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きみと桜の木の下で  作者: 花音
第1章  はじまり
24/230

第23の扉 ダンジョン攻略戦その5

※※※※


「フ、防御だけでは俺を倒すことなど、不可能!」

「くっそ!」


 『カッコイイ決めポーズ対決』に引き分けた俺たちは、実力で勝負することとなり今に至る。


 ひゅんっ、ひゅんっ!


 俺は敵の弓矢の嵐に苦戦していた。敵の矢は戦闘開始から一向に止む気配を見せない。鋭い攻撃達がずっと俺を襲う。

 しかもただの弓矢の攻撃じゃない。矢一本一本に魔力を乗せて攻撃してやがる。shield(シールド)で何とか防いでいるけど、当たる一本一本がすさまじく重い。腕で支えているけどもう限界だ。


 なんなんだよ、こいつ。どれだけ魔力持っているんだよ。そろそろ威力が弱まるかと思ってたのに。

 どうすれば、いいんだ……


「我を包み込め、leaf dome(リーフドーム)!」


 俺は葉でドームを作り、自分の周りを360度包み込む。消費魔力はこっちの方が大きいけど、shield(シールド)と違って腕で支えなくていいから楽だ。もう腕がジンジンしてたんだよ。


「……」


 さて、今は何とか防ぐことができているが、どうしたものか。あいつの言う通り、攻撃ができなければこの勝負に勝つことなんてできない。


 俺はちらりと葉のすき間から敵の様子をうかがう。カッコイイポーズを披露し、技を放っていた。

 くっそ、なんだよ、あのポーズ。めちゃくちゃカッコいいじゃないか!

 俺もたくさんポーズ考えたんだぞ! 披露したい!


 あ、そうじゃない、今はダメだ。ちゃんと考えねば……


 はっ! よく見たらあいつ、服もカッコイイではないかっ!

 なんかキラキラしているチェーンが腰についてるぅ!!!

 し、しかも、マントをひらひらとなびかせている、だ、と……


 ふむ、後ほど桜木に俺の服にもチェーンやマントをつけれないか交渉してみるか。






「……」


 あ、しまった、桜木だ。そうだ、今はあいつを助けるんだった。

 ふぅ、相手の罠にまんまとはまるところだったぜ。ああやって、かっこよく俺を惑わしているんだろう? お前の技、見切ったぜ、キラーン。


「コホン」


 俺は咳ばらいを一つして、心を落ち着ける。何とかこの状況を解決せねばならんのだ。

 だけど、この状況を打破できる秘策なんて……


『相手の呼吸をよんで』

 __________________



「塩酸か?」

「ソウ。オレノミズ、イタイヨ」


 敵が放った水が俺の服に当たり溶けた。相手は余裕の表情で不気味な雰囲気を纏ったまま。


 厄介だな、溶ける……

 それに加えて、服が解けた下の皮膚がひりひりと焼けるように痛い。流石塩酸。


「ハヤクシナイト、ゼンブトカス」


 敵は次々と俺に塩酸を投げつけてくる。その攻撃は一向に弱まらない。


「盾となれ、water(ウォーター) shield(シールド)


 俺はそれを防ぐことで精一杯になっており反撃ができない。幸い相手の塩酸はshield(シールド)で防ぐことができているが、これもいつまでもつか分からない。確実にあいつは俺よりも魔力の量が上だ。時間をかけすぎると、俺の魔力がなくなってしまう。

 今の俺ではshield(シールド)を展開しながら他の技を繰り出すなんて器用な真似はできない。反撃するにはこれを消さなくてはいけない。そんなことをすれば確実に俺が溶ける……


 どうしたらいい……

 早くしないと桜木が大変なのに。


 俺の頭に桜木の顔が浮かんでくる。


『魔法は想像力だよ』

 __________________



「全然敵わない」

「強すぎる……」


 ウチと美羽は敵の攻撃に吹き飛ばされてしまっていた。さっきからどんどん攻撃しているのに、相手には全く効いている気配がない。


「君たちね、まずお互いの相性が悪いよ。熱と氷でしょ?」


 確かに敵の言うとおり。ウチと美羽だと属性が真逆。お互いの攻撃が邪魔をしてしまってるんだ。

 ウチと美羽の力単独だと到底こいつには敵わない。それほどに魔力の量、戦いの経験値が違いすぎる。だから連携攻撃で相手を倒そうと攻撃していたんだけど、それが裏目に出てしまった。

 どうしたらいいの……


「これは僕の圧勝かな」


 敵は余裕の表情を見せている。もう! なんか、腹が立ってきた。


 あー。ダメダメ、冷静にならないと


 ウチはぶんぶんと頭を振り、心を落ち着かせようとする。

 いつも剣道の時でもそうだ。自分のペースでやらなくちゃ負ける。相手のペースに持っていかれたらダメ。


 ウチはちらりと隣にいる美羽を見る。

 

 大丈夫、ウチは一人じゃない。隣に美羽もいてくれるんだ。早くしないと、風花が大変なんだから。こんなやつに構っている時間はない。


「……」


 美羽の目はまだ死んでない。ウチも絶対にあきらめない。風花を助けるんだから。


『油断しないで、最後まであきらめなかったら勝機はある』

 __________________



 キンキンと、剣の交わる音が響く。


「お前、やるな。俺と互角か……」

「光栄です……」


 私は目の前の番人に苦戦を強いられています。

 早く翼さんに追いつかなくてはいけないというのに。とても焦っています。姫の一大事なのです。時間がないのです。


 私は姫を何としてでもお守りしなければなりません。王様より授かった任務です。

 それに何より私が姫を失うのは嫌なのです。だから早く私にやられてほしいものです。


 しかし、相手もなかなかの強さです。さっきから私の剣を弾いてしまいます。どうしたらよいのでしょうか……



『焦らなくていいから、落ち着いて』


 __________________




「くそっ」


 僕は薬の部屋を目の前にして苦戦していた。


「ふふん、早くしないと後ろのお友だちが死んでしまうわね」

fire shot(ファイヤーショット)!」


 敵は余裕の表情で僕の攻撃をあしらう。

 どうしたらいいんだ…… 薬の部屋は目の前なのに……

 やっぱり僕は弱い。さっきから精いっぱい技を発動しているのに全然敵わない。火練さんの力をうまく使いこなせていないんだ。


 悔しくて、情けなくて、杖を握る腕に力が入る。そんな僕の様子を見て、敵がにやりと微笑んだ。


「そろそろ終わりにしましょうか」

「え?」


 そう言うと、敵は一気に僕との距離を詰めてきた。僕の目の前までふわりとやってくると、首元を掴んで持ち上げる。


「ぐっ……」


 苦しくて声が漏れる。敵の手を振りほどこうともがくけど、軽くあしらわれてしまった。全く歯が立たない。力の差が大きすぎる。

 僕は後ろで木にもたれたままの桜木さんを見る。



 ダメだ、僕が勝たないと桜木さんが。みんなが託してくれたのに……



「さようなら」


 敵は僕にとどめをさそうと手を上げた。彼女の手はきらりと光るナイフが握られている。


(やられるっ!)


 僕はギュっと目を閉じた。












 翼の後ろでは風花が静かに目をあける。


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