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それから私は、一つ歳が上がる毎に高そうな服を着せられました。どうやら服の値段も高くなっているようで、少し嫌でした。
こんな服装は落ち着きません。脚が見えなくなる程裾が長いドレスや、フリルをふんだんに使ったドレス。リボンが散りばめてあるドレスなんかもありました。どうして全てドレスだったのかは不明ですが、流石グランヅ家と言いましょうか。服一つにこれだけのお金を使うのですから。
一つ不思議に思う事がありました。それは、ドレスの色が全て白だった事です。どれだけ豪華な装飾が施されていても、色は全て白。
時々着せられるのは、白とは正反対の黒。これには何か意味があったのでしょうか。それの意味を知る事は、もうありません。
服は豪華な物を着せられましたが、もう一つしなければいけない事がありました。それは、人前で歌う事。私は人前で歌う事が何より苦手でした。自分の歌を誰かが聞いてるというだけで、もう緊張してちゃんと歌えないのです。でも歌わないと旦那様に叱られる。だから頑張って歌いました。
私の歌を聞いた方は皆、楽しそうな顔をして帰っていきます。それがとても嬉しかったんです。だから私は頑張りました。皆さんの喜ぶ顔が見たかったんです。
歌を歌い続けて二年。もう人前で歌う事に戸惑いはなくなりました。むしろ聞いて欲しいとさえ思うようになりました。こうやって私は少しずつ変わっていきました。
ただ、ロレオ様だけは変わらなかったのです。何歳になっても泣き虫なのに変わりがなく、旦那様と喧嘩をするとすぐに私の部屋に逃げて来ました。そして鳥籠から出られない私に対して泣き言を零し、気持ちが落ち着くと外の事をいろいろ教えてくれました。私はロレオ様の話を聞くのが好きでした。知らない事ばかりで、とても興味を惹かれます。何時も楽しそうに話してくれました。
そんなある日、私はちょっとしたお願いをロレオ様に伝えました。
「あの、ロレオ様」
「どうしたんだい?」
「えと…、林檎を食べたいんですけど……。戴けますか?」
「林檎?」
「はい……。あ、無理ならいいんですっ」
「…わかった。持って来させよう」
「いいんですか?」
「もちろん」
しばらくして、扉がノックされました。ロレオ様は私の代わりに部屋から出て、林檎が乗ったお皿を鳥籠の前に置いてくれました。その林檎は、鳥籠の中から手を伸ばして食べられるように、切り分けられていました。久しぶりに食べる、とは言え、たった二年とちょっとでしたがとても懐かしく思えました。
いつかアイと一緒に食べた様な甘さと味わい。とても満足でした。唯、何かが足りない様な気がしたのです。それが何かは、わかりませんでしたが。でも、何かが物足りない様な。そんな感じがしたのです。
「おいしい?」
「あ、はい。とても」
この日から、ロレオ様がこの部屋に来る度、林檎を持って来てくれる様になりました。