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15話 矢嶋編 待合室の捜査会議

(今さら)人物紹介 No.001 鳳敦司(おおとりあつし) 県立智林高校の3年生。もう受験だが、自分の希望進路は漠然としておりあまり受験勉強に身が入っていない。基本的に冷めた部分が目立つが、ここぞという時(主にツッコミ時)にはリミッターが外れる。過去に秘密あり(物語が進むにつれ明らかに)。小学生の時には、全国ジュニアボクシング大会で3位入賞した腕前だったが今はやめておりサッカー一筋。とはいっても、サッカーではあまり活躍できないまま引退を迎えてしまった。ちなみに実はモテるのだが、とあるカラクリにより本人は知らない。

「しっかし、動きましたねぇ、事件」

待合室にて。僕と小田口さん、由希は明日以降の事について缶コーヒーを片手に話し合っていた。

幽霊が物を飲み食いできるのか、というと、できる。食わなくても死なないが(当たり前か)、別に食っても差し支えはない。

空腹感も満腹感も感じないそうなので、つまるところこいつは半永久的に食い続けることができる。

・・・あれは忘れもしない初任給の日、僕は奴を回転寿司に連れて行き、ささやかなお祝いをした。

機嫌が良かった僕は奴に言ってしまった。

『好きなだけ食っていいぞ』、と・・・。

一夜にして記念すべき初任給は露と消えたのだ。

今もはっきり思い浮かべることができる、お皿のエベレスト。

一夜にして20万とちょっとが・・・。

悲しい脱線話はここらでやめておこう。

最初、幽霊といえども民間人の由希が話し合いに加わるのに小田口さんは難色を示したが、由希はどこでも入っていけるので、情報収集に適任だ。

ということで僕が話して由希も晴れて今回のチームの仲間入りをしたわけである。

フラリと僕のもとに姿を現してしまったからにはしょうがない。捜査の手伝いをしてもらおう。

ちなみに、彼女に捜査を協力してもらうことは初めてではないが、我が24班の方々とは即刻溶け込んでしまった。無論幽霊と言うことを承知の上で、である。

美咲さんなんかとはかなり仲良いらしく、一緒に買い物行ったりしたらしい。(由希の買い物の予算源が僕のサイフだということは言うまでもない)

この辺りが24班の変人班たる由縁かもしれない。

「ええ。じゃあここらでちょっと本腰入れて考えてみますか」

僕は2人に言った。

推理開始、かな?

「まずさっきの新事実についてですが」

「被害者が探偵だったってやつですか」

「そうです。まあ殺したのが殺し屋だとすれば、殺されたのはまったくの堅気な民間人ではないと思ってましたが。探偵なら場合によってはヤクザと繋がりがあったりしますからね。まぁ僕はてっきり被害者はヤクザなんじゃないかと思ってましたが」

「アハハ、大ハズレ」

「うるさいな」

「しっかし今時『殺し屋』なんて。そんな人とは一生会う機会なかったけど」

変な表現だが間違ってはいない。

「殺し屋と会う機会がそうそうあってたまるか」

小田口さんは考え込む仕草を見せた。

「殺したのが殺し屋・・・ってことは、殺しを依頼した人がいるってことですよね」

「ええ。ま、何にしても依頼した人が分かれば捜査は一気に進展しますよ」

「じゃあ、明日事務所を調べてみて何か出てくるかもしれませんね!」

「あ〜、それはどうでしょうか」

興奮し始める小田口さんだったが、僕はロウテンションで言った。

「どういう事ですか?」

「まぁ、実際行ってみないことには始まりませんがね。探偵殺しを依頼するのはその探偵に調べられたら困る何かを持つ誰かです。それも、雇ったのが凄腕の殺し屋とくれば恐らく個人では難しい」

「組織・・・。暴力団ですか?」

「僕はそう思います。暴力団なら殺し屋とのツテもありそうですしね。ヤクザが事が露見したときに備えて、犯罪を犯すのに自分の組の者じゃなく、第3者を雇うことはよくある話です。ヤクザなら殺し屋雇うくらい訳もないですしね。相手がヤクザなら、自分達が不利になる証拠を残しておくようなヘマをするはずがない。恐らく事務所は奴さんたちにとっ散らかされてるでしょうね」

「証拠は望めませんか・・・」

小田口さんは残念そうに言った。

「もう、なんでそうやって人のやる気を削ぐこと言うかなぁ!」

由希が怒り出した。

「んなこと言ったって、やる気満々で捜査して、ハイ何も見つかりませんでした、じゃ余計がっかりするだろ?ここで見つからないって思っておいた方がいいと思うけどなぁ」

「ムゥ・・・」

珍しくまともな反論を僕がしたので由希は黙り込んだ。

僕だって常に人をおちょくってふざけてる訳ではない。

「でもまあ、絶対に何も見つからないというわけでもありませんし、そう気を落とさずに」

なにやら下を向いてしまった小田口さんに言う。そんなに落ち込んでしまったのだろうか。

「あ、いえ。そうじゃなくてちょっと思ったんですけど」

小田口さんは難しそうな表情だ。

「どうしました?」

「え〜と、吸っても?」

タバコを取り出して言う。

「どうぞ」

僕はタバコは吸わない。なんか息が苦しくなるだけのような気がするからだ。

しかも、聞いた話ではタバコは、種類にもよるがその害の大きさは麻薬に指定されている大麻、マリファナよりも大きいというではないか。

皆さん、タバコは世間で思われてる以上に有毒ですよ。未成年は当然ダメだし、成年の方もホドホドに・・・。吸うにしてもウルトラマイルドとかそういうのにしましょうね。

そんな僕の思想をよそに、小田口さんは旨そうにタバコを吸うと口を開いた。

「殺しを依頼した人も気になりますが、探偵だって誰かの依頼で動いてた訳ですよね?依頼人は誰なんでしょう?」

「確かに!」

僕は声をあげた。そして続ける。

「探偵に何かの調査を依頼した人。その人はまだ警察に名乗り出ていません。立場上表に出れない人なのか、それとも違法まがいの内容の依頼をしたのか。探偵はどこかの組に関する何らかの情報を手にしてしまい、よって消されてしまったと考えられる。それが依頼の内容によるもののためだったとすれば、依頼人はこの事件を解決に導く鍵を持ってることになりますね。故に奴らに狙われるかもしれない。その人の保護は最優先事項ですね」

僕の話に2人は同意を示した。

小田口さんは灰皿をタバコの先をトントンと当てて、言った。

「あと、もう1つあるんですが、探偵事務所って他に働いてた人いなかったんでしょうか」

それで僕は小田口さんの言いたいことを理解した。

小田口さんは何故か非常に冴え渡ってる。うん。

「・・・!マズイ状況かもしれないですね」

「そうです」

小田口さんは頷く。

「え?え?どういうこと?」

由希は分からなかったようだ。

「つまりですね」小田口さんが煙を吐き、説明する。

「矢嶋さんの推理通りヤクザが依頼主で、なおかつ事務所の証拠を処分しようとして押し入ったなら、そこにいた従業員の人はどうなったでしょうか?」

「あ!」

由希は合点がいったように頷いたが、すぐに元の?の顔に戻って、

「でもそれだったらむしろ従業員がいるからヤクザは証拠に手を出せないんじゃないの?」

と言った。

それに対しては僕が口を開く。

「捜査会議ちゃんときいてなかったのか?事務所は新宿にある小さな事務所っつってただろ。多分従業員はせいぜい2、3人だと思う。その程度の人数ならどうにかしたかもしれない。ヤクザなら、ね」

「うぅ、じゃあヤバいじゃん!」

「だからヤバいんだってば」

ようやくその結論に辿り着くことができたようだ。

「もしかしたらその人たち今頃富士の樹海の土の中か東京湾の底かも・・・」

「おいおい、縁起でもない」

僕はたしなめた。

「でも実際、あり得ない話ではないですよね」

小田口さんが言った。

「まあ、確かに。・・・でも今時、ヤクザだって足が出るのは怖いからそう簡単に人を殺したりはしない。監禁くらいされてても、多分命までは取らないと思うが」

僕は呟くように言った。

「そうなの?」

由希が尋ねる。

「安心はできないさ。だから早急に何とかしないと」

「ですね」

「うん」

2人が頷いた。

「えっと、結局これから何をすればいいの?」

「うーん、まずは事務所付近の聞き込み。事務所に従業員がいないか、いるなら何人いるか、その人の特徴などを聞く」

「他には?」

「タレコミしてきた人ともう一度接触し、事務所が最近受けていた依頼、並びに探偵の依頼主についての情報を持っていないか聞いてみる」

僕の言葉に小田口さんが補足する。

「これは相手がもう一度電話して来ないことには始まらないので待つしかありませんね」

「他には?」

由希が全く同じトーンで聞く。

こいつ真面目に考えてんのか?

ちょっとムカついた。

「・・・お寺に行ってお祓いを受ける」

「他に・・・ち、ちょっとぉ!?」

由希が慌てる。面白い。

「南無妙法れ・・・」

「わぁ〜っ!ストップ!ストップ!ストォップ!」

「冗談だよ」

「タチ悪っ!今一瞬消えかけたよ!?」

「ドンマイ」

プチッて聞こえた。

「マジで呪い殺すよ?」

「わあっ、悪霊だ!悪霊退散!南無阿弥陀・・・」

「わあ〜!ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい!」

「もう、いつまでやってんスか!さっさと聞き込み行きますよ!」

「「え?行くの明日じゃないの?」」

僕と由希の声がハモった。

「あんたねぇ、従業員の命は安心出来ないから早急に何とかしないといけないっつったのは自分でしょうが!」

「ははは。そうでしたね。チッ、要らんこと言っちまったな(ボソッ)」

「なんか言いました?」

「いえ何も」

「そうですか?」

小田口さんは如何わしそうに僕を一瞥すると、何も言わずに缶コーヒーをゴミ箱に放り込むと

「じゃあ俺は車表に回してくるんでお二方は玄関で待っててください」

と言って待合室を出ていった。

・・・そういえば黒田警部の車の鍵、小田口さんに預けっぱなしだったな。

危うく忘れるとこだった。

「え〜、休んでから行こうよ」

「僕も休みたいのは山々だが自分で言ったことだからな。てかお前疲れないだろ」

「じゃあご飯食べてからにしようよ」

「お前腹空かねえだろ」

「・・・幽霊ってつまらないねぇ」

「言うな。言ったらなんか重くなるだろ。空気が」

「ご託を抜きにするとめんどくさいんだよね」

「あ、そ」

「行きたくない」

「一緒に来なさい」

「行きたくない」

「・・・・・・」

「行きたくない」

「南無」

「行きます!行きますよ!行けばいいんでしょ!もういいよ!ゆー君なんか死神に呪い殺されちゃえ!」

由希を引きずって玄関に向かう。なんか相当怒ってるようだ。

しかし、玄関に向かう途中、『ラルゴ』のケーキ買ってきてやるからっていったら一発で機嫌が治った。

ラルゴってのはちまたで評判のケーキ屋で、なかなか安いのに相当美味い。

それはそうと、ああ、こいつなんて単純なんだろうって僕は思ってしまったわけで。






玄関では小田口さんがもう車に乗って待っていた。

「遅いッスよ。なにやってたんですか?」

また怒られた。

「さ、時間がありません。行きましょう」

車は勢い良く発車・・・しなかった。

「あれぇ?さっきから調子悪いんですよねえ、この車」

おいおいオイオイ。調子が悪いダッテ?

脅迫同然に車を持ち出した挙げ句、壊しちまったらいくらなんでも黒田さんはキレる。僕の全額補償は免れないだろう。

マズイなぁ。ああマズイ。

「そういえばさぁ」

由希が口を開いた。

小田口さんはエンジンをガチャガチャかけようとしている。

「ゆー君なんであんなにヤクザとかに詳しかったの?」

「え?」

「あ、それ俺も気になりました」

小田口さんが手を止めて口を挟んだ。

「ああ、それはね」

僕には組長やってる友達がいてね。彼によくヤクザの情勢とか聞くからだよ。

・・・なんて言えるはずがない。

「研修時代、世話になったマル暴(暴力団担当の刑事)の人がいてね。その人から聞いたんだ」

僕は即座に嘘を考え、顔色一つ変えず嘘をつきとおすという特技を持っている。・・・褒められた特技ではないが。

「そうだったんですか」

小田口さんはまた作業を始めた。

僕は何となく奴の事を思い出した。

奴は中学時代の友人だった。

成績優秀。

スポーツ万能。

前途有望。

ただ如何せん変わりすぎていた。

奴は中学を卒業すると渡米し、訓練を受けて米軍多国籍部隊へ。

そこで大活躍。

『侍の国から来たワンダーボーイ』という異名までつけられるが、富を得ると即座に退役して帰国。その時19歳。しばらくぶらぶらしていたらしいが、親戚の野沢組組長が急死してから後釜に収まる。

その後、組の大改革を始めて、小さな組だったのが最近は勢力をグッと伸ばし始めた新興勢力となっているそうだ。

今は勢力を伸ばすのに都合のいい、あまり強い勢力がいない名古屋に本拠をおいているらしい。

相手がヤクザがらみなら協力してもらうこともあるかもしれないな。



「な・・・おったぁ!」

カチッと鍵を回すとブォンとエンジンが動く。

「よし!出発!」

元気よく小田口さんが声を出す。

後ろにはめんどくさそ〜うな顔をした由希。

なんだこのギャップは。

まあ僕はというと車が動いたことに安心して一心に『神よありがとう』と神に祈っていたので人のことはいえないが。


そんなこんなで車は事務所へと向かう。

とりあえず事件解決の第一歩を踏み出した感触を僕は感じていた。















〜裏コーナー〜

西岡 わーい、広いぜ!

敦司 ふぅ、これでのびのびできるな。前回はかなり無茶な終わり方だったからなぁ。ったく、締める方の身にもなってくれ

西岡 ま、司会進行、そしてなんといっても主役なんですから。義務ってやつだな。ま、そんくらいの苦労はしてもいいんじゃないの?

敦司 主役、か。そういえば僕って主役だよな?

西岡 ・・・変なこと言うね、君は。あらすじ見てみ?主人公は鳳敦司って書いてあるぜ?

敦司 うーん、そりゃそうなんだけどさ、最近僕出てないじゃん?いつの間にか主人公交代とか・・・

西岡 無いだろ。・・・多分

敦司 無い、よなぁ・・・?

西岡 まぁ俺はさぁ、俺の出番が増えりゃそれでいいんだけど

敦司 おいおい、親友らしからぬ発言だな。僕ら中学の頃は一緒に・・・

西岡 ストップ!ストーップ!これ以上言ったら本編に関わる!

敦司 あ、ゴメンゴメン

西岡 まったく、本編に関わらない無駄トークっていうコンセプト崩しちゃマズイだろぉ!

敦司 いやぁ、悪かった、っと。じゃ、そろそろ締めますか

西岡 え、終わり?

敦司 うん

西岡 なんかいい加減な・・・

敦司 いいか、西岡。僕らの使命は『適当にトークすること』だ。だから、適当に終わらせてもなんら問題は無いんだよ

西岡 ・・・なんだかなぁ。それはそうと、次回はゲストが来るらしいぞ。楽しみだな!

敦司 めんどっちいな

西岡 ・・・

敦司 じゃ、そういうわけで次回もよろしくお願いします。ではさよーならー

(・・・矢嶋編、まだ終わんないのかな・・・。)


はい。なんで更新にこんな時間かかったんでしょう。・・・忙しいんですかねぇやっぱり。次からも引き続きやれ大会やれ学園祭やれテストですごぶる忙しいです。まぁ・・・多少更新遅れるのはご容赦下さい。

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