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新大陸の錬金術師①

下手に〇〇の錬金術師とタイトルを付けると、某国家公認の錬金術師の誰かと被るから注意が必要だぜ!

「さて、どこかで着陸地点を探さないとな」


 無事に新大陸に到着したが、見た限りでは街の形跡は。


「あそこ、港町じゃない?」


 あった。


「樹海に呑まれているみたいね」

「元々ダランベールと国交があったらしいからな。その名残じゃないか?」

「ん、エルフも何人かこちらに渡ったらしい。知り合いがいるかもしれない」

「まあ滅多な事が無ければいるだろうな」


 エルフという種族は寿命も長いし魔法も使えるし戦闘能力も高い。


「海上で船が破壊されてなければ」

「ああ、その心配があったな」

『ご主人様、接岸する? それともどこか平らな場所を見つけて着陸?』

「上からぐるっと確認してみて様子を伺おう。その後で平らな場所を探そうか」

『了解』


 管声筒からセーナの声が聞こえて来たので指示を出す。セーナはオレに忠実なホムンクルスだ。この海空艇は分類上武器扱いになるらしく、バトルマスターの才能を引いたセーナが一番操舵が上手かったので任せている。

 オレにセンスは無い事も無いが、オレが操舵すると揺れが激しく酔う。エイミーの運転も同様に、酔う。

 無難な運転をするのはイド。

 リアナはスピード狂で速度を出したがるから却下。

 一番無茶苦茶な操舵をするのは栞だ。

 操舵室の造り上、イリーナは台が無いと手が届かないので割愛。


「あるじ、蛇」

「ああ、デカイ蛇だなぁ」


 ジャイアントパイソンの亜種か何かだろうか。胴体が太く全長が確認出来ない程の大きさの蛇が地面をクネクネと進んでいる。


「あ、こっち見た」

「気づかれてない?」

「幻術はかけているけど」


 その蛇は舌をチロチロさせてこちらの方を気にしている。というか気づいてるなこれ。


「蛇って、目はあんま良くないんじゃなかったっけ」

「そんな事を某園長が言ってた気がするー」

「視覚を誤魔化す幻術しかかけてないから」

「気づかれてるわね」

「セーナッ! 結界発動!」

『了解!』


 オレの言葉に呼応するように、その巨大な蛇は顎が割れんばかりに口を開きオレの船に襲い掛かって来た。


「マジか! この船を飲み込む気か!?」

「そうみたいね」

『結界を発動! 衝撃に備えて!』


 オレは横に立っていたエイミーの腰に手をまわし、抱き留めつつも開いてる手で手すりを掴んだ。


「ひゃあ!」

「くそ、やっぱ固定出来ないのが辛いな!」


 飲み込まれるのは防げたものの、体当たりを食らって空中を後退。左右に船は揺れながらもなんとか水平を維持する。


「このぉ! 装脚!」


 そこから飛び上がるのは栞だ。魔道具であり武器でもある銀斬脚甲を展開させて空中を蹴り上げ空を駆けだす。


「続く」


 続いてイドもボードタイプの飛行板を空に投げてそこに着地。


「脚部固定」


 そして風の魔法を駆使し、空を滑るように進んでいく。


「あ! イリーナも!」

「お前はここで船の護衛だ」

「はぁい」


 イリーナも出ようとしたので制する。

 セーナが操舵に集中している以上、物理的な戦力となるのはイリーナだけだ。

 結界で船は守られているが、イリーナは待機させる。


「援護します」


 つないでいた手を離し、腰に誘導してきたエイミー。オレは頷いて体を支えてあげる。

 エイミーは左手の袖をまくり、そこに付けていたお札のついた魔道具を展開させる。

 これもオレの作ったエイミー専用の幻魔弓。エイミーの幻術が込められた札をより遠くに飛ばし、正確に運用する為に作成した魔道具である。


「蛇なら熱でしょうか?」

「かもな。舌と鼻に似た器官で相手の位置を捕捉しているはずだ」


 オレの言葉に、近い距離で首を縦に振ったエイミーはその大きな蛇に向かって札を放った。

 蛇の鼻先まで一直線に進んだエイミーのお札は、真っすぐに蛇の顔に命中。瞬間、蛇が顔を仰け反らせて、体を大きく持ち上げて尻尾で地面を何度も叩いている。


「何を見せているんだ?」

「たぶん熱で感知していると思ったので、顔から炎に包まれている幻覚を見せてます」

「ああ、なるほど」


 エイミーの幻術は、相手にそれを完全に信じ込ませると現実化する。

 炎に囲まれた蛇は、自分の体が燃え上がってると思い込み、熱を勝手に帯び出す。鱗の表面が焦げ付き始めている。

 これは蛇の鱗の体温が蛇の思い込みにより数百度まで上がった事による現象だ。


「ナイス! イドっち! 合わせて!」

「ええ」

「首を斬ってくれ! 目や胃袋は何かの素材になりそうだ!」


 オレが大声で2人に声をかけると、やれやれというリアクションの栞と呆れた表情のイド。


「じゃあ、この辺で!」

「この剣を使うのも久しぶり」


 イドは腰に差した剣を抜いて、その剣先に白銀を宿す。

 一方栞は、刺々しく、長い刃が脚甲から飛び出す。蛇の首を蹴りつける動作で切り上げると、同時に反対側からイドが剣を振り抜いた。


「そーれよっと!」


 悲鳴も上げず、首を切断された蛇の瞳が左右に動く中、空中で頭の部分を両手で受け止めた栞。


「まだ体が動いてる」

「これで死ぬか? それとも再生するタイプか?」


 大型の蛇の魔物は首を斬っても再生するタイプがいる。

 びっちんびっちんと跳ねる体が周りの木々や倒壊しかけている石造りの建物を崩しながら、悶えまわる。

 被害甚大だ。


「少し様子を見るぞ、巻き込まれるとキツイから今の位置より上昇だ」

『了解しました』


 大蛇と呼ぶには言葉が足りない、スーパー規格外の蛇の体が動きを止めるころには、開けた更地が完成していた。


 栞の受け止めた蛇の頭も完全に息絶えているので、これでもう問題はないだろう。

 セーナに声をかけて、念のため結界を張ったまま着地をする。

 栞とイドが確認をし、蛇の死亡を確認すると、オレは頷いて新大陸に足を降ろすのであった。






「どうするの? ここを拠点にする?」


 船室の中にあるリビングで食事を取る中、栞が疑問を投げかけて来た。


「港町だから、書物の資料が保存されてるって事はないだろうからな。そんなに期待は出来ないと思う」

「そうですよね。潮風で羊皮紙やこの世界の質の悪い紙は、たぶん劣化しちゃってると思う」

「残っていても、あまり期待は出来なそう」


 イドの言葉にオレも頷く。

 ダランベール王国の王城の図書室や魔導師ギルド、月神教の禁書室などで見つからなかった日本へ帰る為のヒントがこんな朽ちた港町に落ちているとは思えない。


 ちなみにイドにはオレの事情も話している。

 異世界から召喚され、唯一こちらの世界に残ったオレは、死んだ仲間を蘇生させる事を目的にクルストの街を拠点にしていた事、そしてそれを成しえた今、元の世界に帰る為の手段を探している事も。

 オレの言葉を聞いた時、イドはハッキリとした口調でこう言った。

『協力する』と。

 その行為に甘えている訳ではないが、1年という時を共に過ごした今、信頼できる仲間の一人となっていた。


「太陽神教の大聖堂は大陸の中心にあったのよね?」

「ああ。だがこの港街なら連中も整備したがるだろうな」

「確かに」

「でも、周辺を調査する前に向こうの人達をこっちに呼び出すのは、流石に危険じゃないかな。あんな大きな魔物がいたくらいだし」


 あんなにどもってしゃべってたエイミーも随分と慣れてくれた物だ。


「そうだけどな、ただ国交。まあこっちに国があるんなら、ダランベール王国にとって一番の窓口になりそうな場所ではあるな。転移門を設置してもいいけど、安全を確認してからだ」

「結局調査が必要ね」

「あんなでっかい蛇が巣食ってたんだから人はいないだろうけどなぁ」


 そんなデカイ蛇も今は鞄の中だ。

 ファンタジーアイテム万歳。


「大蛇がいなくなれば、ここを狙う者が出てくる。それが人の可能性も、ある」

「おお、イドっち冴えてる!」

「イドさんの言う通りですけど、人の場合は接触するのには慎重にいかないと不味いですね」

「そうでもない」

「そうなのか?」

「蛇に勝てなかった相手、それに遠慮をする必要は、皆無」

「出たエルフ理論」

「違う、イド理論」

「やー、エルフ理論でしょう」

「わ、私もそう思う、よ?」


 全員からの視線を受けても涼やかにそれを受け流すイド。長いまつげが目を引く整った顔をこちらに向けて、綺麗に微笑んだ。


「ところで、ライト」

「何?」


 イドが席を詰めてオレの肩に手を回してきた。


「さっき、エイミーの体を抱いてた。次はわたしの番」

「え! そそそそそ、それは! せ、戦闘中に必要だった事であって! イドさん!」

「エイミーは1回休み」

「はうっ!」

「はぁ、あんまり変な事を言わないでくれ、イド」

「そうだよイドっち」

「しおり、左側を貸してあげる」

「のったぁ!」

「乗んなよ……」


 左右を固められてしまった。

 ここ1年の間、一緒に過ごしていて、なんていうかこう。甘えたがりの相手をするようになってしまった。


「もう、ライト無しでは我慢出来ない体」

「へっへっへっ、覚悟するんだぜ? みっちー」

「ご飯が食べづらいんだが」

「食べさせてあげよう!」

「代わりにわたしに食べさせて」

「それに意味があるのか?」

「さぁ?」

「意味あるよ! なんか楽しそう!」

「むううううう」

「エイミー、混ざりたい?」

「そ、そんなこと!」

「特別に、しおりにご飯を食べさせていいよ?」

「エイちゃん、あーんしてくれる?」

「そ、それは何か違う気がする!」


 そんなこんなでイチャイチャしていたら、リアナがお茶のお代わりを持ってきてくれた。


「マスター、もう観念して誰かにお子を授けて下さい。リアナは早くマスターの赤ちゃんのお世話をしたいです」

「これ以上ひっかきまわさないでくれ」


 ほら、2人の目が怖い! それとイドさん、その表情はヤメて! 悟られるからっ!

わたくしごとではありますがー


第9回ネット小説大賞を『おいてけぼりの錬金術師 season1』でとったぜ! いえーい!

皆さんの評価やブックマークのおかげでランキングに載ったりし、人目についた事が受賞につながったのだと思います。

応援ありがとうございます!


もう一回

いえーい!

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こんな作品を書いてます。買ってね~
おいてけぼりの錬金術師 表紙 強制的にスローライフ1巻表紙
― 新着の感想 ―
[気になる点] season1読み直してから来ました、楽しみにしてます。
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