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第11話 はい/いいえ

2020/10/30に改訂しました。

第一章終了です!

『ガウッ!』


 戦闘が終了し、俺とルナが和んでいると、唐突にチッタが吠えた。

 ヒタヒタと先ほどの悪霊が乗り移っていた樹木の根元に歩いて行く。

 すると、地面に向かって鼻を擦り付けた。

 よく見ると、何か舐めている。


 木の根元に倒れていたのは、少女だった。

 少女の姿はボロボロだ。出会った時のルナを思い出す。


 貝の裏側のように白い肌も、エメラルドグリーンの髪もくすみ、色つやを失っている。

 息も浅い。

 今にも事切れそうだ。


 だが驚くべきは、その背丈が俺の二の腕しかないことである。


 何の種族か。見たことないぞ。

 もしかして、精霊とかそういうのだろうか。


「ルナ!」

「任せて下さい」


 ルナは『大回復』を使う。

 スキルレベル1にして、瀕死のチッタを快復させた『大回復』が、小さな少女を包んだ。

 キラキラと小さな身体が輝きを帯び始める。

 すっと少女は立ち上がると、一気に身体が大きくなっていった。

 あらゆる部分が発育していき、ついに一糸まとわぬ成人女性が現れる。


「ぬお!!」


 思わず声を上げる。

 木の根や枝で秘部が隠されているものの、逆にそれでエロさが倍増していた。


「ありがとうございます、大魔王ダイチ」

「俺の名前を……」

「はい。私の名前はドリアード……。マナストリアに住む木の精霊です」


 精霊来たぁぁぁあああ!!

 もしかしてって思ってたけど。

 マナストリアにも精霊がいたんだな。


「あなたの名前は木を通して記憶しております。もっとも私は呪いの影響で自我を失っていたようですが」

「呪い……。精霊に呪いをかけた人がいるのか?」

「人ではありません。私に呪いをかけたのは、魔族です」

「魔族!?」


 俺は思わず声を張った。


「かつて大魔王として君臨し、神界の侵攻を阻止するべく魔族とともに戦ったあなたには、少し耳の痛い話かもしれませんが……」

「事情を聞かせてくれるんだな」

「はい」


 トリアードは説明を始めた。

 それは長く、そして100年ほど前のマナストリアの話だった。


 かつてのマナストリアは、人族、獣人、エルフ、魔族、精霊が共存する世界だったそうだ。

 しかし、その均衡は突如として破られた。

 魔族が他の種族を攻撃し、このマナストリアの覇権を握ろうとしたのだ。

 勿論、人族は他の種族と共闘し、魔族に対抗しようとしたが、結局敗れ、この暗黒大陸に幽閉された。


「我ら精霊族も、魔族により封印され、あるいは呪いを浴びました。そうして、暗黒大陸――いえ、この聖域は生物が生活するには厳しい環境となってしまったのです」

「つまり、火、水、風、木、土の精霊がいなくなってしまって、この大陸はこんな風に荒れ果ててしまったってことだな」

「おお! 他の精霊の存在も知っているのですか、大魔王」

「さすがダイチ様です」


 ドリアードが驚けば、横で聞いていたルナも目をキラキラさせて感動する。


 単なるゲーム脳の推理だったんだが、当たってしまったらしい。

 俺は思わず苦笑いを浮かべる。


 しかし、聞けば聞くほど初めての情報ばかりだ。

 マナストリアに来た当初、世界のことをエヴノスたちに一から教えてもらったが、どうやら魔族にとって都合のいい内容を教え込まれたらしい。

 人族がいるってことも、暗黒大陸に来て初めて知ったしな。


 だが、魔族の社会で数年揉まれていた俺は、さほど驚いていない。

 こういう事はよくあることだ。

 いちいち驚いていたら、心臓が2つあったところで足りないだろう。


「ここはかつて聖域と呼ばれていました。本当は緑豊かな場所だったのです。……大魔王ダイチ。あなたに頼みがあります。どうかこの大陸を再び緑豊かな大地に戻してくれませんか?」

「それは、ぼろぼろの暗黒大陸を成長させろってことだな」

「そういうことになります」


 大陸育成ゲーか。

 なるほど。それも面白いな。

 そのためには、まずはドリアードみたいな精霊を解放しなければならないってことか。ふむふむ。まさにゲームっぽくなってきたな。


「大魔王殿、答えを聞かせて下さい」

「そうだな。答えは――――」



 ノーだ。



「え?」

「ダイチ様?」

『ガウ?』


 これにはドリアードだけではない。

 ルナやチッタまで驚いていた。


 まあ、驚くのは無理もないよな。

 これがゲームで「いいえ」を選んだなら、永久ループのスタートだろう。

 だが、俺は冗談で言ってるわけでも、興味本位で選択しているわけでもない。

 割と本気で答えてるんだ。


「大陸って言うから暗黒大陸は広いんだろ? そんなの俺1人でカバーできるわけがない。俺は確かに大魔王だし、魔族の間では裏ボスって言われてた。けど【言霊(ネイムド)】を除けば、単なる日本人なんだ。聖域を緑豊かになんて無理だよ」

「し、しかし――――」

「ドリアード……。お前は頭を下げる相手を間違えているんだよ」


 俺はルナの背後に立ち、その小さな肩に手を置いた。


「お前がお願いするのは、ここに住む人族や他の種族だ。その協力なくして、聖域の復興はまずあり得ない。それが1つだ」

「まだ何か?」

「もう1つの理由は、俺が魔族側の人間だってことだよ。確かに魔族がお前達にした仕打ちはひどいと思うし、お前らの存在を世界からも歴史からも消したことは許せないと思う。そこは元大魔王としても、ビシッと制裁してやるつもりだ」

「は、はあ……」

「だけど、俺はあいつらが神族の侵攻を防ぐために、滅茶苦茶頑張ったのを知ってる。俺みたいな力がないヤツに頭を下げてまで、強くなろうとしていたことは事実だ。まあ、頭を下げながら、舌を出していたんだろうけど、そこは大目に見ようと思ってる」


 そこまで言うと、ドリアードは少し考えてこう返答した。


「つまり、あなたは仮にこの聖域が元に戻っても、魔族と対抗するつもりはない、と」

「そういうことだ」

「なるほど」


 ドリアードは軽く頷いた。

 しばらく険しい顔をして考えていたが、表情が一変する。

 穏やかな笑みを浮かべたのだ。


「あなたはとても慈悲深い方なのですね」

「慈悲って……。大げさだな、ドリアードは」

「はい。ダイチ様はとてもお優しい方です」


 おいおい、ルナまで。

 俺はあくまで正直に話しただけなんだが……。


「いえ。あなたなら、他の精霊たちも喜んで協力してくれるはずです。きっと精霊王様もお喜びになるはずです」

「精霊王?」

「この聖域を統治されていた王の名前です。お隠れになってしまいましたが」


 ドリアードは少し残念そうに下を向く。

 やがて俺の方を向いて、口を開いた。


「ならば、大魔王ダイチ。少し言い方を変えましょう。この大陸を元に戻すための手伝いをしてくれませんか? この暗黒大陸に生ける種族たちとともに……」

「ああ。そういうことなら、喜んで協力させてもらうよ」


 ドリアードは最後に笑みを見せる。

 すると、光を帯び始めた。

 小さな緑色の光になると、俺の胸の中に吸い込まれていく。


 頭の中にドリアードの声が聞こえた。



 助けが必要な時、【言霊(ネイムド)】で私の名前を呼んで下さい。



 そう言い残し、ドリアードの気配が消失した。


「やれやれ……。結局、頼る気満々じゃないか」

「でも、すごいことですよ、ダイチ様。精霊様から依頼されるなんて」

「…………」

「どうしました?」


 押し黙った俺を見て、ルナは首を傾げる。


「いや、ルナにも悪いことしたなって」

「どういうことですか?」

「魔族に1番恨みがあるのは、ルナだろ。なのに俺は、魔族の肩を持つってのはさ」


 ルナは首を振った。


「いえ。ダイチ様がお決めになられたことですから……。むしろありがとうございます。そこまで私を気にかけてくれて。ダイチ様はとても優しいです」

「そ、そうかな……」


 ルナの頭に手を乗せ、俺は誓った。


「でも、ブラムゴンはちょっとやり過ぎだ。あいつのことは、俺が責任を持ってしつけてやるから、その時また助けてくれな」

「はい!」

『ガウッ!!』

「ああ。チッタも頼むぞ」


 梢の音が激しく打ち鳴らされる。

 森全体が荒波の中にいるかのようだ。

 その変化に驚き、様子を見ていると、本当に森が蠢き始めた。

 森が2つに割れ、直線の道ができあがる。


『ガウッ!』


 チッタが鼻を利かせて反応する。

 どうやらこの先に集落があるようだ。

 ドリアードが気を利かせてくれたんだろう。


「行こうか、ルナ、チッタ」


 俺たちは村の方へと戻っていった。


ここまでが、この作品のチュートリアルといった感じです。

自分の嫁を育成して、レベルアップして、精霊を解放し、暗黒大陸を豊かな土地に開拓していく。もちろん、魔族の襲撃もあり、防衛戦などのイベントもありますので、今後もお楽しみに。


ここまで面白い、先が楽しみにと思っていただけたら、

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