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8話 職業体験は往々にして職業見学となる

はい、無意味に投稿に間が空いてしまいました。小説自体は大分先までストックしてあるんで、別につまってた訳じゃ無いんですが・・・。さて、今回は短いですね。本当は次の話と連結させようかなぁ、なんて思ったんですが、めんど・・・オホン、諸事情によりそのまま行くことにしました。

おばさんに案内され、僕はみんなのいる第2会議室に着いた。

・・・おばさんは点滴の関係で以後3時間飯を食ってはいけないと言っていたのだが。

みんなは昼飯真っ最中。

ははは・・・なんていうかこうまざまざと見せつけられてるみたいでムカつく。

・・・はぁ、腹減った。

「鳳!」

真っ先に声をかけてきたのは内海だった。

「よぉ内海。はは、あんまり眠いんで仮眠をとって来たぜ。・・・それと俺の目の前で美味しそうに飯食ってんじゃねぇ」

「ちょ・・・お前何言い出してんだ。口調もキレモードになってるぞ?・・・まあそれでも俺は食うけどね」

「そうかい。まあ今のキレは冗談だから気にするな。本当にキレてたら口より先に手が出る」

それを聞いて箸を止めていた班員たちもみんなホッと息をついて食べ出した。

「・・・鳳くん、大丈夫なの?」

同じ班の女子が心配そうに顔をこちらに向けた。

見ると、班員は皆一様に僕を見ている。

「ははは、大丈夫。昨日は合コンでさぁ、ちょっと疲れちゃっただけだから」

「なっ・・・、馬鹿だなぁ。何時に寝たんだ?」

呆れたように内海が聞く。

「えっと、朝5時・・・」

言ったあと、しまった!と思った。

このパターンじゃあ合コン→ホテル→朝帰り→午前5時就寝。が簡単に連想できる。

案の定班員は軽蔑の表情で僕を見ていた。

「ち・・・違う!君らが想像しているようなことは全く無くてだなぁ」

「ああ、ハイハイ」

「ちょっと俺人付き合い考え直すわ」

「私も〜」

「ご・・・誤解だ!大体あんなメンツで僕がどうこうするわけないだろう」

「あんなメンツねぇ・・・」

「ほ、本当だって!僕は途中で帰った!嘘だと思うなら西岡に聞いてくれ!」

「怪しいな、西岡もグルなんじゃないの?」

クソ、みんなしてしつこいぞ!

「違う!僕は潔白だ。みんな信じてくれよぉ、うっうっ・・・」

僕は涙を流して訴えた。

「な、泣くなよ!信じるからさぁ!」

ふ、泣き落とし成功。

僕は内心ほくそ笑みながら演技を続けた。

「本当?本当に信じ・・・」


カシャッ


し・・・しまったぁ!

その時僕の手からあるものがこぼれ落ちた。

うっ・・・みんなの視線が痛い・・・。

「・・・・・・鳳くぅん、・・・何かなぁこれは?」

内海がみんなを代表して優し〜く聞いた。

「な・・・なんだろう」

「目薬、だよねぇ?これ。」

「・・・う」

「嘘泣きだったんだね?」

「・・・す・・・すみませんでした」

「で?どこまでやったんだ?あぁ?」

班員の男子が迫る。

「だから・・・何もやってませんって」

「じゃあなんで帰りが遅かった!?」

「なんていうか・・・その・・・」

正直に言ったら美咲さんがどうこう悪く言われるのではないかと考えた僕は躊躇った。あんだけ迷惑は被ったが、僕は美咲さんには好感を持っていたので、(あくまで好感だ。好意ではない!)一応庇っておこうと思ったのだ。

「まあ・・・酔っ払いに絡まれてお酌してた」

「ハア!?」

全員驚いたようだ。

・・・まあ嘘はついていない。確かに酔っ払いに絡まれてお酌してた。

「いや意味わかんねーよ。どうやったらそんなシチュエーションになる?」

「酔っ払いに絡まれて、兄ちゃん奢ってやるから付き合えよって言われて飯奢ってもらったけどお酌させられた」

「本当かよオイ・・・」

「んー、ずっと職場の愚痴を聞かされ続けたよ。それも延々1時間半」

「・・・大変だったなぁ」

内海はあの時のコンビニの兄さんと同じく、心から同情する眼差しを送ってきた。

「分かってくれるか・・・内海」

「ああ分かるさ同志よ。俺もよく親父の愚痴に付き合わされる。・・・お酌しながら」

「一昔前の日本の奥さんか!?」

班員からツッコミが入ったが気にせず、僕らは分かり合えたことを喜ぶようにガシッと握手をした。


ガチャッ


その時、白衣を着た男性が入ってきた。

歳は30前後。

蛇のように油断なく光っているその細い目は、些細な変化も見逃さない研究者特有のものだった。

その瞳が僕を捉える。

「やあ君が鳳くんか?」

「あ、はい。・・・ご迷惑かけてすみません」

思いの外優しそうな声だった。

さあ真面目モード。

僕は内海と手を離してペコリと頭を下げた。

男性は僕の顔を見つめた。

「顔色がよくないな。体調が良くないなら休んでいてもいいんだぞ?」

「あ・・・はい、大丈夫です」

「そうかい?無理はするなよ。・・・あ、申し遅れたが私は石山。今回の体験の責任者だ。案内や説明は私がするから分からないことがあったら聞くといい」

「はい。よろしくお願いします」

僕はもう一度石山さんに頭を下げた。

「こちらこそ」

石山さんはにっこり微笑んだ。

みんなの方へ向き直る。

「午前は雑用業務お疲れ様でした。さて、最後にメインオフィスと第1研究室の見学、そこでお待ちかねのDNA鑑定体験をやっていただき、今日の体験は終了です」

石山さんは手早く予定を説明した。

「さて、メインオフィスに行きましょうか」

石山さんを先頭に歩き出した。

似たような扉がある長い廊下をスイスイ進み、迷うことなくひとつの扉の前にたった。

「ここです」

石山さんがドアを開け、ぞろぞろと入っていく。

オフィスは仕事中ということもあってか、非常に静かだった。

・・・というか、オフィスは広々としているのに人が少ない。

壁の一面はガラス張りになっており、研究室の様子が見れるようになっている。なるほど、研究室内はそれなりに人がいた。

「はい、ここがメインオフィスです」

「・・・なんというか、人が少ないですね」

男子班員がポツリと言った。

「ははは、確かに少ないですね。実はメインオフィスといっても名ばかりのもので、日常、研究員がオフィスに居ることは少ないです。・・・ああ、でも電話の受け答えのために常時1人はいないとまずいですが」

「普段は研究員の方は何処にいるんですか?」

「普段といっても人によって様々なんですが・・・まあやはり研究員なので研究室や実験室。あとは2階の仮眠室、休憩室ですかね。テレビは上にしかないんで、みんなよくサボってテレビ見に行ってます」

僕は眠くてあくびが出そうになったが、真面目に聞いてないと思われるのも嫌なのでなんとか噛み殺した。

「ちょっと石山ぁ。あんまり変なこと吹き込まないでくれるかなぁ。俺は常に真面目に日々頑張ってるんだけど」

オフィス内から揶揄が入った。

「彼は同期の佐々井です。休憩室テレビ視聴時間の長さで、彼の右に出るものはいません」

「ちょ・・・ちょっとぉ!何ばらしちゃってんのぉ!?・・・あ、君ら!今の嘘!嘘だから!」

佐々井さんは慌てて取り繕う。

しかしもうばらしちゃって云々って言っちゃってるし。

僕たちは吹き出してしまった。

「さあ、馬鹿は置いといて実験室にいってみましょうか。」

「おぅい!待てやコラ」

佐々井さんは石山さんに突っかかってったがあっさり無視された。なんかちょっと可哀想。

僕は佐々井さんに軽く会釈して、みんなの後を追った。ふわあぁ・・・

大きなあくびが出た。

・・・こんなことでは先が思いやられる・・・。

ふ・・・ふわあああぁ・・・。

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