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新大陸の錬金術師②

「周辺を探索してみたけど、村や町は見当たらなかった」

「です!」

「でも街道の名残みたいのはあったし、誰かしらが使ってる形跡もあったよ。人間か分からないけど2足の生物。雨が降ったからか、はっきりとはしないけどね」

「です!」


 周辺探索を頼んでいた栞とイリーナが報告に帰ってきた。

 イドとエイミーの2人は別で港町跡を調べてくれている。


「ここから見て西に向かって出入りがあったから、そっちに何かしらいると思う。壊れた武器も落ちてた。比較的新しい人の痕跡も。たぶん文明レベル的にいうと向こうと変わんないだろうね」


 そういって栞に渡しておいた魔法のポシェットからいくつかの剣や槍が出てくる。

 オレはそれらを見て頷いた。


「剣はともかく槍は焼き打ちされてるな。型にはめて作るタイプじゃない。しかも鉄じゃない、鋼鉄だ」


 それもかなり質がいい。腕のいいドワーフが丁寧に作ったような鋼鉄だ。


「流石専門家」

「見つけてくれた大盗賊様の手柄だよ」

「ふふん」

「イリーナも! イリーナも!」

「ああ、お前もよく栞を守ってくれたな」

「ふふん!」


 自己主張の強いホムンクルスには頭をキツネ耳ごと撫でてあげる。


「数は結構あったよ、古い物から新しいものまで」

「ほんとだな。年代を測定する意味はないかもしれないが、新しい物は分かりやすい」


 槍の先や折れた矢の鏃を見て、触ってみる。

 どう考えても知性のある生き物の作品だ。


「生き残り、いるみたいだね」

「ああ。黒竜王を名乗る王竜がこの大陸を蹂躙してから150年以上経っている。人間や獣人、ドワーフなんかが盛り返しているのかもしれない」


 少なくとも、魔物がこういった武器を作れるという話は聞かない。

 武器を持てる魔物が持っているとしたら、150年以上前の朽ちた武器しか残っていないはずだからだ。


「敵はさっきの大蛇かな?」

「きっとそう。鎧なんかは残ってなかったから丸飲みにされたんじゃないかな」

「嫌な事を言うなぁ。あっさり倒した癖に」

「ふふん」


 栞の肉体、エイミーもそうだが。オレが蘇生した時に、生前よりかなり強化されてしまっていた。

 使った蘇生薬の性能が良すぎたらしい。

 栞の身体能力はエルフのイドに匹敵する。1対1ならば聖剣を持った稲荷火をも凌駕するだろう。聖剣で栞を捕らえられる未来が見えない。

 エイミーも人間では考えられない程の筋力や持久力が備わったが、元々前衛職ではないため、イドのそれには劣る。

 その代り、イドやオレ以上の魔力を持ち、幻術の扱いはもはや神の領域だ。

 ぶっちゃけ手段を選ばなければ、一番強いのはエイミーだ。もはや魔王である。

 内気で優しい性格だから、そういう面は見せないが。

 そしてぶっちぎりに弱いのはオレである。戦闘職ではないリアナのが強いもん。

 悲しい。


「ここ、整備するの?」

「生き残りがいて、ここの奪還を目指しているならそっちと話をしてからだな。海のそばで安全な場所ってのは貴重だ。なんてったって塩が取れるからな」


 空から見た感じ、背の高い岩山とかが見える範囲にはなかった。つまり岩塩が確保できないことを意味する

 まあもっと高く飛べば見つかるかもしれないが、空を飛べる船なんか普通は持っていない。塩が取れるとされる魔物もいるが、そう都合よくいるとも限らない。


「イド達の調査次第だが、人のいる形跡があるのならそっちに向かった方がいいだろうな」

「リアナはどうする?」

「船の転移門を使って一度オーガの島に行って貰うかなぁ。でも仲間外れにするのもなぁ」

「そうだねぇ、笑顔で平気ですって言われると心がこうズキズキと」

「なんだかんだで寂しがりやだからな」

「エロい設定にしたよね」

「オレが決めたんじゃねーよ」


 知恵の実を使って作成をするホムンクルスの性格はコントロールなんか出来ないんだから。


「セーナと一緒に船を守らせるか、こっちから向こうに何か合図を送るか」

「合図?」

「変な物を呼び寄せる可能性もあるが、狼煙とかだな」

「ああ、遠くから見えるもんね」

「人以外にも見つかるのが難点だ。黒竜王の眷属が残っていたら厄介だし、ハクオウと同じ王竜がいるって話だ。目を付けられたら死ねる」

「王竜かぁ、流石に戦いたくはないなぁ」

「オレもだ」


 とりあえず船を中心に安全なエリアを拡大させるのが一番かな。

 毎度おなじみの結界柵で船を中心に結界を構築していく。

 食料はたんまり用意しているから、しばらくはここから活動範囲を広げていくことにしよう。






「周辺の魔物はたぶん片付けたと思うよー」

「そうね、魔素溜まりも潰したし」


 そう言って魔力を吸収する魔道具をオレにイドが返してくれた。

 魔道具といっても魔力が抜け切れた魔石に魔法陣を彫っただけのものだが。


「どんなのがいた?」

「小物だらけ」

「えっと、トレント系とか植物系が多かったよ。虫の魔物もいたけど小さいのばかり。大きいのは食べられちゃうからいなかったんじゃないかな」

「エイミーの言う通り!」

「わたしもそう言おうと思ってた」

「変に張り合わなくても、まあ了解」

「それと、あの蛇の卵かな? 大きい卵を5つ見つけた」

「マジ?」

「うん」

「じゃあ番だったのか」

「そうかも」

「でもあの蛇以外にいない気もする。脱皮のあとの皮もいくつかみつけたけど、傷の跡とかの位置がおおむね同じだった」


 イドは博識だ。


「ちなみに脱皮した皮は?」

「しおりのポシェット」

「ありがとう」

「絶対欲しがると思った!」


 だってなんかに使えそうじゃん!


「しかし卵かー、卵どうするかー」

「食べる?」

「毒とかないかな?」

「不明」


 ポシェットから卵を取り出す栞。

 栞が小柄なせいもあるが、彼女が一抱えもしなければならない卵は巨大だ。

 生まれた瞬間で、既に一般的なヘビよりも格段にでかい大蛇だ。


「あるじー」

「ん?」

「リアねぇにそだててもらう」

「ああ、なるほど」


 篠崎の才能を引き継いでいるリアナなら、魔物の扱いは専門家だ。

 先日の大蛇クラスの魔物が相手では調伏させることは出来ないが、生まれたての子供ならいけるかもしれない。

 何よりリアナ、今は暇だ!

 回復役のリアナの手が空いているのは良い事だが、本人がそれを気にしている節がある。


「何かの素材にするより全然いいな」


 卵という素材は食べ物以外にも薬などに作り変える事が出来る。

 育てさせて戦力にする事を考えるより、そっち方面に役立てた方が有用な場合もあるのだが。


「リアねぇよんでくる!」


 言うが早い、イリーナがダッシュで船まで行ってリアナの手を引っ張って出て来た。

 リアナは何も聞かずに引っ張り出されたようで、こちらに困惑の視線を送っている。


「あの、マスター?」

「ああリアナ。ちょっとこの卵を見てくれ」


 5つある卵をリアナに見せる、リアナは何も聞かずに頷いてその卵を見つめた。


「爬虫類系かドラゴン系の魔物の卵ですね。こっちの3つは中で死んでます。そちらの2つ、右側から特に強い力を感じます」

「やっぱあの蛇の卵か」

「大きさ的にも間違いないかと思います、右側の子が左側の子の力を吸い取ってますね。左側の子も恐らく孵る事はないでしょう」


 聖女の力も相まって生命力というものに敏感なリアナが判断をする。

 そうなると、孵るのは右側の蛇だけか。


「多分今夜にでも生まれると思います」

「リアナ、お前の支配下に置けるか?」

「え?」

「オレ達の戦力になるほどの魔物は調伏出来ないだろ? でもこいつなら生まれてすぐにお前の支配下に出来る。育てる気はあるか?」

「いいじゃん! やりなよリアナ! イリーナのもふもふも可愛いけど蛇のツヤツヤもきっと気に入るよ!」

「ねえ、力を吸い取ってるって危なくない?」

「ああ、そうだな」

「いえ、多分それは魔物の習性なのではないかと思います。複数生んで一番強い個体を成長させるための」

「そんな魔物がいるの?」

「ええ。実際に見たのは初めてですが。ですがそういった能力のある魔物ですから、ドレイン系のスキルを保持して生まれる可能性も十分にあります」


 リアナは卵に釘付けだ。


「リアナ」

「は、はい!」

「言い方が悪かったな。やってくれ、出来なかったら生まれたばかりでも殺さなければならなくなるが」

「わかりました。お任せください! 立派に育ててみせます」


 リアナは頷くと、両手の拳を持ち上げてグッと力を入れ気合をいれた。

 そして夜になり生まれたのは細い体の白い蛇。

 ミルクを与えたらそっぽむいて、エーテルの瓶を咥えてグビグビ飲んでいる。

 贅沢な仲間が増えたようだ。

従者にお仕事を与えるのも主のお仕事です。

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こんな作品を書いてます。買ってね~
おいてけぼりの錬金術師 表紙 強制的にスローライフ1巻表紙
― 新着の感想 ―
[良い点] いつも楽しく拝読させていただいております。 応援してます。頑張ってください。 [一言] 「剣はともかく槍は焼き討ちされてるな。型にはめて作るタイプじゃない。しかも鉄じゃない、鋼鉄だ」 焼…
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