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転生英雄伝 ~戦乱編~ 過去の英霊の魔法を使って最強の英雄となる  作者: 黒紙 創
第二章 ~遥かなる高みへ~
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第三十八話 ~マルク領防衛戦・蛇神~

 神発暦3512年



「アハッ、負けですって?。笑わせないで。あなたの血を取り込んだ私はすでに」


「私を操れるって言いたいわけ?」



 マーシャの声を魔物が遮ぎった。



「知ってるわよ。あなたのご先祖様たちのお家芸だったんですから。でもね、私の血はただ魔力が混じっただけの血とは違うのよ」


「でも、まだ何ともないわよ?」


「だって、力を使ったら、あなたがどこまで強いのかわからないじゃない?でも、もうそろそろここを切り上げて他にも強い子がいないか探さないといけないの」


≪なにこれ!?≫



 マーシャは魔物との会話をしながら、自身が取り込んだ血から魔物を操作しようとしてしていた時、異変が起きる。

 自身の体が段々と重くなり、体制を維持することが出来なくなり膝をつく。



「な、何をしたの?」



 マーシャは声を出すことすら行き絶え絶えになっていた。そして、目の前の大樹から魔物が姿を現した。



「あなたはとても強かったから自己紹介してあげる。私の名前はエヴァ。ジャヴェスト神殿のダンジョンマスターよ」


「そんな!うそ...でしょ」







 ダンジョンには2つの種類がある。一つは今回雷龍の湖に誕生した魔帝のようにすぐに人類に牙をむき、魔物や魔獣を率いて周囲の地域を支配しようを進行してくる攻勢型と、地下深くに何階層も空間を作り根を張る守勢型がある。


 ジャヴェスト神殿は見た目は完全に神殿の様相をしているが、中には地下深くまで続くダンジョンの入り口がある守勢型である。しかし、問題はそのダンジョンが未だに突破した冒険者がいないことにあった。


 攻勢型のダンジョンは討伐に成功すると、魔物たちは魔力の供給が消え特殊な魔物以外は時間と共に消滅する。そして、後に残るのはダンジョンマスターの根城であるが、攻勢型のダンジョンの場合、その根城はそのまま残り続けるため国家の主要な要塞として再利用されたりする。


 守勢型のダンジョンは討伐に成功しても、地下深くに続くその性質からなのか、ダンジョンマスターを討伐した後も自然と魔物が存在し続け、魔力を帯びた鉱石や水などの物質が手に入り、それは非常に高く売れる物があるため、冒険者たちの稼ぎ場になり続ける。


 中でも冒険者たちがダンジョンに向かう最大の理由はダンジョンマスターを討伐した時に残るコアの存在である。コアを手にした者には世界各国から莫大な報奨金が約束されている。しかし、ほとんどの冒険者たちはその報奨金をもらうことはしない。なぜなら、この世界で3つしかないとされる自身の加護の位を上げることのできるアイテムであるためである。


 話がそれたが、そんな冒険者たちがこぞって突破を目指す守勢型のダンジョンであるが、当然危険度が設定されている。第一等級から第七等級までであるが、ダンジョンはその等級の冒険者であれば突破できるということではなく、その等級の冒険者であれば生きて帰ってこれるであろうという評価が下されたダンジョンである。つまり、等級が設定されているダンジョンはすでに攻略が終わっており、それ以上、危険度が上がることはない。


 しかし、ジャヴェスト神殿のダンジョンは未だ突破者のいないダンジョンであり、人類史が始まってから記述があり、いったいどれほど昔から存在していたのか学者の中でも意見が分かれる。 

 数多の英雄たちが挑んでは帰ってこなかったという記述が溢れている。世界に7つある最古のダンジョンの一つである。






「本当よ。嘘言ってもしょうがないじゃない」


≪誰も見たことのない最古のダンジョンマスターが私の目の前に≫


「あら、いつの間にか。魔力も尽きちゃったのかしら?」


≪いつの間にか意識がハッキリしている?≫



 マーシャの【血祖の魔眼】は未だにマーシャには完全にコントロールすることのできない魔法であり、開眼してしまうと、意識がもう一人の自分といえる存在と混同するため、半覚醒状態でいつも戦っているため敵味方の区別がつかない力でもあった。

 しかし、エヴァと名乗ったダンジョンマスターの未知の力により魔眼の力が消え去ってしまっていたため、意識が完全に戻っていた。



「あなたに聞きたいんだけど、あなたと同じ古の魔力をもってる人間を知らないかしら?」


「知らない...」


「そうなの?あの時感じた魔力はもっと強かったから別にいるはずなんだけど、うーん、姿を隠しているのかしら?あなたを殺せば出てくるかしら?」


「くっ....」


≪私の人生はここまでなの......≫



 エヴァをゆっくりと歩きマーシャに近づく、もうすでに体を動かすことのできないマーシャは最後の時を待つしかなかった。



「エヴァ様。緊急事態です」


≪だれ?≫



 マーシャが自身の最後を待っていると、エヴァの横に突如として霧が出現し執事の服装をした男が現れる。



「どうしたの?私、久しぶりにお仕事中なんだけど?」


「申し訳ございません。勇者どもが再び来まして」


「またぁ?」


「はい。今回は前回の5人組に新たに2人増えてきました」


「はぁ、あいつら殺してもすぐ来るから面倒なのよ、それにお仕事が」


「それでしたら、もう十分なので約束の量はお渡しして頂けるそうです」


「ほんとに! やった」



 マーシャはただ魔物の会話をただ聞くことしかできない。



≪勇者...ノヴォ帝国の?≫


「あなた命拾いしたわね。殺さなくても良くなったみたいよ」


「殺しておいても良いのではないでしょうか?」



 従者と思われる魔物がエヴァに助言をする。



「あら、あなた冷たいのね、ウラド。あなたの子孫よ、この娘」


「エヴァ様、私が一族を捨てて何年たったと思っているのですか?もう未練などありませんよ」


「そうなの?。でもね、生かして置いたほうがきっと面白くなるわよ」


「いつもそれですね。わかりました。おい、そこの娘、幸運に感謝しろ」



 2人の魔物はそういうと霧に消える。それと同時に、魔法の効果が切れたのかマーシャの体は軽くなった。



「はぁ、はぁ、何だったの。あいつら」



 エヴァの作り出した巨大な大樹は魔法によって作られていたらしく、魔素へと変わり消滅していく。しかし、遠くからはまだ戦いの喧騒が聞こえてくる。



「ドナーとウルは?」







 防衛戦のようすを空から見渡している黒い影が話している。


「エヴァ様はダンジョンの守護に戻ったと。心得ました。大丈夫です。ゼストから抜き取った記憶のなかの少年はすでに確認しております。我が君」

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