表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
きみと桜の木の下で  作者: 花音
第4章  本当の戦い
76/230

第75の扉 太陽の秘密

【前回の話の太陽視点になります】

※※※※


「?」


 何やら玄関から黒いオーラを感じます。

 京也さんでしょうか? いえ、この感じは全く別物ですね。魔力は感じません。


 私は警戒しながら玄関へと向かい、そっと扉を開けます。その先の光景に目を見開きました。

 そこには姫様と優一さん、そして黒いオーラがまとう、うららさんがいらっしゃいました。何やら怒っているようです。怖いですね。


「……」


 私が扉の前で考え込んでいますと、姫がこちらにかけてきました。その姫の表情を見て、少々ぴりついてしまいます。私、姫をお守りするためなら、あのお二人を敵にまわす覚悟はできておりますが……


「お部屋の準備してくるね」


 そんな物騒なことを考えていますと、姫は私に一声かけ、部屋の準備に向かわれました。

 はて、一体どういう状況なのか。よく理解できませんが、姫があんな怯えた(・・・)顔をしている理由を聞かねばなりませんね。




「「こんにちは」」


 姫の準備が整い、優一さんとうららさんがやってきます。どうやら今から姫と優一さんでお話をされるご様子。何の話をされるのか分かりませんが、姫は一人でお話を聞くと決意しているようです。

 私は心配ですが、別室でうららさんと待機することとなりました。


「隣の部屋にいますので、何かあったら呼んでくださいね」

「わたくしも控えておりますのですぐお呼びください」

「うららちゃん、太陽ありがとう」


 パタンと部屋の扉が閉まります。


「ふぅ……」


 優一さんからの話とは何なのでしょう? やはり水の国で何かあったのでしょうね。

 姫は帰国されてからどうも様子がおかしいのです。ぼんやりとしていることが多くなりました。水の国でのことをお聞きしても答えてくれません。大丈夫、と言って微笑まれます。


 姫は中々ご自身の感情を出してくれません。嬉しい、楽しいというプラスの感情はよく出してくれるのですが、怖い、困ったというマイナスの感情は隠そうとします。心配をかけないように我慢するのでしょう。


 以前それで感情の爆発が起きたことがありますが、今回も爆発しそうです。水の国で何かがあったのでしょう。綺麗で安全な国だったはずですが、何があったのでしょうか。


 一緒に同行していた優一さんなら事情を知っているような気がします。今回のお話で姫が良い方向へ向かうと良いのですが。

 扉の前で考え込んでいると、うららさんが横から私に話しかけます。


「太陽さん、お気持ちは分かりますが、少し抑えた方が良いのでは?」


 おや、考え事に夢中で気がつきませんでした。

 うららさんに言われて私は自分の体を見ます。何やらどす黒い物が出ていますね。


「これは大変失礼いたしました」


 私は息を一つ吐くと、心を落ち着けようと努力します。私の心はもうだいぶ落ち着いているのですが、()がまだのようですね。これ以上されると体が辛いので勘弁してほしいものです。じっとりと汗をかいてきました。息も苦しい感じがします。


「大丈夫ですか?」


 心配そうな表情でうららさんが見つめています。うららさんご心配なく、直に落ち着きますので。







「ご心配おかけいたしました」


 数分後、落ち着いた私はうららさんを姫たちのいる隣の部屋へ案内し、お茶をお出しします。私たちは姫様たちの話が終わるまでこちらで待機なのです。そう言えば、うららさんと二人でお話しするのは初めてかもしれませんね。


「太陽さん、お聞きしたいことがあるのですが」


 うららさんはお茶を口に含むと、早速私に質問を投げかけます。はい、何となく予想しておりましたよ。


「なんでしょうか?」

「太陽さんは敵ではありませんわよね?」


 おや、何やらうららさんからまた黒いオーラがにじみ出ていますね。今度は怒りではなく、威圧でしょうか。


「なぜそのようなことを思われたのでしょうか?」

「先ほどの黒い物ですわ」


 そう言ってうららさんはニコリと微笑まれます。不気味な笑顔です。真っ黒です。

 はて、うららさんからも同じようなものが出ているではありませんか。


「私のとは違い魔力を感じましたの、あなたとは別の方の(・・・・)


 とぼけても無駄のようですね。元より鋭いお方だと思っていましたが、油断しました。

 うららさんはにっこりと笑顔ですが、相変わらず黒いオーラが見えますね。怖いです。しまってほしいです。


 ここで変にごまかすと逆に怪しく見えるでしょう……


「はい、確かに魔力が漏れておりましたね。失礼いたしました。ですが、私は姫の敵ではありませんよ」


 うららさんは私の目をまっすぐに見つめてきます。とても透き通った綺麗な瞳です。うららさんの目は奥二重で優しい印象ですね。まつげも長いです。

 あ、失礼いたしました。女性の顔をジロジロ観察してはいけませんね。ごめんなさい。

 私がそんなことを考えておりますと、うららさんからパッと黒いオーラが消えました。


「分かりました、信じますわ。そもそも太陽さんの態度を見ていれば、敵ではないと分かっていましたの」

「おや、でしたらなぜ先ほどのような言い方を?」

「事情はあるのでしょうが、話した方が楽になることもありますわ」


 うららさんはそう言うとにっこりと微笑んでくださいました。今度の微笑みは、とても暖かい感じがします。


「風花さんもそうですが、あなた方は貯め込みすぎです」


 うららさんはどこまで分かっているのでしょうか。私が話しやすいような空気を作ってくれたのですね。私が姫のように爆発する前に。

 姫は本当に良いご友人を持たれましたね。いえ、それは私もでしょうか。


「お心遣い感謝いたします」


 とても嬉しいです。ですが、ごめんなさい。この事実は話せません。うららさんにも、姫にも。


 ピンポーン


 家の玄関のチャイムが鳴ります。はて、どなたでしょう。今日は来客の予定はありませんでしたが。私はうららさんに一言告げて、玄関へ向かいます。


「こ、こんにちは」

「おや、こんにちは。どうされたのですか、翼さん」


 そこには息を切らしている翼さんがいました。走ってこられたのでしょう、肩で息をされています。


「昨日水の国から帰ってきて、桜木さんの様子がおかしいんだ。何がおかしいのかは分からなかったけど、嫌な予感がして……」


 翼さんも姫様の変化に気がついておられたのですね。姫は本当にご友人に恵まれたようです。私とても嬉しいです。


 翼さんに事情を説明し、うららさんの待つ部屋へとご案内します。優一さんとの話が終わるまで3人で待つこととなりました。

 その間、水の国へ同行していた翼さんから話を聞くことにしましょう……

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ