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20話 メリーさん解決?篇

人物紹介 No.006 井原幸一郎 警視庁勤務、働き盛りの警視正。今回の事件で初の捜査本部長を務めた。キャリアだが、分け隔てないその性格に、ノンキャリからの信頼も厚い。むしろ、キャリアのライバルからは嫌われてるとかなんとか。親バカ。娘のこととなると人が変わる。家では典型的なマイホームパパで、忙しい中家族サービスも欠かさないが、矢嶋らと家で飲み明かした際、酔っぱらい共の世話を焼くのに、奥さんは結構迷惑しているらしい。

それから。

僕は気絶した西岡を自分の隣の席まで引きずっていき、一息ついていた。

納得がいかない。

あれらの電話がすべて西岡によるものだとは思えないのだ。

いくら西岡でも電源切った携帯を無理矢理鳴らすなんてこと、できるはずがない。

だったら何か?メリーさんがいるってのか?と言われると、信じたくない自分もいる。

・・・まあいい。こいつが目を覚ませば解決だ。

「おらあ、早く起きろ、起きないと次の駅で降ろしてくぞ」

僕は西岡の頭をベシベシ叩いた。

ベシベシ。

「う・・・」

ベシベシ。

「うぐ・・・」

べ・・・。

「お、おいおい。そんなに叩いて大丈夫なのか?」

スーツを着た若い男性が声をかけてきた。

「ええ。全く問題ありません」

「というか、なんで白目剥いてるの?彼」

「ちょっと、救いようのない馬鹿による自業自得が招いた事故がありまして」

「・・・?どんな?」

「話すとまた1話同じ話を繰り返さないといけないのでやめときます」

「そうか、それは困る」

納得した。

「・・・どちらまで?」

「ちょっと所用でね。浜松まで」

「浜松・・・ああ、花博があったとこですね」

「君は?」

「ちょっと、名古屋まで。万博があったとこですよ?」

「いや知ってるよ」

男性は、クイとペットボトルの茶を飲んだ。

『落武者』。確か、今売りだし中の新商品だ。

・・・ネーミングセンスはどうかと思う。

「高校生?」

「ええ、3年です」

「受験シーズンに名古屋?」

「ああ、それにも事情があって」

「へぇ・・・どんな?」

「話すと10話以上同じ話を繰り返さないといけないのでやめときます」

「ああ、そりゃ困る」

やっぱり納得した。

「・・・」

不意に男性が僕の顔をまじまじと見つめた。

・・・まさかソッチの気が?

「な、なんですか?」

僕はおどおどしながら聞いた。

「いや、これは失礼。だけど俺と君って初対面じゃないような気がして」

うわあ、口説きか!?

口説きモードに突入か!?

「い、いや、すみません。ボク、ソッチの気は・・・」

男性はポカリと口を開け、やがて意味を理解したのか大声で笑い始めた。

「ちょっと、車内車内」

「あっと」

男性は口をあわてて閉めた。が、目はまだ笑ったままだ。

「いやあ、傑作だ。ハハハハ」

「な、何がおかしいんですか!」

最初は誤解したことを申し訳ないと思いこそすれ、あまりに笑うので、僕もだんだん腹が立ってきた。

「いや、俺の視線でビビるやつはいても、そんな捉え方をするやつはいなかったもんでな」

「ビビる?」

僕は思わず怪訝な表情を浮かべた。

この気の良さそうな男性が、怖い?

「・・・ビビった方がよかったですか?」

「いや、大いに結構さ。いやあおもしろいおもしろい」

男性は一通り笑ったあと、僕に向き直った。

「で、話を戻すけど、やっぱり会ったことない?」

うーん・・・。

僕は正直彼に会った覚えはなかった。

「すみませんが、覚えは・・・」

「そっかあ・・・」

男性は考え込んだ。

「絶対どこかで見たこと会った気がしたんだけどなぁ・・・」

男性はまあいいか、と笑った。

少なくとも僕にはこの男性にビビる要素はないと思う。

「う、うーん」

その時西岡が唸り声をあげた。

「お目覚めかな、お連れさん」

スーツの男性は立ち上がっていた。

「あれ、どちらへ」

「電話だよ。じゃ」

男性は右手の携帯を振りながら立ち去った。

いい人そうだったな。あの人、何してる人なんだろう・・・。

「う、ん?お、俺は・・・」

西岡が目を覚ました。

「お、お目覚めか。メリーさん」

「おう」

しっかり男の声。

「大丈夫か」

「腹がズキズキする」

「ん、腹痛?トイレ行ってこいや」

「・・・」

睨み付ける西岡。怖くない。

「しっかし何だな。ボクシング日本3位が本気でパンチかますか?普通」

「あっはっは、本当に本気だったら多分お前は即病院行きだ。というか、日本3位は小6の話だぞ?」

「俺みたいなボクシング素人にはそんなこと関係ねーよ」

「ま、そうか。ところでさっきから非常に気になっていることがあるのだが」

「なんさね?」

「なぜお前がここにいる?」

「神のお導き」

「アホか」

一蹴する。

「まあ、なんていうかだね。予備校行く途中でお前を見つけてね。予備校サボってどこいくんだろって気になって後をつけてみたってワケ」

「じゃああの電話は」

「バッチリこの電車の中で喋ってたよ」

やっぱり。

西岡はしたり顔だ。

「ハハ、お前本気でビビってんだもんよ、見てて面白かったぜ」

「最初はイタズラかと思って怖がるふりしてしっぽ掴んでやろうって思ってたんだけどな」

「ああ、それそれ。なんかお前、電話無視しだして、てっきり気付かれたって思ってたんだけど、やたらビビって最後電話でたからこっちが驚いた」

「・・・あれ、お前じゃないのか」

「あれ?」

「オバサンの声が入った時があったろ?」

「ああ、あの時終わった、って思った」

「あの後、もう一度電話があった。メリーさんからな」

「?俺じゃないぞ。最後の電話までお前出てくれなかったじゃないか」

「・・・やっぱり」

「?どういうことだ?俺の他にメリーさんやる物好きがいたって?」

「ああ。・・・本物が、な」

「本物・・・?ハハ、まさか」

西岡は笑って取り合わない。が、僕にはあれは本物に思えてならなかった。

・・・まあいいや。

今あれこれ考えても仕方ない。憑いてきたらその時はその時。どっかの神社でお祓いでもしてもらおう。

僕は気分を変える(という名の現実逃避)ため、もうひとつ気になっていることを西岡に尋ねた。

「なあ」

「あ?」

「僕を見つけて後を追ってきたってのは分かった。でもなんで?お前は僕の行くとこ行くとこ全てに現れるのか?」

「まさかぁ、俺はそんな暇じゃねーよ」

西岡は呆れたように言った。

ムカつく。

「じゃあなんで」

「お前が抜け駆けしてミドリちゃんと遊びに行ったのかと思ったんだよ」

「・・・は?」

思わず聞き返した。

「・・・ま、違ったみたいだけど」

「えーと、ミドリちゃん?・・・ミドリミドリ・・・ああ、この前の合コンに出てた!」

「そ。お前あの子と雰囲気良かったろ?で、それに加えてお前あの合コン以来変だったから、これは決まりだってね」

「・・・はぁ」

呑気で羨ましい。まったく。こっちは真剣な用で来てるってのに。

加えて言わせてもらうと僕が変になったのは職業体験からだ。さらに言うと僕と大川内さんは別にいい雰囲気でもなんでもない。単に無理矢理連れて来られた者同士で会話を交わしてただけだ。

「なんでもいいがお前はんなことのために往復4900円を無駄にするのか?」

「そう。それは誤算だった。まさかお前が名古屋まで行くつもりだったとは」

「いや、普通往復500円でもやらないだろ」

「いやぁ、ミドリちゃんとどうこうなんて死んでも邪魔してやろうと思って」

「救いようの無い馬鹿だなお前は」

これだから金持ちは。

4900円程度の出費なんてなんとも思ってないに違いない。

「まあそう言うなよぉ。割りと心配もしてたんだしさ」

「その気持ちは有り難く受けとるがメリーさんは悪趣味が過ぎたな」

「なかなかスリリングだっただろ」

「スリリング過ぎるわこのボケ」

「ふふふ、そんくらいがちょうど良いんだよ。リアリティー溢れるメリーさんをお届けしてやったぜ」

「本物に呪われるのがお前であることを祈るよ」

「ハハ、まだ言ってんのかよ」

「言うね。あの恐怖は電話された奴じゃないと分からない」

「またまたぁ、そんなに恐がって。だいたい、電話かけられたのはお前だろ?俺が呪われるわけないじゃん」

西岡は鼻でフフンと笑った。

「どうかな。よく聞くじゃないか。霊を侮辱するような奴が霊に呪われるって。ほら、お岩さんとか将門さんとかの映画スタッフが謎の急死とかあるだろ?」

「う・・・ちょっと自重するよ。だから呪わないでメリーさん」

「そうしろ。だいたいなんだ?あの声」

「ふふふ、あれぞメリーさんの声さ」

「確かにあの声は不気味だったけども」

「だろ?なんつったって聡美のお墨付きだし。俺の血の滲む努力の甲斐があったというものだ」

「・・・誰?聡美って」

「俺のコレさ・・・あ痛い痛い痛い!」

西岡の立てた小指を変な方向に曲げてやった。

「ギャーッ折れる折れる!」

「折れろボケ。何がミドリちゃんとどうこうなんて死んでも邪魔してやるだ。二股か?二股狙ってんのかコラ」

「痛い痛い!謝る!ウソ!俺が狙ってる子!」

「ほぉ、その子狙って、ついでに大川内さんも狙ってみたと」

「可愛い子と付き合おうとするのは自然なことだろ!悪いか!」

西岡は開き直った。

「悪くはない。悪くはないが、そんな西岡君にピッタリなことわざを1つ」

「なんだよ」

「二兎追うものは一兎も得ず」

「・・・ムギュウ」

あ、へこんだ。究極までへこんだ。

少しフォローするか。

「ま、動機はどうあれ、あの声は確かに一種の才能ではあるな」

「だろ?だろ?俺スゴいだろ?」

立ち直りの早い奴。

「その類いまれなる才能をもっと他のことに使って欲しかった」

「他のこと?そうだな、声優にでもなるか」

「お、一発芸」

「ああ、女の声でハイジのテーマ歌ったやつか?あれはイマイチだったなぁ。思い切りが足りないってゆーか」

「思い切り?」

「そ、やるならもっと大胆に」

「というと?」

「ゴスロリ魔女っ子って感じで。衣装もつけて」

西岡はニヤリと笑った。

「それは・・・ヒクよ?みんな」

「ウケるって。俺、今年も文化祭の実行委員だからさ、来る11月3日にそなえ、一芸でも用意しとかないと」

「っつってもなぁ」

僕はこいつのゴスロリ魔女っ子姿なんて見たくもない。僕がそうなのだからきっとみんなそうだろう。

「やめとけって。悪いことは言わないから」

「そっかなぁ・・・ま、そこまで言うんなら」

納得した西岡。が、直後とんでもないことを言い出す。

「じゃ、お前も出ろ」

「・・・は?」

「いいじゃん。ああいうのは大体グループって相場は決まってんだよ。それにホラ、お前も顔いいから女子にウケるぞ?・・・あと一部の男子に」

「おい」

一部の男子にはウケてもらいたくない。

「僕はそんな人気ないさ。彼女もご無沙汰だし。つかお前今『も』っつったな。これは『俺も顔いいけどな、へっへーん』の意思表示と受け取れるんだけど、どう思う?」

「あ?あぁ、そうだけどそれが何か?」

シレッと言いやがる。

「ナルシーもいい加減にしろよ?このアホ」

ボスッと西岡の腹にパンチを入れた。

「ウ!ウグオッ!同じところをピンポイントで!・・・グウッ」

悶絶してる。まったくいい気味だ。

・・・そういえば。

「どうした?」

西岡が聞いてくる。

「・・・お前、治るの早いな」

もっと強めに打ち込めばよかったってちょっと後悔するくらいケロッとしてやがる。

「は!お前との付き合いも長いからな。俺も打たれづよくなったんだよ」

「分かった。今度から全力でいく」

「・・・。で?どうしたんだ?」

「いや、お前が起きる前、30代くらいの気のいいスーツの人と話してたんだけど、あの人電話するっていったまま帰ってこないなって思って」

「もう降りちゃったんじゃねーの?」

「あの人浜松で降りるって言ってた。浜松まだだろ?」

「んー」

西岡は辺りを見回した。

「それって、あの人?」

ふと見ると、先程の僕のように、連結部のところでさっきの男性が電話をかけている。

西岡はスクッと立ち上がると、男性の方へ歩いていく。

「お、おい」

「盗み聞き」

西岡はぐっと親指を立てた。

「ぐっ、じゃねーよ馬鹿。常識人としてそんなことは止めなさい」

「だって、気になるじゃん。その人、俺が起きた頃から今までずーっと話してんだろ?」

「そりゃそうだけど・・・」

「嫌ならいいよ。俺だけで聞くから」

西岡はどんどん行ってしまう。

「ま、待てって。僕も行く」

西岡は何も言わずニヤリと笑った。

ちくしょう、好奇心に勝てなかった自分が恨めしい・・・。

でも僕は普通俺はビビられる、と言った彼の言葉が気になってならなかった。

もしかしたらうちの父親と同じ人種?・・・なんてね。

僕らはドアが勝手に開いてしまわない程度に距離をとり、聞き耳を立てた。

「・・・だからそうしろって言ってるだろう!」

覗き込んだ途端押し殺した怒声のようなものが僕らを迎えた。

「あちらに動きがあったら知らせろって言ったろう!キャッチ出来なかった?あちらが隠し通してたのか。くそっ!やられたな」

何の話だ?

「いいか、必ず取り返せ。億だ。億が動くからな。天方さんには知らせるな。俺らだけで内密に処理する。あと・・・奴ら、最近東京の方ばっか動いてるけど、なんか知ってるか?奴らは東海に勢力を広げるのが方針じゃないのか?」

億って・・・金か?勢力?方針?

「ああ、そりゃそうだが・・・。アタマ連中は最近東京に急遽帰ったって話だぜ?」

アタマ?

「・・・まあいい。とにかくアレは何がなんでも取り戻せ。じゃあな」

そう言うとスーツの人は電話を切った。

僕は慌てて西岡に戻れと合図して席へ走った。

しかしスーツの人は戻ってこなかった。

「何の話だぁ?」

西岡が言った。

「さあな。ま、気にすることはないさ」

正直かなり気になった。いつもの僕なら追求しようとするだろう。しかし、今回に限っては僕は僕でやっかいな問題を抱えているわけで。

面倒事はこれ以上回避したいという思いがあった。

「いやでも気になんね?億が動くって。ヤバイ臭いプンプンじゃね?」

「ならない。プンプンするのはお前の体臭だ」

「えぇ!?ちょっ、ちょっと、マジ!?」

慌てて自分の臭いをクンクンかぎだす。

「ウソウソ」

「勘弁してよ。洒落になんねー。体臭とかホント気になるからさ。俺気ぃ使ってんだからマジで」

「悪い悪い。でも僕はさっきのを詮索する気はないからな」

「なんでだよ」

西岡は食ってかかった。

「お前いつもはもっと食い付きいいだろ?こういう話にさ」

「・・・僕が何しに名古屋くんだりまで行くと思ってんだ」

「知らねーよ・・・あ、そういえば聞いてなかったな。予備校サボって名古屋行く理由」

「聞きたい?」

西岡は笑顔でうなずく。

「かなり重い話で、それでもってマジな話だけどそれでも聞きたい?」

西岡はちょっと驚いたような表情を見せたが、真顔でうなずいた。

僕は息をつくと、西岡に今までの経緯を話すことにした。

DNA検査のこと。佐々井さんが協力してくれることになったこと。今日お祖母ちゃん家に手がかりを求め向かっているということ。

ヤツはアタマのネジが外れたりずれたりしてるところはあるが、まあ悪い奴ではない。むしろいい奴だ。でなかったら僕はヤツと交友関係を続けてたりはしない。

「・・・」

西岡は神妙そうな顔で話を聞き終えると、口を開いた。

「つまり、そのオバチャンは元ヤンで、昔はブイブイ言わせてた、と」

「重要なのはそこじゃねええぇぇッ!」

僕の全力のツッコミが炸裂する。僕は本編では基本ツッコミ担当なのだ。

「いやあ、ちょっと重い空気になったから。場を和ませようと」

「時と場合を考えろやボケェッ!」

スパァンとハタキがヒットする。

・・・にしても、少なくともこいつのおかげで最初ほど暗い旅では無くなったな。

僕は、頭を押さえ苦しんでる西岡を見て、苦笑するのだった。






それから約2時間後、僕らは名古屋駅に降り立った。スーツの兄さんは結局帰ってこなかった。多分浜松で降りたのだろうが、それまでずっと何をしていたのだろう?

まあとにかく、名古屋に到着した僕らだったが、この時にはまだ、名古屋であんな厄介事に巻き込まれるとは想像もしなかった。

僕の『平凡な日常』というのは、あのDNA検査の日から大きく狂い始めていたんだなぁと今更ながら思うのである。




ここから先は僕は知らない話である。

[名古屋〜名古屋です。お降りの際は足元にお気をつけください]

「ママぁ〜、あそこ空いてるよ!」

「コラ、桜、大きな声出さないの」

一組の母娘が電車に乗り込んできた。

桜と呼ばれた娘は走って、さっきまで敦司たちが座っていた空席に座る。

「ママ〜!こっち!早く!」

桜はさっきたしなめられたのも忘れ、大声で母親を呼んだ。

母親は、やれやれと苦笑しながら娘の席へと歩み寄る。と。

「あら?何かしらこれ」

「え?そこにおいてあるメモ帳のこと?・・・うわぁすごい!なんか女の子の名前と電話番号がいっぱい書いてあるよ!」

「え?」

その持ち主にドン引きする母親。

「い、いやそうじゃなくて。ホラ、このお人形さんよ」

母親が指差したのは座った席の下に置いてあった一体の西洋人形だった。

「え?あ!ホントだ!かわい〜!ねぇママぁ、これ持って帰ってもいいでしょ?」

「うーん、そーねぇ・・・」

桜はキラキラした目で母親を見た。

母親は考え込んだ。

彼女は、娘のこの目には弱かった。

周りに荷物はないみたいだし、多分誰かの忘れ物だろうけど・・・。

本当は駅員に届けなきゃいけないんだろうけど、この子も欲しがってるし別にいいのでは・・・。

「しょうがないわねぇ」

母親は人形に向かって手を伸ばした。

抱き抱える。結構重い。

母親は桜に人形を手渡そうと・・・

「・・・キャッ!」

その瞬間彼女は人形を手放していた。

・・・動いた?

彼女には、確かにこの人形が自分に向かって微笑みかけたように見えたのだ。

この人形は、危険だ。

彼女の本能が、ガンガン警鐘を打ち鳴らしていた。

「どうしたの?」

桜が不思議そうに人形を拾おうと手を伸ばした。

「待って!」

「・・・どうしたの?ママ」

「ダメ。これに触っちゃダメ」

「なんで?」

「こ・・・これは他人のなの。勝手に触っちゃいけません!」

「でもぉ」

[まもなく〜○△〜お降りの際は・・・]

ほっとした。これでなんとも不気味な空気から逃れられる。

「ほら!降りるわよ、桜!」

「でもぉ」

ぐずる桜。母親は最後の手段に出た。

「もう。マジカルリリイちゃんのお人形、買ってあげないわよ!」

マジカルリリイとは今女の子に絶大な人気をほこるキャラクターである。桜も大ファンであり、誕生日までいい子にしてれば、桜に一番高価なマジカルリリイの人形セットを買ってあげる約束になっていた。

その効果たるや、まさしく絶大である。

「あ、待ってよ。ママぁ!」

案の定桜は西洋人形など忘れたかのように、母親についていった。


・・・・・・。

[ドアが閉まります。ご注意ください]

・・・・・・。

・・・よくも捨てたわね・・・。

わたし、メリーさん。今からあなたに会いにいくわ。













〜裏コーナー〜

西岡 コワッ!

敦司 怖いなぁ。やっぱりメリーさんの呪いは本物だったんだ

西岡 てか俺らが馬鹿話してる間にも、あの人形椅子の下にあったっていうことか?

敦司 まあ・・・そういうことになるかな

西岡 コワッ!

敦司 いやまったく

西岡 なんかこの話、謎のスーツの兄さんとか今までいろいろと伏線っぽいもの積んできたけど、最後のインパクトで全部吹っ飛んだって感じだな

敦司 うーん、確かに。でもって、裏コーナーの雰囲気がこれまた本編のホラーな雰囲気をぶち壊したな

西岡 ・・・そりゃあまあ、お約束ってことで(笑)

敦司 (笑)じゃ済まないと思うんだけど・・・。あ、これ飛ばして読んでもストーリー本筋にはまったく問題ございませんのであしからず

西岡 そんなセリフもお約束だよな

敦司 ・・・確かに

西岡 さて、気を取り直して・・・。今回のゲストは誰かな〜?

敦司 今回のゲストは、この人です

西岡 どーぞ!

敦司・西岡 ・・・・・・・・・・・・

西岡 え?なんで誰も出てこないの?

敦司 ・・・あ、台本に書いてあるよ

西岡 台本!?そんなもんあったのか!てかこんな裏コーナーに台本なんざいらねーだろ!

敦司 ・・・まあね。台本っつってもホラ。2ページしかないし。書いてることもほとんど『適当にトーク』だし。

西岡 ・・・はぁ。もういいよ。で?台本になんて書いてあったんだ?

敦司 『今回はネタが浮かばな・・・メリーさん後日談を入れたことによるスペースの関係により、ゲストトークは中止とします』

西岡 ネタが浮かばなかったのか・・・

敦司 そろそろ使い捨てキャラでなおかつキャラ立ちそうな奴がいなくなってきたからなぁ・・・ってわけで、次回は永森兄弟だってさ

西岡 お。やっとか。永森いつ来るかなぁって思ってたんだけど

敦司 まあゲストがいない関係で、今回は僕らで話を繋げないといけないわけだがどうする?

西岡 よーし!ぶっちゃけトークだ!

敦司 ・・・めんどっちいな

西岡 まあそういうなよ。お前が今まで付き合ってた子たちがなんで急によそよそしくなって破局・・・というパターンになったかを教えてやろうと思ってな

敦司 ・・・!

西岡 お。興味を持ったな。フフ、それはだ・・・『鳳敦司ファンクラブ』だ

敦司 な、ナンデスカソレハ?

西岡 密かに構成されたファンクラブらしいね。ま、俺は羨ましいとは思わないけどな

敦司 と、いうと?

西岡 構成員が男ばっかなんだよ

敦司 ・・・は?

西岡 いやあ、お前男子に人気あるんだな

敦司 ・・・・・・

西岡 で、最初に付き合ってた由加ちゃんはそのクラブの存在に引いて、二番目の涼子ちゃんはクラブの男子の無言の圧力により押しきられた。いやあ、かわいそうに

敦司 ・・・

西岡 おい、どこ行く?

敦司 そのクラブちょっと壊滅させてくる

西岡 ダメダメ。殴っても。殴ったところであいつら喜んじゃうよ?

敦司 ・・・ッ!

西岡 ま、災害にでもあったと思って諦めるんだな

敦司 ・・・なぁ

西岡 ん?

敦司 ・・・うちの学校は変態ばっかなのかチクショーッ!

西岡 どこも似たようなもんだって(根拠なし)

敦司 ・・・帰る

西岡 あ!ちょっと!敦司く〜ん・・・行っちゃった。さて、傷心の敦司クンですが、本編の敦司クンに春は来るのか!?これも1つの見所ですねぇ。ではまた次回までごきげんよう!













西岡 ・・・あーあ、今回はひどい目遇わないでよかった

意外と時間が空きました。あと2日くらい前に投稿できたのですが、まあいろいろありまして・・・。さて、本編ではようやっと主要キャラが出始めます。(話の長さも初1話1万字超えっていう)人物紹介で矢嶋編のキャラばっかでてんのは、敦司編の主要キャラがあんまり出てないっていう裏事情もあるのです。

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