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第五十五話 ~時のダンジョン~

 神発暦3512年



「そうか、古のダンジョンか。また、とんでもない試練を与えられたものだな」


「知ってるのですか?」



 僕は修行を始めるためにある場所に向かう途中の道で、神ジーラからの試練の話を父としていた。



「知ってるさ。私もかつて目指していたからね。古のダンジョンを」


「どんなところなんですか?。本を読んでも詳しく書いてあるものは見つからなくて、7つある最古のダンジョンのことなんですか?」


「ああ、およそ今から1300年前まで2つの大陸を統べた大帝国、その大帝国を滅ばした白きドラゴンの伝説は知ってるな」


「はい、母上には嫌というほど聞かされてましたから」


「そのドラゴンが創り出したと言われいるのが、古のダンジョンだ」


「では、伝説は本当なのですか?」


「伝説の真偽は私にはわからないが、この国で上位の冒険者になった時には、ギルド本部からブレスレットとメダル、そして3枚の依頼書が渡される」


「依頼書ですか?」


「ああ、報酬もなし、期間なし、場所も書かれていない。3枚の依頼書。その一つにあるのが古のダンジョンの攻略だ」


「場所が書かれていないというのは?」


「古のダンジョンは、今から200年前に発掘された大帝国時代の歴史碑に存在に関することが刻まれているだけで、その場所は刻まれていない。

 だが、何十年、何百年と長い歴史によって、冒険者達の中である仮説が生まれた」


「仮説ですか?」


「ああ、何十、何百と世界中を旅した冒険者達ですら発見することすら叶わなかったダンジョン。では、どこにあるのか、この世界の冒険者が足を踏み入れ誰一人、まともに冒険することすら叶わなかった場所」


「暗黒大陸ですか」


「あくまで、それこそ、伝説だ。本当に暗黒大陸にあるのかすらも分からない。だが、この国には一つだけダンジョンの場所を知る術があるかもしれない」


「それは」


「時のダンジョンと呼ばれる。最古のダンジョンの一つであり、もっとも、謎の多いと言われるダンジョンだ」


「謎の多いダンジョン?」



 僕が父から聞いた時のダンジョンの話は次の通りだ。


 ダンジョンの場所は、現在の帝都ハルメシア、そこにあるハルメシア学院の中心に位置する扉のない時計台。しかし、1年と79日の間隔で、19時12分から鐘の鳴る4分間だけ扉が出現する。


 その扉の先は光に包まれ、外から中を見ることはできない。そして、ダンジョンの中に入ることが出来るのは、1度だけ、2度目に入ろうとしても不可思議な力でダンジョンの中には入ることができない。


 また、ダンジョンに入った者たちがダンジョンから出てくるときは、全員が気を失った状態で時計台の外に転送され、ダンジョンの中の記憶はすべて消えている。故にダンジョンの構造も、攻略方法も、魔物の種類もわからなかった。


 だが、ある日、時のダンジョンに入った一人の冒険者がいた。その男はダンジョンに入る前は5等級の冒険者として活動し破壊神の加護を授かった攻撃系魔法職であった。その男の持つ加護と年齢からして、それ以上のランクアップは見込まれてはいなかった。だが、時のダンジョンから帰還したのち、男はある一つの強力な魔法を使えるようになり、わずか1年で第一等級冒険者へと昇格した。


 そして、誰しもがどうやって、その魔法を覚えたのかその男に聞いた。すると、男はこういったそうだ。


「俺がこの魔法を使えるようになったのは時計台のダンジョンから戻った時からだ。あの時計台のダンジョンには魔法の知識を手にする何かがあるのかもしれない」


 その男の発言を聞き、多くの魔法系冒険者達が自らの力を強くするため、一度きりのダンジョンに挑戦した。それにより、男と同じく強力な力を経た者もいた。


 およそ300年前の大賢者フルー・マーシェナルがさらなる知を求めダンジョンに入った。それこそがこのダンジョンが時のダンジョンと呼ばれる事件を引き起こす。今までの冒険者達はダンジョンに侵入し出てくるまで、長くとも1年ほどでダンジョンの外に出てきたが、大賢者フルー・マーシェナルは10年経っても、20年経っても、今に至るまで出てきてはいない。そして、世間ではある噂が広まった。このダンジョンは強すぎると帰ってこれないと。


 しかし、フルー・マーシェナルの噂が都市伝説となっていた時。帰還した冒険者が驚くべきことを話した。ダンジョンの中でフルー・マーシェナルと会ったのだという。ダンジョンの中で大賢者フルー・マーシェナルはその冒険者にある伝言を伝えたそうだ。


「君に私と会った記憶を残して帰す。

 このダンジョンでは時という概念がない、故に永遠に生きることが可能だ。私は知の探究者としてここに残り続けていた。だが、私が一人で探究し解決できる限界を感じ、このダンジョンから帰還することも考えた。

 だが、このダンジョンを攻略するために伝えてほしいことがある。君はこの先で何を見たか覚えていることはできないが、恐らくこの伝言は覚えておくことが出来ると信じている。

 この『時のダンジョン』を攻略できるのは成人していない子供だけ。強き子を連れてきてくれ」



「強い子供ですか。ですが、父上、この話のどこに暗黒大陸の場所を知る手掛かりが?」


「大賢者フルー・マーシェナル。伝説と言われいるその御人が本当に今もなお生きているのなら、知っているかもしれない。

 伝説では、その大賢者は『真実の眼(トゥルーアイ)』の一人だったといわれている方だ」


「えっ、暗黒大陸を横断した伝説のパーティですか?」


「ああ、だが、本当に横断できたのか証明できる人間はいない。大賢者を除けば」


「父上は大賢者フルーに会うことは出来なかったのですか?」


「私もかつて学院最強の一人として『時のダンジョン』に入ったが記憶は何も残っていない。私が出た時にあったのは精霊との契約だけだった」


「未だに、誰も大賢者フルーと会ったものはいないのですか?」


「それはわからない。ダンジョンでの記憶は残らないからね。だが、確かなこととして、大賢者はまだダンジョンから出てきていない」


「では、成人する前にダンジョンに入れば大賢者に会い、記憶を残してもらったまま『古のダンジョン』について教えてもらえる高いわけですね」


「その通りだ。それと、『時のダンジョン』に入ることが出来るのは選ばれた人間だけだ。扉が開いている時間が短すぎるため、基本は帝国魔導士が優先的に入り、次に同盟国の魔導士、最後が抽選で選ばれた冒険者となっている」


「では、僕はその抽選でどうにかしなければいけないと」 


「いや、私が学院最強の一人として入ったといっただろ」


「特別枠ですか?」


「そうだ、ハルメシア学院では大賢者フルーの伝言がもたらされてから、扉が開くまえに学院最強の生徒を選抜し『時のダンジョン』に入る資格を与えている」


「なるほど、では学院最強の生徒なればいいわけですね」


「その通りだ。それに『時のダンジョン』に入る資格を得れば、同時に第6等級冒険者が約束される」


「一石二鳥ってことですね」


「一石二鳥とはなんだ?」


「えっと」


「それも、前世の言葉か」


「はい、そうです」




 神発暦3515年


 

 僕は少し離れた宿舎の屋根の上から扉の中に入っていく人達を観察していた。



「間に合った。あれが来年僕が目指すダンジョンの入り口か。試練への手掛かりになると良いけど」



 僕はダンジョンに入るため、並んでいる数人の冒険者を確認する。



「フルーさん。僕からのあなたへの伝言を渡しておきます。見てくれることを魔法に願って」



 僕はそう言うと、冒険者の内の一人が腰に付けている袋を目掛けて魔法石を投げた。すると魔法石は誰にも築かれることなく袋の隙間へと入り込んだ。



「相変わらず便利な魔法だ。運神上位になったら何ができるんだか。恐ろしいな」

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