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炉をもたらす錬金術師③

作者の妄想垂れ流し回です!

「さて、時間になりましたのでこれより説明を開始いたします。メモの準備はよろしいですか?」


 宴当日の色々なゴタゴタは割愛して、今日は魔導炉の作成講習だ。


 魔導炉の材料や一部の道具などの代金も無事支払われたので問題ない。適正価格かどうかは分からないけど、金額を見て皇女殿下が泡吹いてたから多分問題ない。


「最初に錬金術師に魔導炉の核となる【魔導炎の依り代】の作成指導を行います。この中で魔石の加工や魔物素材の加工を行った人は手を上げて下さい」


 おそらく錬金術師であろう何人かが手をあげる。


「その人たちは前に来てください。それ以外の人はその人たちの後ろに。今手を上げた8人からの質問のみを受付いたします。それ以外の方は基礎が分かっていないものと考えます。何か分からない事があったら、今手をあげた8人に講習後に質問をして下さい」

「おいおい」

「マジか」

「横暴じゃねえか?」

「今日は皆さんの前で錬金術を行使しなければならないのです。こんな雑多な環境で、人の魔力が渦巻いている場所で。その状態で、かつみなさんの質問まで受け付けていたらとてもじゃないですが魔導炉の作成なんてしていられません。オレの言葉の意味がご理解出来ないヤツはいらんから出ていけ。理解出来なくても黙っているんなら見ているだけなら許してやる。って意味だ。分かったな?」


 オレがあえて強めに言う。

 その言葉に表情を引き締める人間が数人、口を開けて驚いた表情をしている人間。うれしそうに手を叩くオレの身内などに分かれた。


「まず素材の準備だ。今回オレが用意したのはBランク以上の赤の水溶液、火属性の強い魔物の魔石。今回はマグマトカゲの魔石を使う。熱蓄樹の枝、フレイムバッファローの角、風向鳥の羽、魔触草。ダランベール王国で獲ってきたものだ。こちらに無い物もあるかもしれないから、役割を教えながら作成をしていく。それぞれ代用品を考えないといけないかもしれないがそれは諸君の仕事だ。過去にこの大陸で魔導炉があったのであれば、代用品は必ず見つかる」


 オレの言葉に前列に詰めていた錬金術師達が頷く。


「まず十分に魔力を満たした錬金窯に赤の水溶液を入れて、火にかける」


 オレはあらかじめ用意しておいた携帯式の錬金窯をコンロに乗せて火をつける。


「赤の水溶液は、少し熱しただけで高温になる。だから火力はそんなに上げなくても大丈夫だ。ここにフレイムバッファローの角を粉末状にしたものを投入ししばらく自然に混ぜ込む。フレイムバッファローの角は赤の水溶液に混ざりこんだ火の魔力をマグマトカゲの魔石に浸透させるために使う」


 混ぜ棒でグルグルグル。


「フレイムバッファローの角が上手く解けない場合は溶液なんかを使ってもいいが、その溶液も火属性由来の物がいい」


 オレが混ぜている間に、助手のリアナがオレの横に立つ。


「風向鳥の羽は魔導炉の中の熱の動きをコントロールする為に使うものだ。熱はそのままにしておくと高い位置に移動する性質がある。魔導炉の内部、上の部分に熱が集中しないように魔導炉が稼働中に中をかき混ぜ空気の流れを生み出すのだが、それを補助する役割を持つ」

「なるほど」

「そうだったのか……」

「炉が割れる時に上から崩れるのは、まさか」

「その通り、魔導炉に限らず、炉の内部は熱が上に集中する。あんたらもふいごで空気を送り込むだろ? あれは中の温度をかき混ぜる役目も持っているんだ。魔導炉ではそれを魔法で賄う」


 その間にリアナが風向鳥の羽と魔触草をみじん切りにしてくれる。


「魔触草はミスリルや魔鋼鉄といった魔力を持つ物質から魔力を逃がさずに形を変えさせる役目を持たせる。【魔導炎の依り代】ってのは魔導炉という空間の中の熱に魔力を宿らせる魔道具だが、あくまでも熱に反応して発動するだけ、どうしても魔力を破壊してしまう。ミスリルや魔鋼鉄は炉の温度だけじゃなく、その高い魔法防御力を突破して加工しなければならないが、魔力が逃げてしまっては元も子もない」

「んんん!? すまん! 今物凄く気になる発言が聞こえたのじゃが!」


 質問を許していない人間、見た目からして鍛冶師だと思われる人間から声が上がった。


「オレの説明で気づいたものもいるようだが……」


 さっき声を上げた鍛冶師っぽい男に視線を向けて、オレは更に言葉を紡ぐ。


「ミスリルや魔鋼鉄、それと一部の魔物素材は、熱だけでなく魔力もふんだんに籠っていないと加工する事が出来ないんだ」

「「「 はああああああ!? 」」」

「やはり……」


 驚きの声を出す面々と、脱力して倒れ込む鍛冶師のおっさん。

 そう、いくら温度を高めてもミスリルや魔鋼鉄は溶けきってくれないのだ。物質自体に魔力が籠っている素材はその魔法防御力を突破しないと綺麗に溶けてくれない。

 出来る事は鍛造くらいだ。しかしそれぞれが恐ろしく硬い物質で、しかも自在に形を変えるとなると難しい。ヒビが入ったり歪んでしまったりでとてもじゃないが満足な形に仕上げる事が出来ないのだ。

 講堂内がざわつくが、手を叩いて注目を集める。





「いま細かく刻んだ風向鳥と魔触草を先ほどの角の溶けきった水溶液に流し込んでなじませる。火を止めても熱が落ちなくなったら完成だ。しばらくはこのまま弱火で熱し続ける。工程自体に難しい事は無かったと思うが、何か質問は?」


 ビシッ! と前にいた錬金術師と思われる人間が手をあげる。


「はい、一番左の人」

「最初に用意した赤の水溶液。それは動物系の物か植物系の物か、どちらが適している?」

「今回は動物系の物だ。大元の火属性の魔石がマグマトカゲだからな。大元の魔石が植物系の魔物だったら植物系がいいし、鉱物系だったら鉱物系の水溶液が合っている」

「基本だな」

「ああ、そこは変わらない。最も崩してはならない法則だ」

「魔触草といったが、あれは本来魔力の流れを阻害する素材だろう? それがどうして魔力を逃がさない性質を生み出せるんだ?」

「素材が溶解するときに魔力が逃げる。その逃げるという行為を阻害するんだ。逃げ場のない魔力は液体と化した素材に残ってくれる」

「魔石は完全な火属性の物じゃないといけないのか?」

「ミスリル程度を加工するだけなら風向鳥の羽を使っている関係上、風が多少混ざってる魔石でも問題無い、ただ水は無い方がいいな。ミスリルは銀と同程度の温度で溶けるからな。魔鋼鉄や一部の魔物の素材は通常の炉よりも高温じゃないと溶けないから今回は良い物を使っている」

「なるほど、ではカラドボルグの心臓などで代用は出来ないだろうか?」

「すまん、現物を見て無いからわからん。ダランベール王国では聞いたことのない素材だ」


 矢継ぎ早に質問が飛んでくるのでそれを一つ一つ解決させる。


「イドリアル様のご趣味は?」

「叩き出すぞ?」

「すいません」


 たまに変な奴もいる。


「さて、十分に熱することが出来たので続きだ。ここに依り代の素となるマグマトカゲの魔石を投入」


 オレは分厚い手袋をつけてマグマトカゲの魔石を窯にいれる。


「これから魔力を込めるぞ。窯に触れない様に錬金術師達は上から覗いてくれ。出来ればハンカチで口や鼻を隠して」


 持っていた何人かは口元を隠し、持っていないほとんどの人間が袖などで口元を隠して窯の中の状態を確認しにくる。

 何人かが覗き込んでいる状態で、魔力を込めて窯の魔核を作動させる。

 流石にカリム区長が集めた錬金術師だ。汗やツバが入らない様に何も言わずにすぐに離れてくれた。


「熱がどんどん吸い寄せられていっている様に見えるな」

「てかとんでもない魔力籠ってんな! こんなに早く吸い込まれていくなんて」

「実際にそうなんだろう」

「ここまで強力な火の魔石なんぞ簡単には手に入らんぞ」

「この炉で作った武器を持たせて騎士団連中に依頼をかければよかろう」

「魔触草の役割に気づけてさえいれば……ミスリルや魔鋼鉄の性質にもっと目を向けるべきだったな。それさえ気づけていれば我々の技術でもなんとか作成は出来る」

「100年ものあいだ我らは何をしていたんだ……」


 窯から離れて、思い思いに口を開く。


「その分製鉄の技術が上がったから無駄じゃないさ。お前さんたちの作成した炉で生成された鋼鉄、中々のものだぞ」


 港町の近くで見かけた武具だ。鋼鉄製で、地面に放置されてた数々の武器で使われていた鋼鉄。それらの仕上がりは見事の一言だった。


「温度を上げるべきだと思ってたからなぁ。その分製鉄や製鋼の時間が短縮されるようになって、不純物も取り除きやすくなったと。鋼鉄の質はかなり良くなったってじい様に聞いたな」

「鉄より鋼鉄の方が用意しやすいくらいだからな」

「ああ、鋼鉄じゃ硬すぎるって言ってんのに鋼鉄を用意されたりな。素人じゃないんだ、分かるんだよ」


 最後の一言に後ろに控えていた鍛冶師達が視線を背ける


「さて、十分にマグマトカゲの魔石の中に吸収されたな。中に残ってる液体はあとでまだ使うから捨てないように。次は鍛冶師のお仕事と思いきや魔術師の皆さんもかかわってくる、炉の作成だ」

Q: イドの趣味は?

A: 戦い全般です

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こんな作品を書いてます。買ってね~
おいてけぼりの錬金術師 表紙 強制的にスローライフ1巻表紙
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