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転生英雄伝 ~戦乱編~ 過去の英霊の魔法を使って最強の英雄となる  作者: 黒紙 創
第二章 ~遥かなる高みへ~
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第四十話 ~マルク領防衛戦・叱責~

「ギャハハハ。オラオラどうした。もっと楽しませろや。準備運動にもなんねえぞ」



 オラクル・オーガであるシュテンが、右翼から援護に来た第三旅団と左翼の各旅団長および副旅団長をねじ伏せていく。



「くそ、強すぎる」


「一旦引くしか」


「無理だろ。ここで引いたら、誰がアイツを止めるんだ」


「でも」



 言い争いも起こり始め、壊滅は時間の問題かに思われた。そんなときであった。



「まずはお前から」



 シュテンが兵の一人にトドメを刺そうとしたとき、シュテンの体に光の矢が刺さり、頭に火が舞い上がる。



「いってぇ。どいつだ!」



 シュテンの怒号が響き渡る。そして、後方から援軍が到着する。



「助かった」



 一人の兵士が思わず口ずさむ。



「伝令。一度体制を立て直す。オラクルを相手取っている兵士は後方に下がれ」



 援軍の声が響く。そして、シュテンの相手をしていた兵士たちは一度後方に下がっていく。


 シュテンはその状況に新しいおもちゃをもらった子供のように無邪気に笑っている。




「今度はお前たちが遊んでくれるのか?

 あいつに合うまでの暇つぶしくらいにはなってくれよ」



 シュテンはその大きな太刀をもち、突っ込んでくる。



「魔法部隊用意。......放て!」



 援軍の体調と思われる兵から声が上がる。すると、シュテンの足元に岩の魔法が飛んでくる。



「下手くそだな」



 シュテンは自身一つも当たらなかった岩の魔法に対し嘲笑った。しかし



「なんだぁ?」



 岩が突如光だした。岩はシュテンを囲むように地面に食い込んでおり、岩同士が光で繋がっていく。そしてシュテンを囲む結界が完成する。



「ふざけやがって、戦え」



 シュテンは出来上がった結界を壊そうと大太刀を振るう。しかし、結界はなかなかの強度を誇り壊れる様子はない。



「どれくらいもつ?」


「恐らく1時間は」


「それまでに遊撃隊が来るのを願うしかないか」






「俺は悪くない、俺は悪くない」



 ホルンは前線から離れた後方に立てられたテントに一人、死んだ瞳で椅子に座り地面を見つめながら、独り言をつぶやいていた。その様子に周りの救護兵も声をかけられない状況にいた。


 そんなテントの外からは声が聞こえてくる。



「まだ、動かないでください。傷口が開きます」


「だまれ、私にはやらねばならない事がある」



 すると、テントの中に一人の兵士が入ってくる。しかし、ホルンはその事を気にもとめずにいた。そして、



「ホルン様。コール只今戻りました」



 体に包帯を巻いた状態のコールが膝を付きホルンに声を掛ける。



「コール、か」



 しかし、ホルンはまるで興味がないように声をだす。



「どうされましたか。ホルン様。いつも自身に満ちていたお方が」


「コールよ。私はもうだめだ。兵を仕切ることもできず、しかも、父に見放されてしまった」


「そんな事で悩んでおられるのですか」


「そんなことだと」



 ホルンの声に怒りの感情がにじみ出た。そして、ホルンがコールを睨み付けるとコールの平手打ちがホルンの頬に当たる。



「なっ!?」



 その突然。今まで逆らったことのない部下による平手打ちに驚愕の表情を見せていると、コールが叱責する。



「あなたは誰ですか?」


「え?」


「本物のホルン様は、学院でたいした成績を残せなかった私めにこういってのけました」





「何を落ち込んでいるコール。お前はいずれ6人の皇帝騎士(ナイトオブエンペラー)の側近となる男だぞ」


「申し訳ございません。このような不甲斐ない成績で」


「違う」


「えっ?」


「落ち込んでいる暇があったら。先を見よ。過去を引きずらず、過去を力に変えよ」





「あれほど、強く気高かったお方がなんですか。今の姿は」


「コール。学院にいた頃とは違うんだ」



 そういった。ホルンに対し今度は拳が振るわれる。そして、座っていたホルンだ椅子ごと吹き飛ぶ。



「何が違うと言うのですか。今朝までのあなたはどこに行ったのですか」


「......」


6人の皇帝騎士(ナイトオブエンペラー)となって、見返すのでしょう弟君を」



 コールの言葉にホルンが反応する。



「ガラン」


「そうです。ガラン様を超えるほどに強くなるのでしょう」


「そうか。そうだった。こんなところで立ち止まっていては行けないな」



 ホルンの瞳に生気が戻り立ち上がる。



「すまない。コール。どうやら私は大事なことを忘れていたらしい」


「それでこそ、ホルン様です」






 戦況はキオッジャ伯爵の援軍わずか千人ほどではあったが、壊滅仕掛けていた左翼が体制を立て直しつつあった。


 後方で戦況を見ているキオッジャはオラクル・オーガを閉じ込めた結界を見て副将のハルメスに語りかける。



「成功したか」


「はっ、そのようで」


「ハルメス周囲はどうだ?」


「はっ、左翼周辺には感知できるほどの魔力はありません」


「そうか、ではここを乗り切れば勝ちか」


「あの樹海で何が起きているのかが分かればよかったのですが」



 ハルメスが突如出現した樹海のことについて話していると、



「終わったのか」



 樹海はまるでその存在がはじめから無かったかのように音もなく消えていった。



「勝ったでしょうか?」


「勝ってもらわねば困る」


「キオッジャ様!」



 遊撃隊の勝利を願っていると、ハルメスが声を荒げる。



「どうした?」


「敵です。それも速い!」



 ハルメスがそういった。瞬間、オラクル・オーガを閉じ込めていた結界が砕け散る。



「何が!?」



 ハルメスが驚いていると、キオッジャが前に出る。



守護魔法(シールド)王の盾(キングシールド)



 キオッジャは目の前に大きく、華やかで堅牢な盾を作り出す。そして、次の瞬間キオッジャのもとに衝撃が走る。


 

「こ、これは!」



 ハルメスは盾から顔を出し驚愕する。


 結界のあった位置から、キオッジャが盾で防いだ場所までの大地が、まるで何かに斬られたかのように裂けていた。



「ハルメス。儂が出なくてはならないようだ」



 キオッジャは険しい顔でそう告げた。

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