24話 またこの流れか!
クリス視点に戻ります。
今日プリケン達が3日間の休みを終えて帰ってくる。長いようで短かったなぁ......また忙しくなるぞ。
プリケンと厨二野郎の準備が整い次第、例の勇者の件についての話し合いをする予定。まあ、結局話し合いの事プリケン一族に伝えれなかったけど。
そうそう厨二野郎は昼頃に来るらしい。昨日の夜、いきなり矢文で送られてきた。もちろん窓ガラスを貫通してきてね......あの時は『誰かが私を暗殺しに来たのか!?』と思ってしまった。なんで矢文?
この手紙の内容は、昼頃に魔王城に出向くこと、予定より少し遅れるかもしれないこと、自称天使もついでに連れていくこと、が記されていた。
まあ、そんなわけで自分は魔王城の中で、プリケン一族や厨二野郎を待っている途中なのだが......
「女怖い。女怖い。女怖い。女怖い。女怖い。女怖い。女怖い。女怖い」
現在、まるまる2日間壊れているプリケンの介護をしている。なんで魔王である私がこんな事を......プリケンは早く復活してくれ!
「なんでさっきから同じ言葉を繰り返しているの?」
「頼むから察してくれ」
ルチアさん、この発言本気で言ってるのか? 加害者が被害者に『私、何もしてないよ!』と言ってるようなものなんだが?
いやでも、これに関しては100%プリケンが悪い......ウーン。プリケンに対して擁護のしようがないなぁ......本当にルチアさんはプリケンに何したんだろう?
「殿下ぁあああああ! まさかクリス殿がこんな酷い行動をするなんて思ってなかったでそ! 一族の反撃開始でそ! てなわけで死ねぇえええ! 殿下ぁああ!」
「またこの流れかよ! ちょまて! ファストガード!」
なんだ? 条件反射で言ってしまったけど、なんでプリケンがここに......そうか! もう帰って来てたのか! ていうかなんでいきなり殺害宣言!? そもそも酷い行動ってなんだ?
「もうこの状況は一族に伝えております。一族のために少しでも時間稼ぎでそ!」
「ちょ、お前余計なことを! ルチア! 一緒にプリケンを止めるぞ!」
あれぇえええ......? いない? さっきまで自分の隣にいたはずだが?
「いやぁ....! 私もうびっくり生物と関わりたくないので割り振られた部屋に戻らせてもらいまーす! じゃあ!」
「おい! 待て! 本当に待って!」
なんて奴だ!? 魔王を見捨てやがった! 多分君も当事者だから逃げるなぁ!?
「フハハハハ! よそ見していいのですかな? プリケサンダー!」
「いい加減にしろ!」
プリケサンダーは一回食らって威力を知っている。周囲に電撃を撒き散らすだけの火力が無い技だろ! これを直撃で食らったとしても軽症で済むくらいのな。魔王のカウンターを食らえーー!
「プギャぁあああああ!」
「峰打ちだ」
ふう、気絶したかな? 白目を剥いて倒れているから気絶してるよね? それにしても、なんでいきなり歯向かって来たんだ? 今回は本当に見に覚えが無いぞ。
「同胞、時間稼ぎありがとうございます。殿下ぁああ! どういうことでそ! どうしてこんな状況になってるのですかな」
あっ! プリケンが壊れたラジコン化しているプリケンを指さしてる......
「いや、違う! これは不慮の事故だったと言うか何というか......」
「女怖い。女怖い。女怖い。女怖い。女怖い。女怖い。女怖い。女怖い」
いい加減呪文みたいに言うのやめてくれ! ますます誤解を生んでしまう! いや......2割ぐらい私も悪いが......
「やはりあの一族の敵のせいですな。殿下、あの女はどこにいるのですか!」
「あの女って......まさか!?」
「......あの女は我々から全てを奪い去っていきました。なら我々はその復讐をしなくてはいけません。さあ、殿下! あの女の居場所を教えるのです!」
多分、あいつらならルチアをやりかねんな。2つの意味で......せっかくの四天王候補をこんな所で失うわけにはいかない!
「教えねぇよ......ルチアと一戦交えるつもりなら、その前にこの魔王様が相手してやる。かかってこい!」
流石にプリケンも何回も戦ってきて、私の実力を知ってきているはず。大丈夫。反乱は起きない。
「ぬうううう! やはり衝突は免れないですか。仕方ありません。一族総出で相手してやりますぞ!」
「え? 待って? そんなバカな!?」
「死ねぇえええ! 殿下ぁああああ!」
今日2回目! じゃなくて嘘だろ!? また歯向かってきた。何? 定期的に反乱しないと死ぬ病気なの?
ああ.....プリケン達が一斉に襲ってくる。今すぐ私のインフィルノで吹っ飛ばしたい所だけど、現在魔王城の中にいるから、ここでインフィルノをぶっ放してしまうといろいろ大惨事になってしまう。仕方ないから一体ずつ倒そう。
「成敗!」
「アギャアアアアア!?」
「5体全員峰打ちだ」
ふう......襲ってきたプリケンは全員気絶させたけど......こっからどうしようかな? 今すぐこの居間を出て追撃を掛けたいけど、そしたらプリケンはルチアさんの所に行くだろう。つまり実質ここから出られないわけか......
「久しぶりですな。3日振りと言った所ですかな?」
また新手が来たな。
「フハハハハ! 殿下。プリロボをご存知ですかな?」
プリロボ? ああ、私が魔王になる前に戦ったポンコツロボットか?
「旧式は惜しくも殿下にやられてしまいましたが、プリロボマーク2ならそうはいかないでそ! プリケン一族の科学力は魔界一!」
[シュゥゥゥ......]
なんだ? めちゃくちゃカッコよく強そうになってる! あのプリロボとは大違いだ!
「さあ! プリロボマーク2! 殿下をいい感じに葬り去るのでそ!」
プリロボマーク2か......
◇◇◇◇◇◇
プリロボマーク2が襲ってきた!
◇◇◇◇◇◇
言うてこいつもポンコツだろ! 壊れろ!
「ハッハッハ! 無駄ですぞ! 姿勢制御は旧式より完璧な上に、我々の優秀な遺伝子がプリロボマーク2に練り込んでありますからな。殿下如きの攻撃力じゃあ一生勝てないでそ!」
なんかいつにも増してプリケンがウザい。はあ.....もういいよ! とてもかっこいいプリロボマークなんちゃらをぶっ壊す! どうにでもなっちまえ!
[ドーーン!]
「プリロボマーク2! 強固体勢! 殿下の猛攻を耐え切るのでそ!」
「いくぞ! ついさっき名付けた技。爆裂パンチ❗️」
[ドッカーン!]
「嘘ですなぁああああ!? プリロボマーク2がいとも簡単に.....」
これが魔王まで登りきった男の力だ! ロボット如きなんかで止められると思うな!
「くくく、やはりプリロボ如きでは殿下を止められないですなぁ......愚かな殿下。次は私が相手するでそ」
もう誰が話してるかわかんねぇよ.....
「げ! げげえ! だが貴様の戦法はぁ!」
「くくく、どうしましたか殿下、お顔が青いですぞ」
この面構え、この距離感......ヤバイな。遠距離で攻撃する気満々じゃないか。そうだ! 少し話を濁そう。
「常に礼儀正しい我が母だったけど、少しだけ口汚くなる瞬間があった。『クリス......可愛いクリス......遠距離ガン逃げクソ野郎に注意しなさい。遠距離ガン逃げクソ野郎を見たら、必ずその命を絶つのです』」
「あの表面上穏やかなお母上がそのようなことを......」
「母は基本穏やかなんだけど、遠距離攻撃ぽんぽん撃ってくる相手にはブチギレてた。勝ったら屈伸煽りや相手が死ぬまで拷問とかとんでもないこと言ってた」
「そこまでですか!?」
「私は言ったんだ。『ですが母上、悪いのは相手ではありません。パワーはこっち側が上なのですから、向こうが遠距離メインでくるのは当然です。遠距離攻撃に文句を言うのはいいですが、相手を恨むのは筋違いかと......』」
「殿下にしては恐ろしくまともなご意見ですな」
「そうしたら母上は言ったんだ。『うるせえテメエから殺すぞ』あの時の目は実の子を見る目じゃなかった......」
「よほど遠距離攻撃をばんばん放ってくる輩に恨みが溜まっていたのですなぁ。それで何が言いたいのですかな?」
「もしお前が遠距離攻撃を放ったりしたら、タダじゃ置かないって意味だ!」
遠距離ガン逃げクソ野郎を実行されたら私はきっと、なす術もなくやられるだろう。我が母の事を話したりしたのもプリケンに対しての牽制ともいえる。
「さあどうする? 遠距離攻撃をするのか? なんなら壊れたラジコン化してるプリケンを弾除けに使ってもいいんだよ?」
「女怖い。女怖い。女怖い。女怖い。女怖い。女怖い。女怖い。女怖い」
壊れたラジコン化してるプリケンを人質に取った。我ながらクズな行動をしているがそんなこと知るか。さあ、プリケン達はどうするだろうなあ!
「ぬうううう! こんな非道な行いを平然とするとは.....やはりここで殺すしかありませんな。今私の心に正義の心が芽生えました!」
正義の心ってさ、お前らもそれなりに非道な行動をしてたよね? お前ら一族も言える立場じゃないよね? そもそも正義の心って何? お前らが正義側だって言うのか?
「世界中の懸命に生きる者たちの声が聞こえます。『お願い極悪非道な魔王を倒して! みんなの大事な世界を守って!』今確信しました! 私は極悪非道な魔王を討ち倒すために生まれてきたのでそ!」
お前は一体何を言ってるんだ? ていうかそもそもルチアさんを襲うのを目的にしてたんだよね? なんで魔王討伐に目的がすり替わってるの?
「てなわけで......死ねぇえええ! 殿下ぁああああ!」
厨二野郎早く来てくれ! 早くプリケンの暴走を止めてくれぇえええ!
[パリーン]
◇◇◇◇◇
次回に続く




