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10話 薬戦前線

「準備が出来ましたか?」


 さあ! いくぞ! こいつに勝ったら決勝という魔王の挑戦権が得られる! いうてモブには勝てるでしょ。いかにも適当な名前だし、なんか貧相な体つきで見るからに弱そうだしね。


「フッフッフ......」


「さあ、決勝の切符を掴むのはどっちなのか?」


「準決勝スタート!」


「ヒャッハー! いくぜ〜!」[ガシっ!]


 ウギギ......! いきなりくるか!? たかがモブの癖に......この!


「モブ選手! いきなり掴みかかってきた!しかし、それをクリス選手が払い除ける!」


「ぐっ......インフィルノ!」


[ドーーン!]


 よし! まともに食らったぞ! これをまともに受けれた奴はそうはいない。勝ったな! うん!


「ああ......これは流石に勝負あったな」


「クリス選手! 瞬殺か!」


 手ごたえ無かったな。まあ本気を出すまでもない相手だったって事か。名前も噛ませ犬っぽいし。それにしてもなんでこいつが準決勝まで上がってこれたんだろうか? 毒があったとはいえ、この実力じゃあ予選通過すら出来ないでしょ。


[パラパラ......]


「こんなものか〜? (.)(.)の子さんよ〜!」


 は? マジで!? さっきの渾身の一撃だったよ!? 割と腕や身体エネルギーに負担がかかるリスクありの攻撃だったのに......


「なんだと!?」


「なんと! 無傷です! 無傷!」


 ウーン。そう上手くはいかないか......流石に準決勝の相手はしぶとい。


 ん? なんだ? この空瓶(からびん)は? 誰かが会場に投げつけたのかな?


「言っておくがお前は俺様に勝てない」


「へ〜。凄い自信だね」


 なら! この自信をへし折ってやる。私の本気の一撃は少し痛いよ! 食らえ! 今思いついた必殺技! 魔王に絶対になるパーーンチ!


「お前の攻撃は俺様には届かない。だから......」


「おら!」


[ドッドーーン!]


「クリス選手、直接殴りに行った〜!」


「分かっただろ」


 硬い......確かに溝落ちをぶん殴ったはずなのに......てか、手が抜けねえ!? なんじゃこの筋肉は!? いやいや、筋肉とは無縁そうな奴がいきなりマッチョになることあるか!? そんなことを考えている暇は無え! なんとかこの腕を抜かないと......


「お前の攻撃は一切届かないとな!」


◇◇◇◇◇◇

モブB 無傷状態

◇◇◇◇◇◇


[ドカっ]


「ウグッ......痛って......」


 凄く重たい一撃だ......場外スレスレまで吹っ飛ばされたし、こいつのパワーがヤバイ! 侮ってかかっていた。


「なんで俺に一歩も引かずに戦ったあいつが、こんなに苦戦してるんだ? 本当にモブ君か?」


 それに、なんて硬さだ!? あの厨二野郎を除いたら今まで戦ってきた誰よりも強いぞこれは......


「教えてやろう。俺様とお前とは絶対的な差があるんだよ」


 ふう......絶対的な差だと? 自意識過剰だと思うよ。まあ確かに君は強いけど、あの厨二野郎よりは弱い! まだまだ勝機はある!


「そうか? 私からしたら、そうは見えないけど」


「ククク......ハッハッハ」[ゴクゴクゴク]


 いきなりモブが容器を取り出して中にある何かを飲んでいる? こいつは何をする気だ?


「そうか.......なら教えてやろう。俺様の絶対的な力を! ウオォォォォ! みなぎるぞ! 力がみなぎる!」


 なっなんだ!? いきなり強者の雰囲気に変わった。こいつの身体が、筋肉がみるみる大きくなってフィールドを覆いつくしていく......結構ヤバイな。


「ヒャッハー!」


[ガシッ! ドッ!]


「ウグッ!? グググ! ウオォォォォ!」


[ピシッ....]


「会場に亀裂が......!?」


 ヤバイ。マジで殺される。圧力が甚大すぎて受け流すことすら出来ない。クソったれ! なんて馬鹿力だ。




[観客席]


「あの......でそ」


「うわキモ.......いや、どうしました?」


「キモいでそ!?」


「いやいや、そんなこと言ってませんよ!」


「うん。はっきり言ってた」


「それより裏取引のお話を詳し.....」


「おい! プリケン! あれ、お前の連れじゃなかったか?」


「へっ? 殿下!?」




「会場はどうなるのでしょうか!」


 会場って......見る所絶対違うでしょ!? ぐぬぬ......なんとか切り返さないと魔王になる前に殺されるぞ。なんとか受け身を取らないと.....


「おいおい、大丈夫かよ......あいつは」


「一応言っときますが故意的に殺す行為だけはダメですからね!」


「クソ!」


 完全に殺す気でいるだろこれは。今はなんとか耐えているが、意識を失った時点でどうなるかは分かるけど......この圧倒的な力で押しつぶされている絶望的な状況どうすればいいんだ。


「さあ、どうする? 苦しいだろ。さあ選べ、ここで死ぬか、俺様の奴隷になるか」


「は? それを決めるのはお前じゃないんだよ。俺は魔王になる男だぞ!」


「なら、死ね!」


 死なねえ! 自分はこの戦いにはもう興味が無い。死ぬのは貴様だモブ! とは言ったがクソ! どうすればいいんだ? このくそったれな状況。なんか......抵抗しないと......


「この!」[ドッ!]


「グハッ......」


ほえ? 苦しまぐれの蹴りが効いているのか...


「やってくれるなぁ〜! 折角気持ちよくなっていた所によ〜!」


(やく)切れか?」


 あの空瓶(からびん)......あいつがさっき飲んでた(びん)と同じ......


 (びん)に入ってた、あの水を飲んだ瞬間雰囲気が変わったけど。まさか......あの瓶の中に入っていたのは。うん。とりあえず、試してみよう。


「インフィルノ!」


「アギャ〜!?」


「モブ選手の断末魔が聞こえます!」


「なっ何が起きた!?」


 えっ......マジで? さっきまで傷一つつける事ができなかった自分の必殺技が今度はモブがまる焦げに......この時点で確信したわ。何故異次元級にこいつが強かったかが。


「......」


「モブ選手、なんとか立ち上がるが瀕死寸前です」


「あー。答え合わせしていい?」


(びん)の中には身体強化の薬が入ってたんだろ」


「......」


「最初のインフィルノを無傷で防いだのもこれを飲んでたからか?」


「......」


「おーい! 気絶してるのか?」


「あいつのスタミナはどうかしてる」


「よし! 気絶してるみたいだから決勝進出でいい? ラフィーナさん」


 いてて...身体中が痛いや... でもこれで決勝進出だ!


「えっと......」




「ウォォオア〜!」


 な!? 意識を取り戻しやがった!?


「ハッハッハ...... 俺にはまだ...... 毒がある!」


「ああ。これのこと?」


「はァァァぁぁぁ!?」


「あんたが気絶してる間に拝借させてもらったよ」


「おい! 卑怯者! 返せ!」


「どの口が言うんだ? さあ、まだ戦うのか?」


正直、疲れてるから早く終わらしたい。


「ここまで来て引き下がれるか!」


ですよね。


「ウオォォォォ! グフッ」


よし! 終わり!


「モブB選手気絶! クリス選手、決勝進出!」


[ワァァァァァァ!]


[観客席]


「やばいでそ。 やばいでそ」


◇◇◇◇◇

次回に続く

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