第67話 だいまおうさま ばんざい
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「おー……」
俺は思わず声を上げた。
目の前にあったのは、白亜のお城である。
小城という規模じゃない。
あのドイツに建ってるノイシュバンシュタイン城を彷彿とさせる美しい城だ。
わからない人には、かの夢の国に建てられたお城のモチーフになった建物と言えばいいだろうか。
「綺麗……」
「すごいみゃ!」
「ダイチ様が住むにはぴったりな場所ですね」
ルナ、ミャア、ステノが目をキラキラさせる。
「なんか他人事みたいに言ってるけど、みんなも住むんだよ、城に」
「え?」
「一緒に住んでいいのかみゃ」
「ほ、ホントですか??」
と素っ頓狂な声を上げた。
「別に驚くほどのことでもないよ。こんなお城、1人で住むには広すぎるからね」
一応、この城で働く人の住居も兼ねてる。
日本人の俺としては、仕事場と住居が一緒なんて御免被りたいのだけど、この世界では普通なのだそうだ。
まあ、仕事場が自分の家なら、ギリギリまで寝ていることができるしね。
それに住居区画があれば、何かあった時に領民たちを城に避難させることも容易になる。
この城はハイ・ミスリルという金属で作られていて、耐震、耐火性能はもちろん、魔法攻撃全般を防ぐことができるらしい。
外壁がミスリルの黒ではなく、白っぽいのが、その証拠だろう。
言い忘れていたけど、この暗黒大陸の種族は、手続き上では俺の領民ということになった。
今後、残りの種族であるエルフとの同盟を目指すことになるけど、その統治は俺の差配に任すということになったらしい。
もちろん、村の人間も、獣人も、ドワーフも、俺の領民になることを了承してくれた。
ありがたい限りだ。
「ありがとうございます、ダイチ様」
「やったみゃあ! ダイチと一緒にお城生活みゃ!」
「夢のようです!!」
3人とも喜んでくれているようで何よりだ。
「住居区画はまだ先アルよ」
メーリンが丸めた部面で肩を叩きながら、現場の城から出てきた。
「まだ時間がかかりそう?」
「城壁みたいに石を積み上げるだけじゃないアル」
「だよね」
「でも、1つだけ部屋ができたアルよ」
メーリンが城の中へと案内する。
頭にヘルメットを被って、本当に工事現場みたいだ。
城の中は、まだがらんどうといった感じだ。
城を支える柱と、階下へ向かう階段がいくつかあるぐらいだった。
当然、絨毯や内装のようなものはない。
ただ寂しいというよりは、何か圧倒されるような神々しさを感じる。
今にも高い天井の上から、天使でも降りてきそうだ。
メーリンは指差し点検をしながら、奥へと進む。
「ここアル」
大扉を開ける。
現れたのは、大空間だった。
「すごい……」
「みゃぁぁ……」
「はあぁ……」
ルナ、ミャア、ステノは吐息を漏らす。
俺もその大きな部屋を見て、驚いていた。
その部屋だけは、すでに内装が整えられていた。
真っ直ぐに伸びた赤い絨毯。
その端を彩る、赤い灯火。
天井から垂れ下がった旗。
部屋の奥中央には、金細工があしらわれた豪奢の玉座とおぼしき椅子が置かれている。
解説するまでもない。
おそらくここは、魔王の間――――。
いや、大魔王の間だ。
「ふっふっふっ……。驚いてくれたアルか?」
「ああ。驚いたよ」
「ここは大魔王様のお城アルからね。まず初めに作らないと」
「ありがとう、メーリン。こんな立派な部屋を作ってくれて」
「当然アル。今後は、他領地の領主と謁見することもあったりするアル。これぐらい雰囲気を出さないと、舐められるアルよ」
どうやらメーリンにとって、この大魔王の間も商材の1つのようだ。
「ダイチ、ダイチ!」
「なんだ、ミャア」
「早くあの椅子に座ってほしいみゃ」
「え? 玉座に?」
「私もダイチ様が玉座に座っているところを見たいです」
「私も……」
ミャアに続き、ルナもステノもリクエストする。
むろん、メーリンもその1人だ。
「じゃあ、みんなの要望に応えて」
俺は早速玉座の前に立つ。
なんか改まると照れくさいなあ。
大魔王とか裏ボスとかいわれてたけど、玉座なんてものはなかったし。
でも、暗黒大陸の領主となったんだ。
この椅子に座ることは、その決意を受け止めるってことだろうな。
ゆっくりと、その椅子の柔らかさを確かめるように、俺は玉座に座った。
なんか思ったより座面が大きい。
椅子がエヴノスとか高身長の魔族に合わせてる感じかな。
仕方ないよな。
俺、一応人間だし。
最後に肘掛けに手を置き、苦笑いを浮かべた。
「ど、どうかな?」
「いいと思います」
「大魔王ダイチ、爆誕みゃ!」
「すっごく似合ってますよ」
「まだ玉座に座られてる感じアルが、そのうち慣れてくるアルよ」
そう言われると、そうかな。
まあ、馴染みのない椅子だし。
メーリンの言う通り、慣れてくるかな。
あ……。そうだ。
なんか魔王っぽいことを言ってみようかな。
「ふはははははははははは!
勇者よ! わが生贄の祭壇へよくぞ来た! 我こそは全てを滅ぼすもの!
全ての命をわが生贄とし絶望で世界を覆いつくしてやろう! 勇者よ! わが生贄となれい!」
って感じだったっけ?
ふと視線を落とす。
何故か、みんなが膝を突いて、平伏していた。
その顔は青く、カタカタと小さな肩を震わせている。
「さすがです、ダイチ様」
「こ、こわいみゃあ。さすが、大魔王ダイチみゃあ」
「ダイチ様、どこまでもついていきます」
「私、とんでもない人と契約したアルよ」
いや、ちょっと待って。
今の演技だから。
別に世界の闇にしようとか思ってないし。
凍てつく波動とかも吐けないから大丈夫だよ。
今さらだけど、猛烈に恥ずかしくなってきた。
すごく中二病臭くないか、今の。
俺が玉座に座っていると、作業していたドワーフや手伝っていた獣人や村人が集まってきた。
「おお!」
「大魔王様だ!」
「玉座に座っておられる」
「なんと神々しい」
「ありがたやありがたや」
皆が大魔王の間に集まってくる。
自然と膝を突き、平伏する。
最初は戸惑っていたけど、ここにいる人は皆、俺を信じ、その言葉を信じて、俺のために力を尽くしてくれる人なんだよな。
皆の頭の裏を見ながら、俺は気が引き締まる思いだった。
改めて領主として、皆を幸せにすることを誓う。
「みんな、これからもよろしく頼む」
俺もまた頭を下げる。
すると誰からともなく両手を上げて、叫んだ。
「大魔王様、万歳。ダイチ様、万歳!」
「大魔王様、万歳。ダイチ様、万歳!」
「大魔王様、万歳。ダイチ様、万歳!」
「大魔王様、万歳。ダイチ様、万歳!」
俺は祝福と称賛を受ける。
突発だけど、この日を俺は、暗黒大陸の建領記念日だと定めることにした。
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