27話 VSヤクザのこわいひとたち その1
この辺は・・多分3ヶ月くらい前に書いたやつです。12、1とほとんど何も書いてなかったのでストックももうあまりありません。が。なんかこの辺今と比べてもちょっと前と比べても執筆能力落ちてるような・・。まああの頃は忙しかったし(自己弁護)また書き直すとなるとめんどくさ・・なんか前みたいに修正してるうちに話が違う方向へ向かってったりしそうなんでやめときます。ちなみに今も当初の話の予定とは大きく離れてます。それがいいか悪いかは別として、そうなると今のストック全部ポイですからねぇ・・。それは・・ねぇ(結局めんどくさい)
「もう車なんか見えないよ・・・」
碧がつぶやいた。
碧、西岡、村上の3人は裏路地を抜け出し、広い表通りを走っていた。
車が走り去ってからはもう時間が経っていた。
見えないのは当たり前だった。
「諦めるなッ!諦めたらそこで試合終了!」
「なんの試合だよ」
村上が苛立たしげにつっこむ。
「あんたねぇ、せっかくみんなの暗いムードを盛り上げようとギャグ言ったんだから、無粋なツッコミしちゃいけません!メッ!」
「チッ・・・ま、この国道はしばらく一本道だからな・・・でも急がねーと見失う。タクシーでも来ねえかな」
車通りは多かった。
「タクシーねぇ。お?いやあれだ!あれ使おう!」
西岡が指した方向には、ミニパトが走ってきていた。
ついてない。
神流優はつくづくそう思った。
いきなり呼び出され・・・いや、それはよかった。他ならぬ井原さんのお呼びだし、行かないわけにはいかない。
問題はそのあとだ。
合コンも控えていたのでさっさと帰ろうと思ったらオッサン刑事にパトカーで速度違反とは何事かっ!と言われ、うっかりパトカーなんだからいいでしょう!と言い返したらもう説教の雨あられ。
遅れるからと急いでったら奴ら、もうすでに二次会行ったらしく、会場には誰もいない。
電話も出ない。
ムカついたから飛ばそうと思ったらまた井原さんから電話。
事情はよく分からないが秘密裏に動いて欲しいらしく、先の突入で逮捕した男の1人が名古屋にある組の男に指示されてやった、と口を割ったため、そいつを任意同行して欲しいとのことだった。
井原さんの頼みを断るわけにもいかず、俺は東名を140キロで走り抜け、こうして名古屋に辿り着いたわけだが・・・。
はぁ・・・。
なんか疲れた。
職務怠慢というわけではないが、日々の交番勤務はこれほどハードではない。
さらに、さっきまで続いてた渋滞が神流のストレスを高めていた。
ようやく渋滞は少し解消されてきたようだがまだ進みは遅い。
走り屋神流にとって渋滞は唾棄すべきものだった。
これが終わったら久しぶりに峠でも行ってみるかな・・・。
「ってぬぅお!」
神流は慌ててブレーキを踏んだ。
前に高校生ぐらいのが3人、車の前に立ちはだかっていた。
「な、なんだなんだお前ら」
神流は窓から首を出す。
「お巡りさんお願いします!車を追ってください。友達が連れ去られてしまったんです」
女の子が言うと、後の2人もウンウンと頷く。
「え。――っていってもなぁ・・・」
こういうのは報告しないと後々・・・。
しかも自分には任務が・・・。
パーッ!
クラクションが鳴り響く。神流は慌てて車を端に寄せた。
「早くしろよポリ公!一刻の猶予もないんだ!」
金髪のガラ悪そうなのが怒鳴る。
ムカ。
だがまあしょうがないか。彼らの表情はとても嘘をついてるようには見えないし。
「・・・わかったよ!乗れ!」
3人はミニパトにぞろぞろと乗り込む。
「こっち行ったんだな?」神流は助手席に乗り込んだ女の子に聞いた。
「そうです。急いでください!」
「急いで・・・?」
神流は笑った。
急いで、ね。わかったよ。急いでやろう。
「舌噛むなよ!」
ギュルルルルルッ!
こっそり違法改造した神流のミニパトが唸る。
「う、うわぁ!」
「きゃあっ」
「や・・・やべ・・・ひ、ひた噛んだ・・・」
三者三様の反応を楽しみつつ、神流のミニパトは車の間を縫って走っていった。時速は100キロを越えた。誘拐したという被疑者の追跡という大義名分があれば公道速度違反だってなんのその。
神流は飛ばしたいというフラストレーションが解消されたことに満足し、鼻歌混じりにパトカーを飛ばした。
「・・・んんぉっ!あれは!」
悲鳴をあげつつ西岡が叫ぶ。
目前で、お目当ての車ともう一台がアクション映画顔負けのカーチェイスをしている。
ヒュウ、と神流は口笛を吹いた。
「やっこさん、ずいぶん派手にやってるじゃねえの。・・・でもあの車って・・・」
その時、派手にぶつかってた一方が脇道にそれた。
「っとぉ!」
ハンドルを切る。パトカーは火花を散らしながらカーブした。
「きゃあああっ!」
「ガチッ!また舌噛んだぁ!」
「見えた!もう少しだポリ公!」
言われんでも分かってるっての!
車は目前・・・
「えぇっ!?」
神流たちは目の前の光景にあんぐり口を開けたのだった。
風がビュンビュンと全身に伝わってくる。
夢中だった。
僕の頭の中にはあの誓いしかない。
また僕は早紀を守れないのか・・・。
そう考えた時、僕の体は勝手に動いていたんだ。
しかし・・・うん。
いささか後悔してなくもない。
ちょっと無鉄砲過ぎたんじゃないかなぁ、とか思う。うん。
僕は今屋根の上だ。
どこのって?そりゃもちろん怖い人たちの車の屋根さ。
必死で屋根に掴まったはいいものの、これからどうすりゃいいのか。
ちょっと気を抜いたら車から投げ飛ばされ、よくて大怪我、悪けりゃお陀仏。
ヤクザの車の屋根にしがみつき、片手には眼鏡からもらったピストル。
はたかりゃ見ればアクション映画の撮影としか思われない状況だ。
しかし、現実は甘くなかった。
「・・・くっ」
風圧も凄まじく、僕の手はもう痺れが出ていた。
「あ・・・ヤバい・・・落ちる」
落ちるは受験生の禁句だ。絶対言わないと誓ったのに、まさかこんな所で言ってしまうとは。
「・・・って、うわっ」
車が蛇行を始めた。どうやらへばりついた僕の存在に気付いたらしかった。
て当然だ。僕の体はずり落ちて、多分やつらのバックミラー一杯に僕が写ってるだろう。
パァンッ!
「どわあっ!」
う・・・撃ってきた?
ヤバい!ヤバいヤバい死ぬ死ぬ死ぬ!
僕はうんしょうんしょと屋根をよじ登った。
「ふう・・・手え痺れてたけど案外行けたな。火事場の馬鹿力って奴か」
僕はホッと一息・・・
キイイィィィィッ!
突然の急ブレーキ。
車と一緒に前に進んでた僕の体は、それに耐えられるはずもなく、ポォンと宙に投げ出されていた。
ドゴッ!
「うぐぅ・・・ッ」
遥か前方に投げ飛ばされた僕は、フラフラと立ち上がった。
咄嗟に受け身をとったので頭こそ打ってないが、いろんな所を擦りむいたようだ。
落としてしまった拳銃を拾う。と。
予想だにしないことが起こった。
パトカーだ。パトカーがすごい勢いで走ってきて、僕と車の間にギギャギャギャッ!と耳障りな音を立てて停止した。
そしてさらに驚いた。
「敦司!」
「敦司くん!」
なんとパトカーから出てきたのは西岡と大川内さん。状況が全く掴めない。
「え・・・え?なんでお前らここに・・・?」
「んなことより敦司!大丈夫かお前!」
「っ・・・ああ、問題ない」
「あ、敦司くん、それ・・・」
大川内さんが指したのは僕の右手がしっかりと握った拳銃だ。
「ああ・・・これ・・・。もらったんだ。ハハ」
「もらったって・・・」
「さ、話は後だ。早紀を助ける」
「おうっ!」
「大川内さんは・・・そうだ!あそこで待ってて」
僕は近くの草陰を指差した。
「う、うん」
僕は拳銃をポケットに入れると、大川内さんに軽く手を振り、パトカーの向こう側へと歩いていった。