自由都市の錬金術師⑦
「ダンジョン行ってくる」
「え? いいけど……あれ、イド。その耳」
「道長くんも引っかかるなら問題ないね!」
「エイちゃんの実力ならこの程度余裕だね!」
ある朝、イドの耳が普通の人間の耳になった。
触ってもエルフ耳と感じない。
「すごいな!」
「ちょっと……」
「あ、悪い」
「ん、言ってからやって。触っていいから」
「お、おう」
「「 じー…… 」」
気軽に女性の耳なんか揉んじゃあかんね。失敗失敗。
「エイミーの幻術か。分かってても解けないな」
「私が近くにいればずっとこのままに出来るから。流石に離れると何かの拍子で解けちゃうかもだけど」
「じゃあエイミーも一緒に行くの?」
その質問に、珍しく魔導師のローブを着こんで小さな杖を持っているエイミーがコクンと首を縦に動かす。
ダンジョンに行きたがるなんて珍しい。
「あたしも行くよ!」
「旧港町の店舗はお休みに致しました」
「ああ、いいよ。リアナも付いてく?」
「マスターのご許可を頂けるのであれば、とは思っておりました」
「もちろんいいよ。みんなが怪我したら治してあげて」
「はい」
そこでオレはふと思いついたことを口にする。
「ジェシカも連れてって」
「へ? 自分もっすか?」
「イド、ジェシカの戦い方を見てきてやってくれ。イドならジェシカに適性のある武器や防具が分かるだろ?」
「問題ない」
「えーっと?」
「今後も旅に連れていく以上、今の兵士の鎧と剣と盾じゃ心もとないからな。同じようなのを新しく作るつもりだったんだけど、どうせならもっと良い物を用意してやらんとね」
「おお! 自分も武器とかもらえるんすか!?」
「ダンジョンで役に立たないレベルの戦闘力しかない場合は後方待機にしないといけないからな。危ない目に合うかも知れないし」
「ぐぬぬ、自分奴隷兵の部隊の中では上位の部類っす! 神兵様には勝てないっすけど! あ、イリーナちゃんも無理っすけど」
「まあこんな感じなんで世話をしてやってくれ」
「わかった」
「セーナ、イリーナ。二人は留守番な」
「ええ、構わないわよ」
「あるじのおてつだいするー」
セーナとイリーナまでいなくなったらオレ一人だけになってしまうのである。
「昨日から既に注目が集まっている。この家を出入りするだけでも何かしら聞かれたり絡まれたりするかもしれない。十分注意してくれ。エイミーとリアナは浮遊する絶対盾を常に起動しておくこと」
そう言って魔法の袋から2対4枚の浮かぶ盾を2セット、8枚出してエイミーとリアナの周りに浮かばせる。
「イド、栞」
「ん」
「はいはい」
「みんなを守ってくれ。多少手荒になってもいいから」
「了解」
「もちろん!」
「エイミー」
「は、はい」
「頼むからやりすぎないでくれ」
「どういう事かな!? 道長くん!!」
手加減を知らないエイミーは怖いのだ。
「リアナが抑えますから」
「リアナさんがいれば安心っすね」
リアナで抑えられるといいが……。
過去一に短め。




