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第15話 くびなしきしが あらわれた

 村人チームが屋敷に侵入する中、俺、ルナ、チッタはアーミードッグと対峙していた。

 計30匹といったところだろうか。

 警備の数をケチったのか。

 こういう屋敷の警備数として、少ない。


 だが、俺たちの10倍以上の数であることに変わりはない。


「ええええええええいい!!」


 ルナはアーミードッグの群れにツッコむ。

 木の幹から削り出した棍棒を振り回した。

 一気に、5匹のアーミードッグを吹き飛ばし、消滅させる。


『ガウウウウウウウウウウウウ!!』


 チッタは大口を開けて、吠える。

 たちまちアーミードッグは竦み上がった。

 そこにすかさず突撃する。

 一瞬にして、7体のアーミードッグを平らげてしまった。


 アーミードッグは経験値ランク「D」

 決して弱いわけじゃない。

 だが、今の2人のステータスからすれば、雑魚も同然だった。


  名前   : ルナ

 レベル  : 20/99

    力 : 107

   魔力 : 138

   体力 : 96

  素早さ : 94

  耐久力 : 119


 ジョブ  : 聖女


 スキル  : 大回復LV3 浄化LV3

        明光LV3 結界LV4

        怪力LV3



 名前   : チッタ(成獣)

 レベル  : 22/99

    力 : 84

   魔力 : 0

   体力 : 135

  素早さ : 104

  耐久力 : 67


 ジョブ  : 守護獣


 スキル  : かばうLV3 気配探知LV2

        変身LV2 咆哮LV3



 村人もそうだが、2人にはレベルアップするよう重点的に鍛えた。

 例のメタルムを使ったレベルアップ方法だ。

 スキルレベルの上昇はあまりないが、その分基礎能力が底上げされ、どっちも新しいスキルを覚えた。


 ルナは『怪力』を覚えたのがでかい。

 元々あった攻撃力の高さが、さらに強化された。

 しかも怪力は他の生物にも効果がある優れたスキルだ。


 対してチッタは『咆哮』を覚えた。

 吠えることによって、魔獣を居竦ませる――RPGでは割とお馴染みのスキルだ。

 加えて、ますます固くなった。

 生身で守備力に相当する体力が、135ってのはかなり高い。


 そこだけをクローズアップすれば、もはやレベル30ぐらいに相当するステータスだ。

 力はついにルナに抜かれてしまったが、そのルナの『怪力』で底上げすれば全く問題ない。


 てか、聖女に『怪力』ってどういう割り振りの仕方だよ。

 「力」も「107」って、チッタよりも強くてどうするんだよ。

 ルナが段々と脳筋聖女になっていくんだが……。


 しかし、頼もしいことこの上ない。

 今も12体目のアーミードッグを叩き潰していた。


 ルナはふっと息を吐く。


「る、ルナ……。大丈夫か」

「はい。問題ありません」


 ルナはくるりと俺の方に振り返る。

 頬に魔獣の血をべったりと貼り付かせていた。

 暗がりでの戦いだからか、若干その瞳の輝きは消え、顔色も悪く見える。

 まるで二股していた彼氏を殺した後の恋人みたいだ。


「ダイチ様、どうしました?」

「すみません。二股なんてしてませんから、許して!」

「???」


 俺は反射的に謝る。

 ルナをからかうのは、今後程ほどにしよう。


 気が付けば、アーミードッグの死体の山だ。

 短時間で2人は30匹の魔獣を倒したことになる。

 想像以上の成果だ。


「よくやったぞ、ルナ、チッタ」



 へぇ……。なかなかやるじゃねぇか……。



 その声は甲高い金属音とともに聞こえてきた。

 俺とルナは振り返り、チッタは耳と尻尾を逆立て唸る。

 現れたのは、首を小脇に抱えた騎士だった。


「首無し騎士……」

「おお? よく見たら、ダイチ様じゃねぇか。覚えてるか? あんたにデュラって名前を付けてもらった首無し騎士だ」


 覚えている。

 首無し騎士でも割と初期に名前を付けたヤツだ。


「ここに来ることは、あの蛙野郎から聞いていたけど、こんなところで何をしてるんだ? 人族(さる)と一緒に何をつるんでる?」

「デュラ……。ブラムゴンが蓄えている食糧を、人族に分けてやってくれ。彼らが困ってるんだ」

「やだね」


 小脇に抱えた首無し騎士は、にんまりと笑った。


「このままでは彼らは死ぬ。ここはお前達が統治する土地だ。そこに住む種族が、飢えで死ぬことは支配層の怠慢じゃないのか?」

「小難しいことなんてオレにはわかんねぇよ。あんた、昔っから説教臭かったよな。レベルを上げろ。スキルを上げろってうるさくて、何度ぶっ殺してやろうと思ったことか」


 首無し騎士は怪しく目を光らせる。

 その殺気に反応し、ルナとチッタが俺を守るように前へ出た。


「断るって事でいいんだな」

「あったり前だろ! あんたもわかってんだろうな。魔族に刃向かうってことは、あんたも人族(さる)の仲間ってことだぜ」


「ダイチ様は、猿なんかじゃない!!」


 ルナは棍棒を構えたまま力強く否定する。


「ダイチ様は、わたしたちのダイチ様です!」

「ルナ……」

「はっ! そいつはおもしれぇ! ダイチ様が猿山の大将になったってわけだ」

「黙りなさい!!」


 ルナは地を駆ける。

 デュラに一瞬にして、接敵した。


「あ゛?」


 その素早い動きに、デュラはついていけない。

 元々首無し騎士は、素早さが低い種族だ。

 ルナの攻撃についていくことは難しい。


「やああああああああああああ!!」


 思いっきりルナは叫ぶ。

 見事、デュラの横っ腹に棍棒が突き刺した。


「なにぃぃいいいいいいいい!!!!」


 デュラの絶叫が響き渡る。

 吹き飛ばされ、屋敷の壁に激突した。


 ルナ渾身の一撃だ。

 防御力に定評がある首無し騎士でも、結構効いたはず。


「てめぇ、やりやがったな」


 デュラがゆっくりと立ち上がる。

 片手で首を持ち上げ、もう片方の手で剣を鞘から抜いた。

 鎧の横が凹んでいるだけで、ほぼ無傷らしい。


 首無し騎士が厄介なのは、ステータスそのものよりも、纏っている鎧の方だ。

 前に調べたことがあるが、首無し騎士が纏うことによって、自動的にあの鎧が呪いの武具となり、飛躍的に防御力が上がる仕組みになっている。


 しかも、魔法耐性も強い。

 首無し騎士は悪霊系の魔族なので、『浄化』が有効だ。

 けれどあの鎧がほとんどの魔法効果を遮断してしまう。


「せめて鎧を斬ることができれば」

「はっ! そんなの無駄に決まってるだろ」


 デュラは俺の方に突っ込んでくる。

 そこにチッタが回り込んだ。


 ギィンッ!!


 硬質な音が響く。

 チッタが爪でデュラの剣を弾いたのだ。


「何!?」

「お前の鎧も硬いけどな。うちの守護獣だって負けてないぞ」

『ガウッ!!』


 チッタは爪を振り上げる。

 デュラは完全に押し負け、弾かれた。

 そこにルナが背後から仕掛ける。

 たまらずデュラは、距離を取って回避した。


「くそ! なんでだ!! なんでオレが猿と獣に苦戦しなきゃならないんだよ」

「簡単な事だ、デュラ。お前は強くなることを拒んだ。ルナとチッタは強くなることを自ら選んだ。確かに強くなることが正しいことじゃない。もっと大切なものはいくらでもある。けどな、デュラ。お前には強くあろうとする者を笑う資格はない」

「うっせぇえよ、説教バカ! 強くなるだぁ? は! 強くなっても、オレの鎧を抜けないんじゃ意味ねぇだろうが!!」

「そいつはどうかな?」


 俺はにやりと笑う。


 そして屋敷の方から現れた人影を見つめた。

 腰に剣を下げた村人が、戦場に踊り出る。

 現れたのは、齢60の老人だった。


「待たせたの!」


 ギラリと目を光らせ、闇を背にして立っていたのは、村の村長だった。




 名前   : デュラ

 レベル  : 13/30

    力 : 142

   魔力 : 62

   体力 : 59(+30)

  素早さ : 80(-30)

  耐久力 : 70


 ジョブ  : なし


 スキル  : 全力斬りLV2 両手持ちLV2


 備考   : 呪いの鎧(体力+30 素早さ-30 耐久力+30)


Luna~脳筋聖女伝説~


面白い、村長無理するな、と思った方は、

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― 新着の感想 ―
[一言] さんをつけろよデコ助野郎
[気になる点] 力はついにルナに抜かれてしまったが、『怪力』で全く問題ない。 この文章がよくわからないのですが、、、 チッタに「怪力」が備わっているならわかるのですが。。。
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