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18話 西岡編 因果応報。悪いことをすると必ずしっぺ返しに逢う

人物紹介 No.004 毒蝮 美咲 22歳。

警視庁捜査一課24班の紅一点。

だが、大の男を凌ぐ膂力と、酔った時のスーパーサイ○人並の戦闘力、愚痴や説教のトークマシンガンに泣いた男は数知れず。実は才媛で、キャリア、将来有望のエリートだったが、入庁1年目からのぶっちぎりの奇行のためか、早くも出世街道から遠ざかりつつある。恋愛などについてはまったく考えておらず、彼氏いない歴ウン年だがなんのその。日々楽しく愉快に、がモットーのある意味幸せな人である。

6月22日 日曜日

気持ちいいくらい晴れた日曜日。

こんな日はパーッとどこかに遊びに行きたい。

こんな日に予備校通いというのは、受験生の悲しき性というヤツだろう。

あーっあ、サボろっかなぁ。

俺はのんびり空を見上げた。

俺の名前は西岡研。ケンではなくアキラ。

智林高校っていうまあまあいい高校の三年生。

昔は札付きのワルだったこともあったけど、ある人物の影響で更生した。・・・ハズだ。

家は西岡財閥ってけっこースゴい財閥。

俺はそこのお坊っちゃんってワケ。

こんなルックスも良くて金持ちの男は他にいないよ?ねぇ、そこのキミ。

・・・といっても、ハナから金目当ての人はキライなんだけど。

と、ここまでが空元気。最近彼女できてない気がする。一発逆転狙ったこの前の合コンだったけど、まさかあんなおかめ納豆が来るとは。唯一可愛かったミドリちゃんは、敦司とばっか話してたし。あー畜生!

あーあ、どっかにいい女落ちてねーかなぁ・・・ってこれじゃあその辺のチンピラの思考じゃねーか。

と、そこに見覚えのある顔を見つけた。

「・・・敦司?」

敦司はフラリと俺の反対側の歩道を歩いている。

そのまま曲がった。

・・・あっちは予備校の方角じゃないぞ?なにやら様子がおかしい。

そういやあ敦司、金曜から様子変だったよなぁ。

俺が話しかけても、どこか上の空でそっけない返事しかしない。

てっきり俺はあのおかめだらけの合コンを根に持って、シカトぶっこいてんかと思ってたけど、そうじゃなかったとしたら?

他の理由、つまり・・・

ミドリちゃんに恋の病!

あの2人あのあと付き合い出して、敦司は今日ミドリちゃんに会いに行くに違いない。

あの野郎、予備校サボって彼女とデートとは、いいご身分じゃねえか。

・・・ツケてやる。

俺はそう決めると敦司の曲がった路地へいそいそと向かった。

え?予備校?そんなもんサボるに決まってんでしょーが。












敦司が向かった場所は駅だった。いつもの智林駅。

そういやあこの路線で最近人身事故があったんだっけ。

まあ通勤通学とあるから運休なんてことはないみたいだけど。

・・・おっと、敦司が切符を買う。

どこまで買ったかは分からないので、とりあえず適当に1枚買う。

そして敦司を確認できる位置に乗り込んだ。



敦司は横浜で降りた。

俺もとりあえず横浜まで買っておいたのでビンゴ、というわけだ。

いやーさい先いいねぇ。

・・・というか敦司め。横浜で降りるということはやはりデートか。

クックック。邪魔してやる。邪魔してやるぞぉ。

敦司は出口には向かわないで、別の路線に乗り換えた。

ヤバッ。

俺は慌てて敦司の背中を追いかけた。



敦司が乗ったのはオレンジのアレだ。東海道線。

しかも東京とは逆方向。

・・・あいつ、デートってわけじゃないのか?

俺は今になってそう思った。

敦司は席を見つけるとヨイショと座った。

俺も座って一息つきたいところだが、そういうわけにもいかない。

ここで気付かれたら今までの苦労が水の泡・・・ってあれ?

俺はハタと気付いた。

デートじゃないと分かった今、敦司から姿を隠す意味があるのか?

・・・とはいってもそのままヤアと出ていくのもなぁ。

妙案を思い付いた。

俺のイタズラ心に炎が灯る。

携帯を開くとゴホンと咳払い。設定で非通知に設定するのも忘れない。

突然だが俺には特技がある。特技というよりは生まれ持っての性質、と言った方が正しいが。

それとは、好きな声色を出すこと。

ゴツいやくざの凄んだ声からアニメのヒロインの声までなんでもござれだ。

もともと、俺には声変わりというものがなかった。

声膜が人と違うらしい。(状況としては、一時期アメイジング・グレース歌って評判になったちょっと太めの男性ソプラノ歌手を思い浮かべていただければ問題ないだろう)

小学校高学年の時は周りが次々声変わりしていくのをみて焦ったものだ。

そうして、低い声を意識的に出すようにしたのは中2の時。ワルぶってんのにハスキーボイスじゃ格好つかないからだ。

というわけで、俺は今でも高い声は問題なく出る。

なんで俺がこんなこと言い出したかというと、携帯から変な声で電話し、敦司をビビらせるためだ。

さて、どんな声にしよう・・・。

そんな時、1つの都市伝説が浮かんだ。

『メリーさん』である。

メリーさんを演じるためには、甲高い女の子の声を出せればいい。

あー。

あー。

こんな感じだろうか。

準備は万端。いくか。


プルルルルル


・・・出ない。

まあ電車で非通知の電話がかかってきても普通出ないか。

よし、次の作戦を・・・。と、敦司が席を立った。

ん?こっちに来る?

まさか気付かれた!?

俺は慌てて隣にあったトイレに駆け込んだ。

「はい」

お。電話に出た。そうか、電話に出るために移動したのか。

「わたし、メリーさん」

「・・・は?」

「わたし、メリーさん。今、1号車にいるの」

「ち、ちょっと冗談はやめて」

「今からあなたに会いに行くわ」


プーップーップーッ


すかさずガチャ切り。

しばらく経ってからトイレから出てみる。

敦司は席に戻ったようだ。だがビビってる。さっきの電話からそう判断した。

隣の車両に移り、2回目の電話をする。

「・・・はい」

「わたし、メリーさん。今、2号車にいるの」

「おいいい加減に」


プーップーップーッ


おーおー。敦司のビビる様がここからはよく見えるなぁ。

俺はニヤニヤ笑いながらもう一度電話を開いた。

と、俺の携帯に着信。誰だろう?

見てみると、聡美だった。聡美は女友達で仲がいい。もう少しで付き合ってもらえるカモとかなんとか。

「なあに」

「ひっ!キャアアアアッ!」


プツ。プーップーッ


しまった。メリーさん声を出してしまった。

慌ててかけ直す。

「ごめんごめん。ちょっと事情があって」

「もう!ホントびっくりしたんだけど!」

ご立腹。

「ごめんって。そんなに怖かった?」

「怖いっていうか・・・不気味」

「ふふ、そうか」

「どうしたの?嬉しそうに」

「いやなんでも」

そーかそーか。聡美が怖がるなら敦司に効き目は抜群だろう。聡美はオカルト系が大好きで、たまに友達を心霊スポットに誘ってるらしい。

俺も誘われたが断固拒否した。

べ、別に怖かったわけじゃない。そーゆーところに興味本意で立ち入っちゃいけないっていうじいさんの遺言があっただけだ。

・・・じいさんまだピンピンしてるケド。

「で、予備校までサボって何やってるの?」

「素行調査」

「西岡くん、探偵始めたの?」

「まあな俺の俺による俺のための素行調査だ」

「何それ?」

聡美が笑う。

「あ、ごめん西岡くん。次の講義始まるから」

「おう。じゃーな」


ピッ


さて、もういっちょ。

敦司に電話を入れる。

「・・・」

「もしもし。わたし、メリーさん。今、3号車にいるの」

「待て」

「もうすぐ会えるわね」

ゴクリと息を飲む音が聞こえた。


プーップーップーッ


ギャハハハ。ビビってるビビってる。

敦司は携帯を持ったまま固まっている。

よしもういっちょ。

ん?

男の子がこっちをじっと見てる。

「お兄ちゃん」

「なあ・・・ゴホン。なあに?」

ついメリーさん声を出してしまったので修正して、俺は男の子に向き直った。

「お兄ちゃん、トナンなの?」

「へ?トナン?」

「お兄ちゃん、トナンみたいにいろんな声出せるの?ネクタイ型変声機持ってるの?」

「あ?えーと」

説明しよう。トナンとは子供に人気のアニメ、『名探偵トナン』の主人公である。・・・俺は見たことないけど。

「フッフッフ、お兄さんはトナンよりすごいぞ。なんてったって変声機が無くてもいろんな声出せるからなぁ」

「ホント?すごーい!」

ふっ、子供の尊敬の眼差しほどいいものはないな。

「じゃあお兄さん、トナンやって!」

「え」

だからトナンは分からないんだって!

「トナンは、ちょっと・・・」

「なんで?」

「え、あ、ほら。トナンを演じるにあたっていろいろと版権問題だの小難しい大人の事情が出てくるわけで」

俺は子供相手に何を言っているんだ?

「・・・つまんない」

案の定男の子は去っていった。

「・・・はあ」

思わずため息が出る。

よし、気を取り直して・・・。


プルルル

プルルル


「・・・止めろ」

「もしもし?今4号車よ?あと2つね」

と、クイクイと腕を引っ張られる。

なんだよ、今電話中・・・。ヌオオッ!?

さっきの男の子がいた。

去ったんじゃなかったのか、少年よ。

男の子は僕を見つめて口を開い・・・。

待て!居場所がバレたらどうする!

俺は慌てて左手を突きだし、制止した。

黙れ!黙ってくれ!

俺の必死の願いが通じたのか男の子は口を閉じた。

ホッ。

「待て!お前何者なんだ!」

敦司の必死の声。

「わたしはメリーさ―――」

「たろうちゃん!こんなところにいたのね!」

うおぉい。

甲高い声が響き渡った。

見ると真っ赤なルージュに厚化粧のオバハンが男の子を叱っている。

叱るな!黙れ!

俺は慌てて物陰に姿を隠した。

敦司が声の方を向いたからだ。

「電話中の人に話しかけるなんて!あなた、本当にごめんなさいね」

オバハーン!あんた言ってるそばから電話中の人に話しかけてんじゃねぇぇ!

・・・あぁ。終わった。

これで誰かのイタズラだってことはすぐ分かる。

はぁ・・・。

俺はしかし諦めきれず、もう一度電話をかけてみることにした。


プルルル

プルルル


出ない。

シカト決め込むつもりか。あーあ、やっぱりさっきのでバレたか。

あの厚化粧さえいなければ、全てうまくいったものを。

俺は電話を切った。




・・・予定外の事態。敦司がこっちに向かってきた。犯人探しでもするつもりかな、と最初は思ったがどうもそうではないらしい。

敦司の顔は怯えきっていた。

変だな。もしかしてバレてなかったのか?

俺は、思わぬ好機に小躍りしながらチャンスを待った。

俺はトイレのドアの前に立った敦司の後ろに立ち、コールした。


プルルル

プルルル


「もしもし。わたし、メリーさん。今、あなたの後ろにいるのよ」

ビクンと敦司の肩がはね上がった。

何やらぶつぶつ呟いている。

ふふふ、まあこれくらいで許してやるか。

俺は敦司の肩に手を伸ばし――

「死にさらせええぇッ」

叫んだかと思った時には俺の腹に敦司の拳が突き刺さっていた。

「―ーッ!」

声にならない悲鳴。

そして、俺の視界はブラックアウトした。












〜裏コーナー〜

西岡 ・・・

敦司 どうした?やけに静かだな今日は

西岡 いや。結局こういうオチなのねと思って。

敦司 まぁまぁ

西岡 フフフ、しかぁし!今日のゲストは確か美人さんなんだよな!

敦司 そう。そして僕は帰る。じゃあな

?? 帰らせるかぁぁっ

バキッ!

ラリアットが敦司に決まる。

敦司、白目を剥いて倒れる。

西岡 ゲッ

美咲 ふっ、決まったわね・・・

西岡 ごめんなさぁい。俺も帰ってもいいスかぁ

美咲 ラリアット喰らってみる?

西岡 いやいいです

美咲 じゃあ今日は飲み明かそぉ!

美咲、どこからかビールを取り出す

敦司 ちょっ・・・と・・・待て・・・ゲフッ

西岡 敦司ぃ!死ぬなぁ!死んだら終わりだあ!

敦司 悪い・・・僕はもうダメみたいだ・・・僕が死んだら、主人公を・・・

西岡 おう!主人公継いでやる!

敦司 ・・・永森に

西岡 なんで永森!?

敦司 ガクッ

美咲 いつまで続けてんの、飲むよホラ

敦司 ・・・ハイ

西岡 いやいやいや!ハイじゃないよ!

敦司 おぉそうだ。美咲さん、使い捨てキャラ救済の場である裏コーナーを勝手に飲み会場にしないで下さい

美咲 知るかぁ♪グビグビグビグビ・・・

敦司 あぁ飲んじゃった・・・僕は退避する。西岡一等兵、後は頼む

美咲 逃がすかぁ

バキッ!

敦司 グハアッ!

西岡 本日2発目のラリアット。・・・生きてるか敦司

敦司 ・・・まだまだぁ

美咲 お。よく立ち上がったねぇ。ハイ、ご褒美のビール

敦司 わーい、どーも・・・って僕未成年ですけど

美咲 気にしない気にしない。どーせこんなバカみたいな裏コーナーなんかみんな読み飛ばしてんだからバレないって

敦司 あんた警察官だよね!?

美咲 固いこと言わない。ホラ、西岡君を見なさい

敦司 え・・・西岡ァ!

西岡 へ?

敦司 お前なに飲んでんのぉ!?

西岡 え・・・旨そうだったし

敦司 ウィー!アー!未成年!

西岡 だってお前、俺ら昔『ピーッ!』だったときは普通に飲んでたじゃん

敦司 注。今の音はこの馬鹿が本編に関わることを言ってしまったことによる修正効果音です

西岡 お前誰に向かって言ってんの?バカじゃね?

プチッ(血管と敦司の中の何かが切れる音)

敦司 ・・・せいやっ♪

バキッ

西岡 ぐぼぉ!?・・・う゛・・・吐く・・・

西岡トイレに駆け込む。

美咲 やー決まったねぇ。ストレート

敦司 美咲さんの禁じ手急所蹴りほどじゃないです

美咲 あっはっは。あの人どうなったのかなぁ

敦司 全治半年だそうですよ。この前会いましたから。・・・可哀想に

美咲 あっはっは、悪いことしちゃったねぇ。グビグビ

敦司 だからここ宴会場にするのやめて下さいってばぁ

美咲 そんなこと言ってぇ。だいたい男ってのはどいつもこいつも・・・

敦司 うわぁ始まった恐怖の愚痴モード!

美咲 ちゃんと聞きなさい!まったく・・・グビッ!グビッ!

敦司 わーん助けてぇ・・・

その後、部屋の明かりは朝まで消えなかったという・・・

はい、久々の更新。これ何度目のセリフでしょう。そして、この話書いて一言。これ意味あったのか? 次回の話さえあればまったく問題ない気もしますが、まあ前回の裏コーナー、ノリで次は西岡パートだよなんて言っちゃったからしょうがない。自業自得。さて、次回からはお待ちかね(?)敦司君の視点からしばらく物語は進んでいきます。蛇足等多々あると思いますが、お付き合いいただけたら幸いです。

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