自由都市の錬金術師⑤
「おー、久しぶりにこっちの家つかったね」
「なあ、エイミーあのぬいぐるみなんだけど」
「え? あ! 置きっぱなしにしちゃった!! 道長くん見た!?」
「そりゃ見るけど」
「あの並びは正しくない。わたしがライトの横にあるべき」
「ししし、しんぺいさまっす……」
「イド様、ときちんと呼びなさい」
「あるじーまりょくほしー」
「イリーナ! 脱がない!」
久しぶりに全員集合だ。ジェシカがイドを見て固まっているが。
「ライト、この女は誰?」
「あっはっはっはっはっ」
「道長くん?」
「いや、これには深い訳が……」
「みっちー、女の子ゲットして奴隷にしたんよ! しかも元貴族の御令嬢!」
「ちょっ!? 栞さん!?」
「つーん」
「どういうことですか!? 奴隷だなんて!」
「奴隷、犯罪者?」
「や、神兵様。自分奴隷っすけど犯罪奴隷じゃないっす」
「セーナ、おかわりー」
「もう!? 栞、ペース早いわよ?」
「セーナ、わたしにも」
「お茶、おかわり淹れますね」
「道長くん、やっぱり男の子なんだね」
「エイミーさん! 話を聞いて下さい!」
「言い訳なんてさいてー」
「栞てめぇ!」
「あ、そういえば王子とお師匠様がご主人様に助けて欲しいって」
「知らん。ジジイがいればなんとでもなるだろ」
「ライトならそう言うと思った」
「あー、エイミー、イド。向こうはどうなってる?」
「話逸らそうとしてない? まずこの女の子の説明からだよね」
「するから! しますから!?」
賑やかな食卓はカオスになるのである。
「こんな短いスカート履かせちゃって」
「オレじゃないですぅ!」
「えへへ、ちょっとこれも気に入ってきたっす。動きやすいですし」
「そういえばジェシカの武器も用意してやらないとなぁ」
持っているのは兵士時代の支給品の盾と剣、それと着替えくらいである。
「魔法が使えるって聞いたけど、何が使えるんだ?」
「えと、自分植物系の魔法が得意っす。何もないところでは意味がないっすけど、生えてる植物を急速に育てたり、操ったり出来るっす」
「なるほどねぇ、剣も使えるんだよな?」
「一応、隊の中では隊長に次いで強かったっす!」
「だと剣を主体に戦えるように、杖じゃなくて補助具のがいいか……」
「首輪ね」
「首輪じゃない?」
「首輪がいいのではないでしょうか?」
「酷いっす!」
奴隷と言えば首輪だもんね。
「ああ、首輪か」
でも首元に魔力の補助具を置くのは実は理に適っているんだよな。
魔力って手から放出するって印象だけど、体の中心から引き出すから。あとは本人の資質と慣れだ。
「ちょ!? ライト様!?」
「や、実際魔法具って体の中心に近い方が効果が良い物があるんだよ。杖や魔導書なんかは威力の増減に向いてるけど、首輪やネックレスなんかは魔力の使用量の軽減や属性変換の補助に向いてるんだよね」
「そうなんすか?」
「ああ。魔力自体は全身に走っているけど、体内から湧き出る物だからね。発生場所に近い程効果の出る補助機能っていうのは確かに存在するんだ」
「でも首輪っすよね!?」
「ネックレスは却下」
「あたし指輪欲しい!」
「あ、栞ちゃんズルい!」
「エイミー?」
「あうっ」
「わたしは、ライトから貰えるなら全部嬉しい」
「イドっちズルいっす!」
「イドさん!」
後でどんな魔法が使えるのか確認したいけど、植物系ってどういう風に使うのがいいんだろうね? クラスメート達も使ってなかったし。海東は使えたかもだけど、使ってるところ見た事無いしな。
足枷もありか? いや、あれはもう犯罪者用か……




