24話 病院探索!27歳の少女と自称死神! その5
ああ、話がオカルトで変な方向に・・・。この話のあとしばらく真面目な展開続きますからね。コメディで通すのが厳しくなってきた今日この頃です。その他、に変えようかなぁ、ジャンル・・・
少女の指差す先に・・・頭があった。
換気用窓に頭を挟まれジタバタしている。
顔がグリンとこっちを見た。
「――ちょっと!気付いてるなら助けてくれたまえよ君ぃ!ふぬぅ・・・抜けない」
「この変なの、誰?」
僕は尋ねながらその顔を引っ張る。
「変なのとはしつれ・・・あー!いたい痛い痛い痛いッ!」
引いてダメなら押してみる。
顔はあっさり抜け、ドスン!と外から何かが落ちた音がした。
「いっつぅ・・・痛いじゃないか君ぃ!気をつけたまえ!」
怒鳴り声が外から聞こえる。
「助けてやったんだから礼の1つでもいいなさいな。つかこんなとこから入ってくんな」
「そうですよぉ。正面から入って下さい」
しばらく何やらぶつぶつ言っていたようだがすぐに聞こえなくなった。
ちゃんと回りこんでいったようだ。
「――で、あの変なの、何?」
「えっと――」
「聞いて驚けい!人間よ!」
騒々しくドアを開けてさっきのやつが入ってきた。
初めて全身を見たが、背の高い顔も整った若い男だ。ダークスーツに身を包んでいる。
せっかくモテそうなのに、その変なしゃべり方のせいで台無しといったところだろう。
「早いな。どうでもいいが。てか人間よってなんだ。あんたヒト科じゃねーのか」
「我は全知全能なる死神だぁ!崇め奉るがいい!」
「・・・あの、この人、コレ?」
頭を指差し、クルクルパーしてみせる。
「私はクルクルパーなどではないぞ君ぃ!」
「えっと、ホントに死神。ハーゲンさん」
「ハーゲン?」
「そうさぁ!全知全能死神ハーゲン様さぁ!」
こいつに様どころか、さん、いや君すらつける気にはなれない。
「で、そのハーゲンがこの廃れた病院に何の用だ」
ハーゲンは顎に手をやった。
「うむ・・・調査といったところだろうか」
「調査?」
「うむ。ここに渦巻く磁場の根源をな。死神の仕事の1つは成仏できなかった魂を成仏させることだ」
「あ、じゃあ」
「そ、ハーゲンさんはあたし達を成仏させるために来てるの」
「ん?でも――」
記憶を探る。
「確か君が死んでから――15年だったよね。ってことは――」
チラとハーゲンの方を見た。
ハーゲンは慌て出す。
「わ、私は多忙なのだよ!君ぃ!だいたい、この件は根が深くていくら私でもなかなか・・・」
「さっき全知全能って言ってたくせに」
「うるさいよ!?君ぃ!私だってこの磁場は院長たちの負の感情が起こしたものとして、その原因を探ってるのだ!」
え。
「ま、待って。それは、院長の身の周りを?」
「うむ」
逸る心を抑える。
「じ、じゃあ院長の家族やスタッフの連絡先なんかは・・・」
「連絡先?住んでる場所なら分かるぞ」
「ハーゲン様!」
僕は180℃の角度で頭を下げた。
「教えて下さい!連絡先を!」
「おお、ようやく君にも私の威光が分かったか」
「はい!お願いします!是非とも!」
ハーゲンは満足気に頷いている。
「うむうむ。無知は罪ではないぞ」
「お兄ちゃん、プライドってもんがないの?」
「うるさい。男にはプライドより大事なものがあるんだ」
「おい、書くもの」
僕はペンとメモ帳を差し出す。
ハーゲンは達筆な日本語(上手い。ムカつく)でサラサラとペンを走らせ、僕に手渡した。
「当時の副院長――院長の弟の住所だ」
「ありがとうございますッ!」
やった。なんか思わぬところから収穫だ。
そうと決まったらこんなところに用はない。
「おっと、待った。その代わりに頼みがあるのだよ君ぃ」
ガシッ
ハーゲンに肩を掴まれた。逃げようと思ったのに。
「はい?」
僕は笑顔を引きつらせ尋ねた。
「ついでに病院封鎖の裏についても聞いといてくれたまえ。あの院長が成仏できないのも、この磁場も、おそらくはそれが原因だろうからねぇ」
「それはハーゲンさんの仕事・・・」
「まぁさぁかぁ?タダで情報を得ようなんてムシのいぃぃこと考えてたわけじゃ、ないよねぇ?」
考えてたが何か。
「まったく・・・めんどくさいからって」
「私は・・・そう。忙しいのだよ君ぃ!」
さっきも同じこといったぞ。
僕はため息をついた。
どうやらうんと言わないとこの死神さんは帰してくれそうにない。
「分かりましたよ。ついでに聞いてくればいいんでしょう?」
「おぉ!話が分かるね君ぃ!」
ハーゲン満面の笑み。
「じゃあ話を聞いたらこの番号に電話してくれたまえ」
ハーゲンが名刺を取り出す。
『死神
ハーゲン
TEL・・・』
何の冗談だ。
普通の人が見たらふざけてるとしか思えないだろう。・・・って僕はもはや普通の人じゃないのか?
・・・はぁ。
・・・ん?
「って、携帯持ってんの!?」
「何を言ってるんだ君ぃ。今のご時世、携帯なんて常識だよ?業務連絡もメールで来るくらいだからねぇ。必需品さ、必需品」
いや、そりゃそうかもしれないけど。
「だからって死神が携帯ってのも、なんか・・・ねぇ」
「君ぃ!死神だからって差別はよくないよ」
「いや差別ってわけじゃ・・・」
「いいかい。死神だって君らと同じ!みんなみんな生きているんだ友達なんだだよ君ぃ!」
生きているのか?
「ま。いい」
いいのか。
「まーとにかく電話してくれたまえ。んでわ」
ハーゲンはスッと姿を消した。
・・・姿を消した?
「おぉっ!消えた!すげぇ!」
「何を言ってるの?瞬間移動くらい死神なんだから当たり前じゃない」
当たり前なのか?
「にしても。本物だったんだな」
「だからそうだって」
少女は呆れたように言った。
「でもさ・・・?」
「?」
「あいつ、瞬間移動できるなら、なんでわざわざあの狭い窓から出てきたわけ?」
「あ・・・」
そういえば、と少女も首をかしげる。
「・・・挟まりたかったんじゃない?」
「んなバカな」
僕は謎の死神の消えた場所を見て、立っているよりなかった。