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いったい何が起こってるの!? 教会は公表していないけれど、授かる職業によって必要な魔力が異なるのは知っていた。ベアト君の錬金術師もかなり多い方、だけどこれはそれどころじゃない!
必死で吸い取られていく魔力をコントロールしようとするが、ほとんど意味をなさなかった。大量の魔力を一気に失い、ふらつく私の頭に言葉が浮かんでくる。
職業:召喚士
ギフト:祝福(不屈⇄■■)
恩恵:諦めない気持ちが幸運を呼び寄せる。また、意思の強さに応じて自身の成長が加速する。
代償:その身には試練が降りかかる。絶望し、行動を起こさないでいると状態異常が起こり、いずれ■■■■■■。
──っ!? まさかノア君がギフトを授かっていたなんて……! それに、頭には浮かんでるのに、読み取れない文字は何!? 彼の身体が成長していないのは、栄養不良ではなく代償のせいなの!?
「お嬢、どうした?」
パニックになっていた私に、心配した様子のルゥが私の肩に手を置いてそう尋ねてきた。
「ごめんなさい。ちょっとびっくりしちゃって」
「悪いこと?」
ノア君の声に引かれて視線を落とす。腕の中の彼は、不安そうな様子で私を見つめていた。いけない、しっかりしないと。
「いいえ、とても幸運なことよ。まずは、あなただけに伝えたいのだけれど……」
「ベアトと一緒がいい……」
ノア君はベアト君をちらりと見て、私のお腹に顔をうずめてしまった。私は微笑みを作り、できるだけゆっくりと優しい声色で彼に語りかける。
「そうよね。まず、あなたの職業は【召喚士】。異界から精霊や魔獣など喚び出し、使役する職業よ。とても珍しい職業だから詳しいことは私もわからないわ」
「やったなノア! すげえじゃんか!」
職業を告げた瞬間、ノア君はびくりと反応し、ベアト君は身体全体を使って喜びを表した。ノア君は再び私を見上げ、消え入りそうな声で呟く。
「……残りは何?」
どこまで伝えていいのだろう。アナスタシア様からは、私のギフトはただの【祝福】としか聞いていない。恩恵は様々な縁に恵まれ、共に過ごす仲間の成長を促すけれど、自身の成長にその効果はないと。代償については、その身には試練が降りかかるとしか……。
「もう一つは……ノア君は【不屈】というギフトを授かっていたの。恩恵は、諦めない気持ちが幸運を呼び寄せ、意思の強さに応じて自身の成長が加速すること。ただし、代償として、その身には試練が降りかかると頭に浮かんだわ」
全てを伝えたほうがよかったのだろうか。でも、アナスタシア様が私に伝えなかったのには、きっと意味があるはず。不屈という言葉は彼を勇気付けてくれると思って伝えたけれど……。
「ギフト? 僕に?」
「ノア、よかったなあ……。やっぱりお前は呪われてなんかなかったんだよ……」
呆然とするノア君に、彼の背中に手を置いて涙を流すベアト君。本当にいい関係。彼らを引き離すのは忍びないし、状況が大分変わってしまったからノア君を連れ出す必要はなくなったのかもしれない。
「ノア君、どうする? このことを長老方に話せば、きっとあなたを守ってくれると思うわ」
ノア君は私とベアト君を交互に見つめた後、視線を落として考え込んでしまった。ゆっくり待とう。家族から離れることを選ぶか、暮らす場所だけを変えて親友がいるこの村で生活するか、どちらがいいのかなんて私には判断できない。
どれくらいたっただろう。気を利かせたルゥが周囲に光が漏れにくい場所に起こしてくれた火に当たりながら待っていると、隣に座っていたノア君が何か決心した表情で口を開いた。
「僕は……外に行ってみたいです」
「理由はある?」
これだけは聞いておかないといけない。彼が何を思い、何を決意したのかは知っておく必要があるから。
「強くなりたいです」
「強くなってどうする? 家族に仕返しするか?」
私が聞こうとしたことを、ルゥが先に尋ねてくれた。どう聞こうかほんの少し迷っただけなのに、ルゥはいつもフォローしてくれる。
「いいえ。それだとシェリィさんに迷惑がかかります。あんな人たちのせいでそんなことになるのは絶対に嫌です」
「ではどうする?」
「わかりません。強くなった力をどう使えばいいのかも知りたいです。僕は皆さんのようになりたい……」
そっか、そんな風に思ってくれたんだ。うん、私たちのようになりたいと言ってくれた彼を信じよう。
「ノア君……。ルゥ、パステル、いい?」
「ああ、思う存分鍛えてやろう」
「鍛えてやるにゃ!」
そうと決まれば、まずはノア君の家族を説得して、それから長老様方にも……。見習われるような人であり続けられるように、私も頑張らないと。
ノアのギフトの説明文『(不屈⇄■■)』なのですが、不屈と■■の間が文字化けをしている方がいらっしゃいましたら教えていただけますと有り難いですm(_ _)m




