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27話 VSヤクザのこわいひとたち その3

「ヒャハハハハハハ!」

車内に笑い声が響いていた。

「まったく、一時はどうなることかと思いましたけどね」

「だな。ヒャハハ」

拐った女の子はみぞおちに一発入れて寝かしてある。運転席の男は上機嫌に笑った。

「ったく、あんなガキどもにやられるなんざ須川さんもヤキが回ったもんだなぁオイ」

「まったくですね。今はあなたの時代ですよ。なんていっても蓮武会のために長きに渡ってスパイ活動したわけですから」

運転席と助手席で愉しげに会話が交わされる。

「・・・」

運転席の男が後部座席の男を見た。

「おい、てめえさっきから黙りこくってどうした!?あぁ?」

「・・・マズイんじゃねえですか?検問でも張られたら・・・」

「バァカそんときゃそん時だ。それに奴らのパトカーはしっかりタイヤ撃ち抜いといた。足止めにゃなるだろう」

「いよっ!さすがですねぇダンナぁ」

「ヒャハハ。分かったらお前は国外逃亡の手配でもしとけ」

「で・・・でも、どうすれば・・・」

「んなもん自分で考えろっ!」

「わ・・・分かりました。行ってきます」

「車は人目につかないところに移しとく。追って連絡するから携帯はちゃんと見とけ。いいな」

「は・・・はい」

男が1人、車から降り、暗闇へと駆けていった。

「さぁて。帰ってくるのはいつになるかな」

「さぁ・・・あいつどんくさいですからねぇ」

「ヒャハハ、じゃあ暇潰しにおたのしみといくか」

「おたのしみ?」

「ああ、拐った女は運のいいことに相当な上玉だからなぁ。ヒャハハ!」

「そいつはいいッスねぇ!あははは!・・・ん?」

上機嫌に笑っていた2人は、妙な気配に外を見た。
















「ったくホント使えねーなあんた」

グサ。

金髪の言葉が胸に突き刺さる。

「・・・ゴメンナサイ」

「ごめんで済んだら警察は要らねーっての!って、あんた警察か。ハハ」

うぅ・・・。

言い返せない・・・。

「今はそんなこと言ってる場合じゃないだろ」

あの俺のアイコンタクトに気付いてくれた少年がたしなめた。

「今は大川内さんを助けることだけ考えないと・・・早紀」

「・・・ん?」

さっきまで捕らわれていた少女が顔を上げた。

責任を感じているのか、活発そうなその顔に元気はない。

「大丈夫か?今からでもタクシー呼んで家まで送ってもらおうか?」

「・・・ううん。私も碧ちゃんを助けたい」

「そっか」

「・・・ありがとう、お兄ちゃん」

少年は、お兄ちゃんという言葉にちょっと目を見開き、ニコリと笑った。

「いえいえ。可愛い妹分のためですので」

「・・・もう」

少女は少し笑った。

その笑みに少し寂しげなものが混じっていたように見えたのは俺の気のせいだろうか。

「さあ、ナンバーは覚えました。警察に連絡して検問張るなりしてもらいましょう。お巡りさんもヘコンでる場合じゃありませんよ!」

「お、おう」

高校生に仕切られる警官。うう、不甲斐ない。

ともかく神流は地元の警察署に電話をかけた。



「――というわけで検問を張って欲しいんスよ」

「あ?検問?」

電話越しの声が不機嫌なものになる。かなりドスのきいた声だ。

「そッス。あの、急いでくれませんかね。言った通り、女の子がさらわれてるんスよ」

「馬鹿言ってんじゃねえ!お前東京の巡査っつったな。なんで東京の巡査が名古屋にいんだよ」

「それは・・・」

言えなかった。今回の行動は井原さんが上からの指示が出る前に動くために行った秘密裏行動だったからだ。

「言えねえのか!ハッ!どこのイタズラだか知らねえが、大概にしとけよ!」

くそ・・・。

「貸して」

会話が聞こえていたのか、パトカーで何度も舌を噛んでいたお調子者っぽい少年が手を差し出した。

「え?い・・・いや」

「いいから」

少年は電話をひったくった。

「あっ」

「あーオホン」

「・・・!?」

神流は口をポカンと開けた。

ちょっとハスキー気味だった少年の声が、威厳ある男性のそれに変わっていたからである。

「あぁ?なんだおめー」

「私は本庁警視の森田だ!どうやら上司との口の聞き方を知らないようだな」

「ほ、本庁警視?」

電話越しの声が裏返った。電話の向こうが慌ただしくなり、西岡は忍び笑いした。

「あ、あの、申し訳」

「それはいい!早く検問を張らないか!」

「はっはい!」

西岡は敦司から聞いたナンバーを伝え、怒ったように電話を叩ききった。

「な、な、な、な、な」

神流は目の前の少年がやってのけたことに驚きを隠せない。

「・・・これは西岡の得意技なんです。色んな声を出せるっていう」

「ケッ。大した芸だな」

「・・・すごい」

他の2人も多様に驚いている。

「これで検問は問題ナッシング!さ、俺らも追いかけようぜ」

「お、おお!さ、乗った乗った」

神流は車のエンジンをかけ、アクセルを踏んだ。


ギュルギュルギュルギュルッ!


「あ、あれ?動かない・・・」

「お巡りさん!やられました!」

「あ、俺神流ね。で、どうしたって?」

「あ、鳳敦司です。・・・て、それよか!パンクさせられてます!タイヤ!」

「ナニぃ!?」

神流は敦司の指差す方を見た。

「ああ・・・俺のミニパト・・・」

神流は崩れ落ちた。

「でも困りましたね。どうしましょう、これから」

敦司が皆を見渡した。

「よし、なら俺らの車に乗るといい」

「・・・!?」

いつの間にか見知らぬ男が1人、輪に加わっていた。








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