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25話 ジョーカー争奪戦その3

人物紹介 No.011 ハーゲン 自称死神。外見は若い男。黙っていればかっこいいのだが、その奇抜な行動と独特のしゃべりで、他人からは引かれるのが通常。いつもは漆黒のタキシードで決めており、薄手の手袋を忘れない。彼なりのファッションなのだろうか。その他、詳細は不明。ちなみに言うと、死神はみんな変人な訳ではない。彼が個人的に変なだけ。作者としては、もっと使ってみたい存在。作者が彼をもっと取り上げた外伝的な話をつくるという噂もある。

ところ変わって名古屋街中。

1人の若者が商店街を駆けずり回っていた。

彼の名前は村上駿(むらかみしゅん)。地元の三流高校の3年生だ。

彼こそが、チーム野沢、敦司がありきたりの落書きに笑った地元不良高校生のチームの頭だ。

当然受験勉強に励んだりなんかはしない。野沢組就職を目指して一直線である。さて、彼、本来ならば今ごろは仲間と楽しくカラオケやっていたはずだった。

仲間を引き連れ、カラオケ店にさあ入ろうとしたとき、彼の携帯が鳴った。

柴咲からの指令だった。

「ディスクを探せ。ディスクは岡崎か蓮武会のやつらが持っている」

野沢組No.2の柴咲からの指令だ。チーム野沢として無視するわけにはいかない。岡崎という男が野沢組から寝返り、なにやらスゴいディスクが盗まれたということは村上も聞いていた。

っていっても。村上は思う。

ディスクを持ったやつを見つけたとしても、俺らに何ができるんだろう。

取り返そうと襲いかかっても、あっさり返り討ちがオチだ。

野沢組には入りたいが死ぬのは嫌だ。

村上はディスクが見つからないことを祈った。

商店街を抜けるとショッピングモールに着いた。

「あーあ、疲れたぁ。・・・ちょっと一服」

村上は手近の喫茶店に入ろうと足を進めた。

ここのコーヒーは割と美味い。サボるには最適。

「何?それ」

「分かんないけど・・・何も書いてない」

「ん?」

振り向いた。

そこには村上と同じくらいの歳の、かわいい二人組の女の子がCDを持って話している姿があった。

「み、見つけたぁ!」

村上は驚き半分、喜び半分の思いで叫んだ。

女の子たちはいきなり金髪の村上が叫んだのを見て面食らったようだが、そんなことは村上にはどうでもよかった。

よっしゃあ!ついてる!なんか知らんがあいつらCD落としたらしいな。とんだオマヌケだ。

「なに?アンタ」彼女らがまさか蓮武会の人間ってことはないだろう。一般人がディスクを拾ってるなんざ俺はなんてついてんだろう。

女の子のうちの、ショートカットのスポーティーな方がズイと前に立ちはだかった。

「よかった・・・それだよそれ。そのディスク。それ探してたんだ」

手早く、ショッピングモール付近にディスクが落ちてて、それを拾った女の子からディスクを受けとる旨を柴咲にメールで送った。

村上のメール打ち速度はとんでもない。普通の人がやったら指が十秒でつるぐらいの速さである。

「あんたのなの?コレ」「そう!いやぁ良かった。助かった――」

「嘘はいけねぇな、ボウヤ」

「っ!」

いきなり背後から冷たい声が聞こえたかと思うと後頭部に衝撃を受けた。

「――!?」

「キャーッ!」

頭がグワングワン鐘を鳴らすように響いている。

「さあ、それは俺達のものだ。お嬢ちゃんたち、渡してもらおうか」

ジリ・・・

男が一歩前に出、女の子たちが下がる。

「テメエ、須川・・・・!」

「ほお、ボウヤ、オジサンを知っていたのかい?」

「ふ・・・ふざけるな!それは俺達のものだ!」

須川はフッ、と笑った。

「粋がるな。ガキが」

パチンと指を鳴らす。

後ろに控えていたチンピラ・・・20人はいる。が、前に出てきた。

「あ、兄貴・・・」

「すみません、兄貴」

「タツ!リョウ!」

そのチンピラに腕を抑えられ、ぼこぼこにされた顔で同じ高校の2年の弟分、タツとリョウが前に引きずり出された。

「てめぇら・・・!」

「来い・・・お嬢ちゃんたちもだ」

「待て!関係ないだろあの子たちは!」

須川は笑い出した。

「何がおかしい!」

「おかしいさボウヤ。ディスクを持っておいて無関係とはいかないだろう。俺にとっては、お前の方が関係ない。さっさとお帰り願いたいのだがね」

「く・・・っ!」

須川は裏通りの方へと進んでいく。

「待てっ!」

追おうとした村上の前にチンピラたちが立ちふさがった。

「チッ!」

舌打ちしながらファイティングポーズをとった村上に、1人の男が歩み出た。

「よお村上、久しぶりだな」

「お、お前は!」

かつて村上に喧嘩で鼻を折られた先輩。名前は・・・森だったか。

「ヒャハハハッ!巡り合わせってのは面白いなぁ村上!この鼻の礼を、できる日が来るなんてなぁ!」

森は、整形で不自然に大きくなった鼻を指して言った。

「あ、それ自前だったの?てっきりパーティー用の付け鼻かと思ってたぜ」

「んだとぉ!?」

「いやあ、しっかしでっかい鼻だな。それじゃその鼻輪もずいぶんとビッグサイズになるだろ・・・や、失礼、そりゃ鼻ピアスか」

「ぶっ殺す!」

森が走り出したのを合図に、全員がドタバタ走ってくる。

村上はニヤリと笑うとくるりと後ろを向いて走り出した。

「待ちやがれ!」

村上は中学時代は陸上部で鳴らしていた。ブランクはあるとはいえ、タバコやドラッグでボロボロの体の連中に追い付けるはずはなかった。

対して、村上は手加減しながら走る。距離が空きすぎてもいけない。追いかけるのを諦めたやつらが、さっきの女の子たちに何をするか。察するに難くない。

村上とチンピラたちは一定の距離を保ったまま裏通りを走り続けた。

一瞬、表通りを走り、そのまま交番に駆け込むということも考えたが打ち消した。

それでもやはり、報復として女の子たちに危害が及ぶかもしれないからだ。

村上はチンピラ20人を全員引き付けておく必要があったのだ。

曲がり角を曲がる。その場でヒラリと店の敷地内に入り込んだ。

1人目が気付かずに通りすぎる。

2人目・・・。

3人目・・・。

10人目が通り過ぎようとしたとき、村上は通りに躍り出た。

いきなり出てきた村上に目を見開かせた時には、村上の拳がすでにみぞおちに決まっていた。

前方では9人目の姿が遠くなっていく。

もう走るのに精一杯のようだ。その時11人目が曲がり角を曲がってきた。

森だった。

さすがにタバコやクスリでイカれた体じゃあこのマラソンは厳しかったらしい。村上はフンと鼻を鳴らした。

森の前に躍り出た。

森はたたずを踏んで立ち止まる。

驚愕の表情の森にニッコリと微笑みを送り。

村上の拳が唸った。






あとはもうベルトコンベアで作業しているようなものだった。

待つ。敵が来る。殴る。待つ。

ずっと走ってきたチンピラに、もう村上と戦える体力が残っているはずもなく。ただ倒されるのを待つのみだった。

ちなみにこの作戦は村上が考えたものではない。

野沢組長直々に、足の早い村上専用対多人数戦対処法として、教えられたものである。野沢組は戦闘訓練として、組長や組長から戦闘技を叩き込まれた柴咲などから軍隊戦闘法を修練している。それはその一環である。

さすが多国籍部隊のエース、と村上は感激・・・したいところだったが、野沢はそれをエロ雑誌読みながら言っていたので、本当に大丈夫か?コレ。と、不安に思っていた。

まったくの無傷で11人を片付けた村上はもといた裏通りへと向かう。

村上にとって、この裏通りは庭のようなものだ。

最短ルートで走る。

全てはディスクを取り戻すため。

あとは奴をぶちのめすだけだった。













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