だから最後は、わたしと道が分かれる、そう言ってた。だから、子を貰うといって」
「「「 押し倒した!! 」」」
エルフの女性達が口を揃えて言い、イドも小さく頷いた。
「で、きちんと授かった」
「はやいっ! すごい!」
「なんで!? それって20年くらい前の話なの!?」
「ん、2,3年前」
「最近じゃない!」
「人間の、信頼できる錬金術師に相談して、こんなのあるよって、薬貰った。エルフに利くかわかんないって言ってたけど、的中」
「すごいすごい! 人間ってそんなのも作れるのね!」
「栞とエイミーの分もばっちり」
「そ、そんな気遣いいらないよぅ!」
「それでね、その時にみちながくんがね、こう、わたしの頭に手をあててくれてね」
誰かエイミーさんを構ってあげて。
「ごちそうさんだなぁ。クルフィン、娘さん幸せそうで良かったなぁ」
「うう、イドちゃん! おめでとう! あんなに一生懸命しゃべって! 可愛いよ!」
「さあさあ道長殿、のめのめ!」
「うはははは! 宴じゃ宴! 誰か勝負せいっ!」
「やんのかこらぁ!」
「テメーらこの近くでやんなよ! メシに砂が入ったら殺すかんなぁ!」
「つまんなくても殺す!!」
「酒飲んでから外いけぇ!」
「どーせいつもの泥試合だろうがぁ!」
そんなこんなで限界まで酒を呑まされて、限界を超えても酒を呑まされて。
翌朝、目を覚めたら、白い陶磁器のような綺麗な色に視界が包まれた状態だった。
「おはようございます、道長お兄さん」
「あら、おはよう。ごめんね、こんな格好で」
「うう。みっちー、すまん……」
イドの姉、イーラサーナさんと妹のイーファンナちゃんが裸で。それと、腕が縛られた栞がやっぱり裸で白目を剥いてオレの周りに転がっていた。




