24話 病院探索!27歳の少女と自称死神 その2
24話、その5まで続きます。その後、25、26と続き、27話で一章完結の予定です(といっても一章の事件は最終章まで完結しませんが)現在26話執筆してます。乞うご期待です ・・・とかなんとか
「ぜーっ、ぜーっ」
「はーっ、はーっ」
「いい加減捕まって殴られなさいよ!」
「嫌だね。そんなことされたらまた意識飛ぶもん」
「人の着替え覗いといて・・・」
「不可抗力だってば。つかなんで着替えてんだよこんな時間に。だいたい、謝ってるだろ?さっきから」
「碧と買い物行くんだから部屋着から着替えんのは当たり前でしょ!第一、謝るったって逃げながらじゃない!そんなの心がこもってない!」
「逃げないと殴るくせに・・・」
「分かった。殴んないからちゃんと謝って。そうしたら許してあげる」
「本当だろうな・・・」
僕は疑いながらも、まあ見ちゃったのは事実だしと頭を下げる。
「ごめんなさい」
ガシッ
「え」
「どりゃあっ」
ドスッ
「ッアァァァァ!?」
肩を掴んだ早紀は、みぞおちに膝を叩きこんだ。
まともに食らった僕は悶絶してフローリングの床を転げ回る。
「こ・・・こんにゃろ」
「あははっ、バーカ」
ガクッ。
僕は力尽きた。
「はーあ、すっきりした。しょうがないから許してあげるよ」
「・・・」
もうこいつには何を言っても無駄だろう。
「ハァ・・・」
「何よそのため息は」
「なーんでも。にしても、良かったな」
「何が?」
早紀が首をかしげる。
「傷痕。薄くなって」
「ああ・・・」
早紀は背中をさすった。
「その傷見るとさ、思うよ。申し訳ないって。僕の不甲斐ないばっかりに」
「不甲斐ないって・・・そんな」
下を向く。
「私だって・・・申し訳ないよ。ボクシング、諦めなくちゃいけなくなって」
なんだ。そんなこと気にしてたんだ。
僕はにっこり笑った。
「早紀らしくねーの。僕はいいんだよ。サッカー楽しむこともできたし、他にもいろいろ習うこともできて、楽しかったんだから」
「あっちー・・・でも、でも目は、まだ・・・」
「目なんざどーでもいいんだよ」
僕は笑顔のまま言った。
「ホントに早紀らしくないな。しみったれちゃって。熱でもあるんじゃないの?」
「う、うるさいっ!」
「はは、そうそう。早紀はそうじゃないと」
「・・・」
「気持ち悪くてしょうがない」
「こんのアホッ!」
「ウッ!」
また蹴りを入れられた。
「せっかく人が、ちょっとかっこよくて見直したと思ったら!この!返せ!あたしの感動を返せ!」
「や、やめ・・・痛い!痛いから!」
「あっ!おいこら!」
脇から声。
「敦司こら!てめえいい加減手伝えよってかお前の用だろ?」
「に、西岡ぁ・・・助けて・・・」
「いい眺めだ」
「てめえコラ」
「あ、それと早紀ちゃん?ミドリちゃんが玄関で待ってたよ」
「え?ホント?大変」
ガスッ
とどめの一発。
今までで一番痛かった。
「はーっ、すっきりした。じゃね」
手を振って早紀は遠ざかっていった。
「・・・大丈夫か。敦司。かっこ笑い」
「口で(笑)っていうんじゃねー・・・。・・・もう疲れたよ、パトラッシュ・・・」
「はいはい。オラ、行くぞ」
西岡は僕の腕を引きずり、アルバムが散乱する部屋まで運んでいった。
ところ変わってばあちゃんの部屋。
アルバムは、やはり5歳くらいの僕の写真が抜け落ちていた。
僕は当初の予定通り、ばあちゃんに話を聞くことにした。
「おや敦司、どうしたね?」
ばあちゃんは笑顔で僕を見つめた。
「ちょっと聞きたいことがあってさ」
「ああ、生い立ちの記かい?公太から聞いてるよ」
公太は伯父さんのこと。とっさに誰のことか分からなくなる。
「じゃあ、さ。僕が5歳くらいの時のこと教えてくれる?」
「生まれた時の話じゃないのかい?」
「うん。それも聞きたいんだけど・・・じゃあまずそのことを」
ばあちゃんは上を向いて考えこんだ。
「あれは・・・そう。大変な難産じゃった」
「難産?」
初めて聞く。
「お母さんは救急車に運ばれて即手術。付き添いのお父さんも心配そうでな」
「・・・1つ聞きたいんだけど」
「なんだい?」
「ばあちゃんは、僕を母さんが産んでるところ見た?」
「見れるわけないだろう?手術してたんだから」
「あ、そうだよね・・・ごめん変なこと言って」
くそ。その事実さえあればDNA検査の結果なんてなんとでもなるのに。
「じゃあ、その病院を教えてくれないかな」
「病院?病院・・・はて。あの病院は大病院だったのだが、確か、医療ミスとかで潰れてしまったと思ったがのう」
「つ、潰れたの!?」
なんとついてない。
その時の執刀医に会えば真相が分かると思ったのだが。
仕方ない。気を取り直して。
「じゃあ僕が5歳ぐらいの時のこと、教えてくれる?」
「・・・といってものぉ・・・何を話せばいいんだい?」
「何かさ、事件が起きたりしなかった?」
「事件・・・はて事件・・・」
ばあちゃんが思い出すのを辛抱強く待つ。
「あぁ。何か大騒ぎした覚えがあるが・・・」
「なにっ!?なにそれ!」
「なんだったか・・・」
「殺人とか!?」
「そんな物騒なことなら覚えてそうなもんだが・・・」
それもそうか。近所の人も知らないって言ってたし。といってもこの辺りは最近ベッドタウンとして急速に発展している。近所の人も当時にあった事件のことなんて知らないのかもしれないが。
「ごめんねぇ。思い出せないよ」
「あ、僕こそごめん。変なこと聞いて」
僕はばあちゃんに礼を言って立ち上がった。
「あ、そうそう。じいちゃんは?」
僕の祖父は神社の神主。噂によると陰陽道にも通じているとか。
「おじいさんなら神社じゃよ」
「また泊まり!?」
じいちゃんは宿直室に泊まることもしばしば。
だけどもう歳なんだから・・・。
「うぅむ、なにやらあの神社も取り壊されるらしくての。おじいさんも寂しいんじゃろ」
「あの神社壊すの!?」
それはそれで寂しい。
「お前たちが後を継がないせいじゃと嘆いておったぞ」
そう。確かに孫世代は後を継いでない。
現代の女子学生をゆく朱音姉さんや早紀に神社の跡継ぎという人生の選択肢はハナから無く、マッドサイエンティストの青龍兄さんは尚更だ。無論、僕も御免だ。
「んなもん、木葉さんに継がせりゃいいじゃん・・・」
木葉さんとは神社で働く巫女さんだ。何やら怪しげな術を施されたこともあったっけ。
「あの子には別に仕事があったじゃろうて」
「かまわーん!兼業しろ兼業!」
僕の言葉に、ばあちゃんは静かに笑った。
「まあそれはさておき。その例の病院って今どうなってる?」
「・・・経営破綻したらしいからのぉ。今もそのまま残ってると思うが」
「そう。ありがとう」
まだ僕は諦めない。
僕はばあちゃんの部屋を後にした。