25話 ジョーカー争奪戦その1
人物紹介 No.010 永森 俊一(兄) 警視庁捜査一課24班の巡査部長。昨年、巡査長から昇進するとともに本庁配属となった。弟を大切にしており、周囲からブラコンと冷やかされる。捜査の腕はまだ未熟だが、矢嶋や美咲と一緒に捜査することでだんだんと成長している。 さて、まあた更新遅れましたねぇ、あっはっは(反省の色なし)いやごめんなさい。では本編をどーぞ
「じゃあ、皆さんどうもお世話になりました」
僕は家捜しに協力してくれた幽霊の皆さんに頭を下げていた。
「もう行っちゃうの?」
少女がぴょこんと前に出て尋ねた。
「ああ、もう夜だしね。僕も、あまり長居はできない」
「寂しいなぁ」
嬉しいこと言ってくれる。少女を見ると、本当に悲しそうだった。
変化のない病院に15年閉じ込められる。そんな人の気持ちが僕に分かるはずもないが、想像するのもはばかられるほど辛かったのだと思う。
僕の調査に嬉々として協力したのもそのためだろう。僕は、不意にこの目の前の少女が不憫になっていった。
「・・・どうしたの?」
「いや、別に」
少女が笑顔になる。
「また、遊びに来てくれる?」
「アハハ、二度とごめんだね」
笑顔が凍りついた。
「あの悪霊がいる限りは僕の生命が危うい。んなところに来れるかっての」
「もう・・・それはそうかもしれないけど、もっと言い方ってもんが・・・女心が分かってないなぁ」
「ま、なんだ」
ポリポリとあごを掻く。
「不本意にもハーゲンの手伝いすることになっちゃったからな・・・。また来るよ。そして僕が次来る時は君らを成仏させる時だ。僕が、君らを苦しめてきた呪縛から絶対に解放させてやる」
僕は少女を見据える。
少女も僕を見つめる。
そのまま数秒。
「約束・・・してくれる?」
「ああ。絶対。約束は守るためにあるんだよ?」
僕は少女に笑ってみせる。不安げな表情を浮かべていた少女も、やがて笑顔を取り戻した。
「じゃ、約束」
少女が片手を差し伸べた。僕はそれを握る。
「指切りげんまんじゃないんだ」
「あのね。20過ぎたレディが指切りもないって」
「ませたガキだ」
「なんですって?」
手を握る力が強くなる。
痛い。
「ったくこのゴリラ女」
「え?・・・ごめんもう一回・・・言ってくれる・・・ッ?」
「あーッ!痛い痛い痛いっての!」
僕はあわてて手を振りほどいた。
ったく。もう少しで指の骨がバラッバラになるところだった。
「・・・じゃ」
「みんなで・・・待ってるからね」
僕は笑って手を振った。
僕は彼女たちを少しでも安心させることができただろうか?
ゆっくりと背を向ける。
ふわり。
暖かい風が僕の前髪をかきあげた。
チャラッチャラッチャラッチャラッ♪
マナーモードを解除しておいた僕の携帯が間抜けな音楽を響かせた。
せっかくかっこいい場面だったのに、クソッ!
僕は携帯を睨み付けたが、携帯は素知らぬ顔で音を出し続ける。
やむなく僕は携帯をとった。
西岡だ。
「・・・あぁ?」
僕の声は不機嫌になる。
「あ、あれ?敦司くんご機嫌ななめ?」
「何の用だ」
「ちょっ、その喧嘩腰やめようぜ?」
「何の用だって」
「ああ、そうそう!大変だよ!すぐに駅前通りの先にあるショッピングモールに行け!」
あわてているのは分かるがいまいち要領を得ない。
「・・・なんで?」
「ミドリちゃんと早紀ちゃんが大変らしい!さっきミドリちゃんから電話があった!」
・・・こいついつの間に大川内さんの番号を?抜け目ないやつだな。
と、そんなことより。
「大変ってどういうことだ!」
「わかんねーよ!俺は今から向かうとこだ!お前も急いでくれ!」
「ああ!」
電話が切れた。
・・・ったく、一難去ってまた一難。
ため息をつくと、僕は駆け出した。
――数十分前。駅前通りショッピングモール――
「あーあ!すっかり遅くなっちゃったね!」
早紀が碧の前で大きく伸びをした。
肩には大量の荷物。
「うん、楽しかったね。でも・・・」
碧は少し困り顔だ。
「帰るの遅くなっちゃうなぁ」
辺りはすでに夜。
明日学校がある碧には帰る時間だけが気がかりだった。
「アハハ、大丈夫だよ。うちの馬鹿もまだ帰ってないだろうし」
「そうなの?」
「うん。きっとあの西岡っていうのとどっかほっつき歩いてるよ」
「そっか・・・。あ、それにいざとなったら新幹線で帰ればいいのか」
「そーだよ。アハハ」
ふと、足下にあるものを踏んづけた。
「ん?」
碧が手にとってみると、それはケースに入ったCD-ROMだった。
踏んだせいでケースにヒビが入ってしまったが、中は無事のようだ。
「何?それ」
「分かんないけど・・・何も書いてない」
碧はそれを拾い上げ、調べてみた。
「音楽?誰かの落とし物かな」
「交番、行こうか」
駅のすぐ近くには交番がある。
碧はそこに行こうと歩き出した。
「・・・!」
「・・・!」
よく聞き取れないが、言い争うような声が聞こえてきた。
「ケンカ?」
「気にしない方がいいよ。交番行こ?」
早紀が碧を引き止める。
「でも・・・」
「み、見つけたぁ!」
突然大声がする。
驚いて振り向いた2人の視線の先に立っていたのは金髪の若い男だった。
歳は、碧たちと同じくらいだろうか。
サッと男の前に早紀が立ち塞がる。
「なに?アンタ」
「よかった・・・それだよそれ。そのディスク。それ探してたんだ」