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炉をもたらす錬金術師②

「ようこそいらした。イドリアル様、使者殿、それにお仲間の皆様」

「歓迎痛みいるよ、カリム区長」


 オレ達がカリム区長の統治するライナスの街に到着すると、門の前でカリム区長が待っていてくれた。

 統治者が門前まで人を出迎えるのは、最上級の歓迎を意味するらしい。

 イド様々である。

 簡単に挨拶を済ませて、カリム区長の護衛を先頭に馬を歩かせる。

 道幅に限界があるから、軽い大名行列の出来上がりだ。


「あの、イドリアル様は……」

「あんま注目されたくないんだとさ」

「なんと奥ゆかしい」


 なんでもいいらしい。


「リアナ、馬車を頼む」

「畏まりました」


 御者をリアナに任せて、カリム区長と話をする。

 区長は馬に乗って馬車に並走だ。残念だね、イドは反対側だよ。


「今日の予定は?」

「簡単でありますが歓迎の宴をご用意しております。皇女殿下もそちらにいらっしゃいます」

「そうか。じゃあ明日から教える形でいいですか?」

「そうして頂けると助かります。ご指示通り錬金術師、鍛冶師、魔導士にそれぞれ声を掛けております」

「分かりました。ちなみにその連中、仲は?」

「はっはっはっ、まあ特別いいという訳ではございませんが問題ないでしょう。錬金術師と鍛冶師はなんだかんだ言って同じ仕事に関わりますし、魔導士は我がエリアの家臣団の者ですから」

「ならいいです」


 どうしても共同作業になるからね。間に軋轢があると色々と厄介になる。


「宴に参加するのは4人で頼む、メイド3人は参加させられないからな」

「おや、ご希望があれば参加させて頂いても宜しいのですよ?」

「必要ないよ、女性陣の着付けに周って貰おう」

「ほっほっほっ、イドリアル様や残りのお二人はドレスがございますか? 必要であれば用意させますが」

「ダランベール式の物ならある、というかオレの立場から考えるとそっちを着せた女性をエスコートするのがいいだろ」

「ダランベールのドレスでございますか。それは興味がそそられますな」


 うん。向こう出る時に出立前に王城で王族達とかジジイ様とかとパーティをやったからね。

 その時の服を用意してある。


「皇女殿下もさぞお喜びになるでしょう」

「ああ、皇女殿下といえば……カリム区長にお聞きしたい事があるのですが」

「はい、いかがいたしましたか?」

「ダランベールから友好の証として菓子や酒、布や刀剣の類を預かってきております。これらは皇女殿下へ献上して失礼はないでしょうか? シルドニア皇王陛下へ献上するべきお品なのですが、皇女殿下へ先に渡してもいいものかどうか。流石に手土産もなく宴に参加するのも申し訳なく思うので」


 場合によっては皇女殿下への支援にも取られかねない。皇女殿下の後ろ盾にダランベール王国がいるぞと思われるだけで、第二皇女の立場が大きく変わってしまいかねないのだ。


「それでしたら殿下へお渡しする席で、陛下への贈り物を『信頼できる皇女殿下を通して献上させて頂きます』と、まあそのような発言をして頂ければ問題ございません。あくまでも陛下への献上品を皇女殿下に預かって頂く形をとればいいのですから」


 なるほど。


「分かりました、ありがとうございます」


 ちなみにこれらの献上品はすべて本当にダランベール王家が用意したものだ。

 オレが用意したものは酒くらいなものである。


「屋敷に戻りましたら目録をお作りいたしましょう。パーティ会場の横に3部屋程ご用意致しますので、後程文官を連れて顔を出させて頂きます」

「助かります」






「なんとお美しい! 神兵様! イドリアル様万歳!」

「「「 イドリアル様万歳!! 」」」

「……………………もういい、わたしは食に走る」

「おう、頑張れ。まあしゃあないさ、確かに綺麗だからな」

「ばか」

「~~~~~っ!!」


 ごつんと頭をこづかれる。もうちょい加減して欲しい。こつんでしょ? 普通? そう思わない?


 エルフのイメージといえばやはり緑である。

 そしてイドの自由な性格と、綺麗なスタイルを前面に見せるべく飾り気の少ない薄い緑色の、肩を出したドレス。

 スカートにはスリットが入っており、歩くたびに顔を出すイドのおみ足がまぶしい。

 胸元を飾る小粒の真珠風のネックレスが、その細い首筋をより美しく魅せてくれる。


「ほら、主役は終わったんだから。次はあたし達をエスコートしてよ」

「よ、よろしくおねがいします」

「あ、ああ」


 オレに声を掛けてきたのは綺麗に着飾りつつも、対照的な二人。

 栞はスカートと肩にフリルをふんだんに使った上は黒で下は白。スカートの丈は少し短めで膝が出るくらいの長さだ。綺麗さよりも可愛らしさを前面に押し出している。

 更に胸元で金で作った細いネックレスが光輝いている。


 エイミーは真っ白のイブニングドレス。胸の大きさをこれでもかと見せつけつつも、足首まで隠れるほどの長さのスカート丈。

 エイミーの肌の白さとドレスの白がマッチしており、とてもセクシーである。

 ラメが施されたドレスは会場の光を吸収し、輝きに満ちている。

 小粒のブルーの石をはめ込んだピアスは、エイミーの瞳の色を意識して作ったものだ。


「二人とも似合ってるよ。栞はすごく可愛いし、エイミーはとても綺麗だ」

「ありがと」

「~~~~~!!」


 エイミーさん、肩まで真っ赤になってますよ。

 オレは二人の手をとって、ゆっくりとエスコートする。栞は楽しそうに、エイミーは恥ずかしそうにオレについてくる。


「とても美しいです。私程度の語録ではそれくらいしか表現できないほどに、貴女達は会場の男性の視線を釘付けにしていますね」


 二人をエスコートして会場に入ると、エッセーナ=ハイナリック=シルドニア第二皇女殿下が既にいた。

 なんでも今日はイドがいたので、皇女殿下の入場が我々よりも早かったのである。

 そんなエッセーナ殿下のドレスは……。


「重そうですね」

「ぶっ!」


 オレの素直な感情に、横にいたカリム区長が噴出して栞とエイミーが頭を押さえた。


「道長くん、女性に重いは禁句」

「ギルティだ!」

「いや、お前達を見るにライトロードの感想は正しい。私もこの格好には普段から辟易としていたものだよ。いいなぁ、そっちのドレスの方が動きやすそうだ」

「殿下、そういうものではございません」

「馬鹿をいうでない。周りを見てみよ、イドリアル様はともかく、男共の視線はそっちの、えーっと」

「エイミーでございます」

「そう、エイミーに集中しておる。私や他の女子よりも」

「あ、あの。えっと……」


 エイミーがオレの後ろに隠れてしまう。むにゅり言うがな。


「なんでパーティのたびにこんなにも重い服を着ねばならんと前々から思っておったのよね」

「三人の衣装は私の従者、リアナの手によって生み出されたものでございます」


 オレ達の更に後ろに控えていたリアナとセーナが頭を下げる。イリーナは……お留守番だ。

 普段のメイド服と同じだが、髪の毛だけ編み込んでいる。

 エイミーがやったらしい。


「此度の献上品に確か布がありましたな。あれを使えばダランベール式のドレスも作れるのではないでしょうか?」

「まあそちらのドレスの意味もなんとなく分かりますが」


 お金持ち、高い布いっぱい使ってすごいでしょ? アピールだ。


「ドレスの話題などつまらんし、我が国の女共が惨めになるからもう良い。目録を見せて貰ったぞ。菓子と酒をこの場で飲めぬのが口惜しい」

「あはははは、殿下はそういうお人で御座いましたか」

「そうだ。そういうお人だ」

「菓子と酒、ですか……」


 あるにはある、が。

 ああ、この殿下の目。期待してるなぁ。


「カリム区長、陛下への献上品の中にこのエリアの区長様への贈答品を混ぜてしまっていたようです。私としたことが申し訳御座いません」

「なんと! やはりそうでしたか! 私ももしやと思っていたのですが、口に出す事が憚れると思いご指摘出来ませんでした!」

「目録と相違が出ては問題ですわ! 二人とも、この場から中座する事を許可いたします。すぐに確認して下さいませ!」

「はっ! 御前失礼致します」

「殿下、改めて後程ご挨拶に参らせて頂きます。リアナ。二人を頼むぞ。セーナ、イドについてやっててくれ」

「「「 畏まりました 」」」

「では行きましょうかライトロード殿」

「ええ、参りましょう。カリム区長殿」

「……これは独り言だが。先日食べたドーナッツとやらが気になっておる。それと酒は喉が焼けるほどの強い酒が好きだ」


 はいはい、ドーナッツはまだ在庫あった気がするから大丈夫ですよ。

 お酒かぁ。ドワーフ殺しでも用意しますか?

女性のドレスのほとんど描写とか……

エイミーのボインだけ伝わる事を祈る。

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こんな作品を書いてます。買ってね~
おいてけぼりの錬金術師 表紙 強制的にスローライフ1巻表紙
― 新着の感想 ―
[一言] 奥ゆかしいって、奥の部屋に行くほど、椎木張りの床になっている事。 で、合ってますよね?
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